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『KAC2022 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2022~』後半戦の感想

※ネタバレあり。執筆を始める前段階のアイデア出しのとこから、なんであのお題でその話になったのかってとこを中心に書いてみたよ。SAN値がわからない人は[クトゥルフ SAN値]でググってね。

第七回 お題「出会いと別れ」
「ブラインド」
 現代日本の相席屋か異世界ファンタジーの相席屋でラブコメ書こうと40%くらい思ってた。ならなかった。
 そろそろ書き始めないと間に合わなくなるなってタイミングで英語教材に載ってたミニストーリーをたまたま読んでしまい、それにめちゃくちゃ引っ張られた。その話は、病気になって人生の途中から目が見えなくなった中年女性が50過ぎてからの恋を実らせたというものだった。
 恋愛と光って近いよねっていう感覚を書きたくなって今作が誕生。ナナハシは奥さんという光を愛するがゆえに他の光を拒絶してしまう人というイメージでつくった。ここにいっぱい解説を書きたいけど、あんまり書いても無粋かな。とにかく、自分の中では、キャラクター設定とテーマがすごく上手くリンクした作品に出来上がったと思ってる。

第八回 お題「私だけのヒーロー」
「私だけの英雄」
 最初はPSYCHO-PASSみたいな超管理システムに支配された世界で犯罪者予備軍として隔離されてる子を反社の子が助け出すような話にしようと思ってた。ストーリーが組み上げられず、書けなかった、無念……。
 なんも思いつかないときはホラーを書くにかぎるね。ってことで急遽ホラーに変更。ただし本当に話のタネから芽が出なくて、こりゃ詰んだでござるな状態だった。
 そんなときテレビを見ていたらよみうりランドの隣にできた植物園の宣伝をしていた。そこでウリになってるデカい木、正式な名前は忘れた、まあそこは重要じゃないからいい。その木、幹が壺みたいに丸かったんだよね。酔っぱらいの太鼓腹みたいだから、酔っぱらいの木って別名もあるらしい。本当に丸々してて、人でも入ってそうな……、とここで本作の筋を思いつき、一気に執筆。
 時代設定は、星野先生が学生時代のとき(つまり壺と出会ったとき)でもよかったんだけど、それをやると余裕で4000字オーバーするって思ったので、学生二人組がちょっとだけ怪異と遭遇する話にした。もちろん、この話に出てきた星野先生はSAN値0です。どのルートでも救えません。

第九回 お題「猫の手を借りた結果」
「ニャンニャン催眠術」
 猫の手を借りて平和な世界を実現した人類は猫の下僕となった……というような話を考えていたのだが、微妙にズレた。猫を教祖とした新興宗教が勢力を増して、そこに対抗勢力として猫アレルギー一派とか過激犬推し一派を出して……、みたいなアホなことを延々と夢想していたはずなのだが、気づいたらイケメンを猫にしていた。
 最後はニャン卿が猫に変身して逃げるオチもあったが、お題が猫の手を借りた結果であることを思い出し、ニャン卿は猫の手を借りた人間役に収まってもらった。ニャン卿はギリSANが残ってる印象。

第十回 お題「真夜中」
「真夜中の夢」
 話がつくりやすい良いお題だった。真夜中って、夜の真ん中だからあらゆる夜を表す言葉の中でも闇が濃いような印象がある。そしてわかりやすい単純な言葉ゆえに純粋な夜って感じもする。あと、「ま」の音が「魔」とも繋がりやすい。これはもうホラー系の不思議話書くしかねえっしょ。ということで夜のイメージ強め空間“真夜中の夢”をデザインした。正直なところ、今回はこの空間を描写したかったので、あとの要素が結構後回しになってる。ストーリーはあんまりない。でも、頭の中にはある。が、書き始めたら規定字数を超えてしまうため自粛。あちらを立てればこちらが立たず、カク2022ムズい……。
 まあ、私が「普通に描写していくとこれは確実に4000字超えそうだな……でも今はこれを書きたいから、まあいっか!!」の精神で執筆を始めてしまうのがいけないんだろうけどね。いやぁ、短く面白い話を書きたいもんですわ、ハハハ……。

