最終話 Frozen Princess's dream
あれからずっと…、シュウザーの写真を衝立にいれてスーツのマルギルが豚屋通販最上階で仕事をしていた。
己の髪や服を鴉として自我を持たせ、自身と同じ干渉する力を使う邪神。
その鴉で街の人々を癒し、シュウザーの小さな部屋に転送陣を置いた。
マルギルは、エノとの約束通り箱舟働いてポイントを返済にあてている。
邪神の長老に名を連ねる程でありながら、その容姿は黒い妖精のまま。
その鴉と一緒に働く、シュウザーと共に。
「あと少し、あと少しだけ…」
そう言いながら、必死に今日も豚屋最高責任者としての書類を決裁していた。
「やるのは選択肢だなんて貴女は言うけれど、貴女の選択肢は随分優しくて魅力的なのよね。実質一択じゃないの」
そういって、内線が鳴った。
「もしもし、こちら豚屋通販…。あぁ狂撞か、確認しておくから時間が欲しい。すまないが、宜しくお願いします」
そういって、また書類を片付けていると。
「もしもし、こちら豚屋通販…」
耳につんざくような声で、はよせぇ!という様な小声で怒鳴るその声を聴いてうっかり笑ってしまった。
「全く、神様がポケットティッシュ忘れて通販するなど聞いた事がない」
そうした、毎日を過ごしながら。
奇跡の前借か…、そんな事を思いながら。
「奇跡は前借させてくれるくせに、貴女のお膝元は一括以外認めないとか嘘ばっかじゃないですか…」
私が、最高責任者の椅子に座るうちはなるべくいい商品を沢山並べておこう。
「どうせ、モノは売れても想いは売れやしないんだから」
そういって、苦笑しながら筆記具をそっと置いて。
「時よ凍れと思い、悪魔は人との幸せな時間の夢を見る」
邪神になった変わり者の悪魔は、壁にかけられた屑の一字を見て溜息をつく。
「貴女が最初に名乗った名は、この屑でしたね」
(本当の屑だとは思いもしませんでしたけど、だからこそ私は続けることができた)
「邪神としても、神としても、屑には違いない。それでも、私はシュウザーと一緒に祈る神がいるのなら貴女に祈りたい」
(言葉ではなく、現実で払う貴女にね)
あの邪龍の力に汚染され、奇跡を願い。奇跡は有料だと言われ、働いている最中にその邪龍はあのエノの逆鱗に触れて滅ぼされた事を知った。
「あの優しいエノが、怒り狂うなんて何をしたんだか…」
私に手を差し伸べてくれた、桃色髪の幼女を思い浮かべ。
マルギルは、きっと私達の街みたいに色んな所を苦しめていたのね。
自分が不幸を振りまいて、力に変える邪神側でもっとも力ある長老に名を連ねながら。
それでも、マルギルはシュウザーと共に。
私が、奇跡の代金を払い終えたなら…。
また、一緒にただの日常に戻りましょう。
貴方の肩の上に座って、貴方とたわいもない話をして。
そんな、日々に早く戻りたいものね。
「シュウザーは言ってた、魔族の神は本当は神様なんてしたくない」って。
でもね、それはちょっと違うわよ。
「あの子は、魔族の神は…」
そういって、飲み物で口を湿らせて。
「そもそも、神様なんかには向いてない」
私と、一緒で。
「私だって、邪神なんかには向いてない」
そういって、眼を閉じた。
おしまい
Frozen Princess's dream めいき~ @meikjy
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