ラスト コンビニ

ノーネーム

第1話 十字傷の男

ここは近未来。

深夜。山奥の手前。

「ここが最後のコンビニです。」

そう書かれた看板が掲げられたコンビニが一軒。店内にて。

店員が、棚に商品の陳列をしている。

店長は、レジで諸々の計算を行っている最中だ。

今日、この時間帯は、この二人で店を回しているようだ。そこへ。

「いらっしゃいませー」

客が入店してきた。二人は挨拶をする。

「…」

40代くらいの中年男性がひとり、だった。

男性はなにやら弁当コーナーに来て、商品を凝視している。

「あの…」

「はい、なんでしょう。」

男性は店員に話しかけた。

「廃棄の弁当とかって、あります…?」

店員は店長と顔を見合わせる。

「申し訳ございません、そういったものは原則、お客様に提供できないことになっておりまして…」

「そっか…」

「申し訳ございません。」

それを聞いた男性は弁当をカゴに詰め込むと、

「よこせッ」

「あっ」

一目散にコンビニから逃げ出した。

「ど、ど、どーします、店長!」

「追いかけて!通報しとくから」

「はいッ」

ダッシュで追いかける店員。店長は、警察に電話をかけた。

「…あれ?、電話が通じない…」

電話線が切られた?その時。男性を追いかけていた店員が引き返してきた。

「どうしたの?」

「やばいやばいやばい。なんか大勢の人がコンビニに向かってきてます。

手に刃物とかバット持って。」

「…そっかー。また来たか。」

「え?」

「少しの間、店を頼むよ。」

店長はレジ裏に入ると、日本刀を持って出てきた。

「店長⁉」

店長が店の外に出ていく。

「ありったけの食い物よこせやぁ~!酒じゃあ、タバコじゃぁ~!」

店長、暴徒に向かい、一言。

「ここが最後のコンビニです。覚悟はよろしいですね?‘‘お客様‘‘。」

刃を「逆刃」にし、次から次へと、流れる桜のように野郎共を斬り倒していく。

「まさか…貴様、噂に聞く、白山村の…侍の末裔…ッ」

男は気絶した。よく見ると、群集には、最初に弁当を持ち逃げした男性も含まれていた。

「よーし、携帯から警察に電話してくれた?」

「あっ、はい。」

「新人にしては上出来だ。」

「ありがとうございます!」

数分後。警察がやってきた。男共は捕縛された。

「しかし、懲りねぇな、こいつらも。」

刑事の一人が言った。店長が答える。

「仕方ありませんよ。ここは、‘‘日本で最後の‘‘コンビニですから。」

「なぁ、コンビニやめて、ウチに来ねぇか?お前の腕なら、てっぺんまで行けるぜ。」

「丁重にお断りさせていただきます。ここは、爺ちゃん、父さんが守ってきた店ですので。」

「…かぁーッ、義理堅いねぇ~ッ。」

「あ、刑事さん、張り込みにアンパンなんかどうです?」

「はは、流石、店長だ。んじゃ、ちょいと買わせてもらおうか。」

「はい。いらっしゃいませー。」

「いらっしゃいませー。」

店長と店員の挨拶が響く。

日本最後のコンビニは、今日も元気に営業中。

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