第十一回 お題「日記」
「日記を愛する男」
※以下長文 最終回なので覚えてる限りの一連の流れをすべて書いておく。読みやすさとかは考えてない。思考はいつでも飛び飛び飛魚。
 ヒョエ……。日記だってよ、SAN値をゴリゴリできる定番アイテム来ちゃったじゃん。うぉおおおお、クトゥルフみのあるホラーがやりたいンゴねぇ!!
 待て待て、まあ、落ち着けよ。祭りの一番最後を締めくくる小説なんだからさ、明るいハッピーエンドにしたくない? 昨年の最後のお題「ゴール」で書いた「ミルキー杯の幕間」を読み直してみなさいよ、めちゃくちゃ健全かつハッピーエンドなお話だよ?
 それも一理ある……でもほら、キャラクターにとって、ハッピーエンドならそれはハッピーエンドじゃん? ってことで執筆いってみよー!!
 方向性は早めに決まったが、日記というアイテムはどんな話にでもぶち込みやすいうえに、話を美味しくしてくれる味の素みたいなものなので、メインの話がなかなか決まらなかった。心象風景を描写するならば、意気揚々と味の素の瓶を振り上げて、空のフライパンをじっと凝視する人である。
 もちろん味の素だけでは料理にならないので、仕方なく一旦瓶を横に置いて、シンキングタイムを取る。ぽくぽくぽくチ~ン。
「隊長! 何も思いつかないであります!」
「そうか、だったら……、とりあえず冒頭を書き始めてしまおう!」
「お待ち下さい! これまでその作戦で何作の短編が散っていったか覚えてはいらっしゃらないのですか!」
「敵の軍勢〆キーリはもはや目前まで迫っている……。これは必要な選択なのだ。さぁ、わかったらさっさと筆を進めろ!!」
 頭がゴリ押し型だと現場は辛いね。進めろって言ったって、構成という名の地図も持ってないのにどこへ向かえばいいんだよ。
 渋々、一行目を書き始める。
 この間、神保町行ったから舞台はそこにしよ、神保町といえば古本屋だよね~、古いものが集まる場所って妖しいものが集まる感じするし、雰囲気としては結構ベターな選択じゃん?
 古本屋にいるのは誰にするか、まあ変化球を狙わないなら店員か客だよな。
 謎の男が日記を売りに来るっていう設定はどう? そんなもん買い取れるかよって、店側の人は言うけど謎の男はカウンターに勝手に日記を置いていって……。ふぅん、割と良さげ、とりあえず、このシーンを入れる方向でいくか。なら、主人公は店側の人間だ。結構強めに日記を突き返そうとしてたから、この人は店長だな、歳もそれなりに重ねていてビジネス経験もある印象。で、この店長が日記でSANを削っていくとして、店長にとって精神的にくるものはなんにする?
 仕事をたくさんしてきた人だと仮定して、プライベートがおざなりになってた? 家族、恋人、友人……、友人がいいな。恋人と疎遠になって別れるのって結構ある話だし、働き盛りのやつがなかなか実家に連絡入れないのもよくある。利害関係がなくて、会えば学生の頃の感覚に戻れる、距離や時間で離れることはあっても関係が断たれることは絶対にないと思ってた相手。やっぱ友人だな、それも親友。
 仕事で忙しくしてるときに親友が会いたいって連絡してきていたのに、無視をした。何回か同じことがあって、連絡が来なくなる。それで、やっと店長から連絡を取ったときには親友はとっくに自殺してた。メイン設定はこれで決まりだね。
 オチは……まだいっか、とりあえず進めよ。
 店長の引きずってるものを描写するためには聞き役がいるな~、アルバイトくん出そ。あ、やべ、こいつ結構キャラが濃いぞ。しかも勝手に喋りやがる。お前の結目八千代語りは全カットにするからな。あ~、でもいい感じに結目の意識が過去に向いた気がする。坂間グッジョブ。
 冒頭でキャラ設定は見せたから、こっから本番。シーン的に絶対に必要なのは、日記の拾得と結目の発狂の2つ。
 まずは日記の方。結目が日記を手にするのに謎の男を出そうと思ってたけど、それやると字数を食いそうだな……。謎の男の正体も回収できるわけじゃないし、そもそも謎の男の設定が思い浮かんでない。
 ここはサラッとやろう。やっぱ不穏が忍び寄るときは雨が降ってんもんなのよ。オラッ雨よ降れ! そして結目、誘い出されろ! 日記触った瞬間にSAN値チェック入れたいよね~、まあ、無難に冷たくしとく? はぁ~~描写がありきたり〜~、むり〜〜、でも書く。なぜなら良い別案が出てこないから、初期案で強行突破よ。
 よっし、あとは結目が発狂するとこを見せれば話としては一応まとまる。さて、問題だ、結目発狂シーンまでどうやってつなげる?
 狂っていってる本人って、そのことに気づかないか無視するかだから、結目本人の視点じゃない方がいいかも。三人称視点……、いやもっと適役がいるじゃん、なあっ、坂間くん! 君には戦地に赴いてもらうよ!
 というわけで視点交代、坂間のターン。憧れの人が壊れていくのを見るのは辛いね。でも君ならこの試練を乗り越えて良い語り部になれるよ、たぶん!!
 さあさあ、話も佳境に入ってまいりました。坂間と結目が言い争うー、結目がこじらせ友愛を爆発させるー、おっ?
 字数制限的にあと二百文字書けば終わりじゃん。最後の最後だ。で、話の終わり方はどうする? 日記が破壊されるか結目が失踪するか、もしくは坂間逃亡って選択肢も取れる。こんな終盤まで来て決まらなかったの久々だな。サイコロでも振るか?
 おっと、祭りの最終回だからハッピーエンドにするんだったな~。ん~~~結目にとってのハッピーエンドは? 日記改め千景さんと一緒にいること。じゃあ、坂間にとってのハッピーエンドは? ……結目が正気に戻ること? は~い、条件が相対しちゃってま〜す。どちらかを満たせば、どちらかは叶いませ〜ん。
 結目がこの話の元々の主人公だし、結目にとってのハッピーエンドにするかな。となると誰も傷つかないのは結目失踪エンドか。坂間は逃げなさそうだからね。坂間は結目八千代に向き合って、全力を尽くすでしょ。結目の店にわざわざバイトとして来るくらいだもん、結目への思慕は深いよ。だからこそ、坂間なら土壇場で勝負しかけるでしょ……。
 というわけで「日記を愛する男」はあのエンドで完成を迎えたのでした。長かったね!
 KAC2022、これにて完!!
 

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