9
あれから僕は詩を口ずさむようになった。彼女と僕を直接的に結びつけたあの詩だ。いつか自分の詩もつくってみるつもりだ。きっとそれが彼女や僕の父への向こうにいったときの土産にもなるし、何より産まれてくる新たな生命への手向けになるから……
僕は立ち止まった。耳をすます、風に乗って海の息吹が聴こえる。空に手を伸ばし風を受け、行き合いの雲に遠い遠い遥か先にそのように思いを馳せ、僕はまた歩きはじめた。
僕たちは多分不確定な存在だ。でも、確固としたものを僕たちは持ってもいる。そして僕たちはみんな三面鏡なかにうつる鏡像だ。それを僕たちは確定させ、意味を持たせようとする、正像を見ることなしに……でもそうしてるからこそ僕たちは生存しているんじゃないか。
そうやって人は生きていくこれからもこの先もずっと。
追憶の航路 トルティーヤ忠信 @tortilla7212
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます