そう、漫才ならね のらくら文芸部企画もの
棚霧書生
そう、漫才ならね
アツアツ、いす、ソレノイド
「会社しんどい……ぴえん」
「ピー、こちら男のぴえん使用を許さない委員会です。ぴえんの使用を即時にやめてください」
「キッショいうえに世知辛いなその委員会。なんの権限があって、ぴえんを取り締まってるんですかー?」
「……はにゃ?」
「考えないんかい! そして、はにゃ? はオッケーなのか! どっちかてえとお前がはにゃ? を使ってるほうがイタイからな!」
「えー、ひっどぉい。落ちこんでたみたいだからぁ、せっかく声かけてあげたのにぃ」
「ごめん、俺もぴえんやめるからさ。お前もギャルみたいな喋りをやめな? 大やけどしてっからさ、ね?」
「男のぴえん使用を許さない委員会の委員長として身を削ったかいがありました」
「捨て身すぎる……」
「で、ぴえんに取り憑かれてしまった原因は?」
「よくぞ聞いてくれた! 俺は会社の歯車であることにもう堪えられないと悩んでいたのだ!」
「なるほど歯車からジョブチェンジしたいと、それならネジとかボルトとかビスとかがいいんじゃないかな」
「具体例がほぼ同じもの!」
「そんなことないもん! モーターとソレノイドくらい違うもん!」
「モーターはわかるけど、それのいどって、なに? てかお前語尾にもんを使うのはいいのか……」
「モーターはパワーがあってグワァー! で、ソレノイドは自動改札機とかコピー機とか素早く同じ動作をするシュパパパー系のやつ!」
「おお、ソレノイド、マイナーだけど高速で正確に動作するってところは知る人ぞ知る熟練職人みたいな感じだな」
「まぁ、僕らは歯車やネジやボルトやビスやモーターやソレノイドと比べて全然役立たずだけどねー!!」
「うぴゃあ! どうしてそんな本当のことを言うの!?」
「いい大人だし、真実を見つめたほうがいいかなって」
「うぴゃぴゃあ! あ~もうダメ、豆腐メンタルにクリティカルダメージよ!! ぐちゃぐちゃになっちゃったんだからね! アンタこのブロークンハートの責任を取りなさいよ!!」
「それじゃあ、今夜あつあつの鍋でも食べに行く?」
「豆腐メンタルって言ったけど、具材にして美味しく頂こうとしないで!」
「実は僕、死神だから定期的に魂を食べなきゃいけなくてさ」
「あっ、じゃあ俺の豆腐魂は食べても大丈夫ですとでも言うと思うか? てかなに豆腐魂って!?」
「すごく豆腐が好きなんだろうね」
「好きじゃねえよ! どっちかっていうと豆腐は嫌いだよ!」
「自分の魂が嫌いだなんて……なんて悲しい子……ああ哀れなアクマに魂の救済を!」
「急にD.Gray-man!! いや、好きだけど! そうじゃねえだろ、俺、悪魔じゃねえし!」
「君は豆腐の悪魔だよ。可哀想に脳味噌が豆腐化してしまって自分が悪魔だってことがわからないんだね」
「チェンソーマンンンン!! 二〇二二年の流行り出してくんのやめて! この話の賞味期限が短くなっちゃう!」
「収録相手くらいしかまともに聞いてないからそんなこと心配しなくても大丈夫だよ」
「んんんんんッ! ド正論!!」
「努力、未来、あびゅーてぃふぉすたー」
「キックバックやめて、せめてモー娘。の明るいほうのメロディで歌って……」
「モームス……って誰?」
「はひぃっ!? え、あ、お前って俺と同い年じゃ」
「あっ、先輩と違って二十一世紀生まれです。サーセン」
「同じ平成生まれだろうがイキってんじゃねえぞガキが!!」
「平成って三十年あんねん」
「選ばれぬ男が魔法使いになれる年月だぁ……」
「先輩はやっぱりバキバキに」
「どうて……なに言わそうとしてんの? 言わねえよ? 流れに乗せられそうになっても自分の身は自分で守る、つまり自己防衛だよね」
「さぁ、やっと最初の問題の答えへたどり着いたようだなぁ!」
「えっ、な、なに? この会話終着点とかあったの?」
「企業での長時間労働、賃金は上がらず、ポストも空かず、物価と税金だけが上がっていく日本社会。あなたが腰かけているその椅子はこの先何十年と座り続けるに値しますか?」
「ニュース口調になるのやめろ。めちゃくちゃ不安になっちゃうだろうが……」
「投資、貯金、副業……つまり自己防衛。あなたも新たなる一歩を踏み出すとき」
「クッソ怪しい転職サイトの広告みてぇだな……」
「さぁ、今こそ! 僕と先輩で笑いでTEPPENとりましょう!!」
「いや、いい加減しろ!」
終わり
そう、漫才ならね のらくら文芸部企画もの 棚霧書生 @katagiri_8
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