第10話

 実験室に入ると培養液に入った無数の俺の姿があった。

 実験で細胞を提供した結果、俺は俺でも解らないくらい複製された。

 最早、俺がクローンなのか、本人かなどは関係ない。


 それは培養液が抜けて覚醒した俺にも言える事だ。


「よお。気分はどうだ、俺?」

「最悪だが、そんな事はどうでも良い」

「そうか。だったら、殺り合うとしよう」


 俺はそう言うと構える。そんな俺に対して目覚めた俺の方は肉体を変化させる。

 そんなモンスターに変貌した自分を見て、俺はうっすらと笑う。


「偽者も本物も関係ない。勝った方が一ノ瀬京司本人だ」


 俺がそう言うとモンスター化した俺が襲い掛かって来る。

 自分同士で殺し合うとか、愉快な状況だ。

 より強い己が一ノ瀬京司を名乗る。ただ、それだけだ。


「どこぞの誰かが最大の敵は自分とか言ってたが、まさにその通りだ!俺は俺を越えるぞ、俺よ!」


 最早、どちらがモンスターなのだろうか、俺は俺に向かって飛び掛かる。


 ───


 ──


 ─


 気が付いた時には全てが終わっていた。

 俺は俺を倒し、一ノ瀬京司である事を証明したようだ。


 死んだ俺は満足げに笑っている。

 そんな俺を見て、俺も笑うのであった。


 ──俺の究極を追求する日々は終わらない。


 俺は新たな力を得て、ダンジョンを徘徊するのであった。次なる獲物を求めて。


 俺の名は一ノ瀬京司。


 俺は今日も今日とて配信を続ける。それが俺が俺である証なのだから。


【終】

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その底辺虚無配信者、狂戦士の為に注意 陰猫(改) @shadecat_custom5085

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