上品で繊細な悪夢

岸亜里沙

上品で繊細な悪夢

ワタシの眼前に迫るナイフ。

照明に照らされたそれは、残酷なほど美しい。

「●●●●、●●●(ねえ碧斗アオト、ヤメテ)」

猿轡さるぐつわをされているため、声にならない声で訴える。

彼は無表情でワタシを見下ろし、不意にワタシの手をつかんだ。

そしてなんの躊躇ためらいもなく、ナイフを振り下ろした。

「●●●●!(イヤァッ!)」

彼は無言のままワタシの指を一本ずつ切り落とす。

半狂乱になるワタシだが、なぜか気絶もしない。

痛みよりも、手首を伝う血液の温かさを感じながら、必死で目を瞑り続ける。



赤い鮮血に染まったシーツの上、ワタシは目を覚ます。

血まみれになった手を見るが、指はちゃんとついている。

どこも欠けてはない。

ちゃんと動かせる。

だが床に目を向けると、切り落とされた10本の指が転がっている。

ワタシはもう一度自分の手を見た。



「良かった。あれは、


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上品で繊細な悪夢 岸亜里沙 @kishiarisa

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