サプライズな事件?

猫兎彩愛

サプライズな事件

「私はいま、事件の現場に来ています」


 部屋でゴロゴロしていると、急にテレビからそんなアナウンスが流れてきた。


 あれ? テレビなんて点けてたっけ? って、それよりもここってもしかして!?


 見慣れた風景が映っていて、目がテレビに釘付けになる。


「家の前の空き地じゃん!」


 思わず叫んでしまった。


 って、何!? 人もいっぱい居るし、事件って一体なんなのよぉ!


 そんな風に思っていると、


 ピンポーン! と、チャイムが鳴った。玄関に行くと、警察官が立っている。


「はい」

ひいらぎ 飛鳥あすかだな?」

「そう……ですが」


 え? 何? 何? 何? 私、何か関係あるの!?


「一緒に来てもらおう」


 警察官はそう言うと、私に手錠を掛け、頭から布を被せる。


 え!? 怖い、怖い、怖い! 私、何もしてないよ?


 理由がわからないまま警察官に誘導され、外に出る。布がかけられているし、何も見えないから怖い。


「ここに立て」

「はい……」


 されるがまま、立たされる。

 急に静かになった。


 あれ? 何? 何? どうなってるの?


 急に静かになり、不安になったその時! 手錠が外され、かけられていた布が取られる。


 わ! 眩し……


 急に太陽の光が射し込んで来て、目を瞑ってしまった。ゆっくり目を開けると、そこにはスーツを着た彼氏が立っていた。


「え? 何? 何? 何なの?」


 何が起こったのか良くわからない。


 すると、目の前に立っていた彼が急に跪き、


「結婚して下さい!」


 そう言い、指輪を差し出す。


 え? あ、あ……そういうことだったんだ……


 私はホッとして、急に力が抜け、その場に座り込んでしまった。


「あ、飛鳥? 大丈夫?」


 慌てて、私の元に彼が駆け寄る。


「もう! 馬鹿っ! びっくりしたんだからぁ……」


「ご、ごめんな。そんなに驚くなんて思ってなくて」


「驚くよ! それに、それに! すっごく怖かったんだからぁ」


 ボロボロと涙が出てくる。彼はそんな私を優しく抱き締める。


「ごめんね……サプライズでびっくりさせて、思い出に残るプロポーズにしたかったからさ、皆に協力してもらってしたんだ」


「サプライズ……」


 それ以上、上手く言葉にならない。


 嬉しいよ? 嬉しかったけどね? だけど、怖かったんだよ? 怖かったから、直ぐに返事なんてしてあげないんだからぁ。


 ……ちょっとくらい、拗ねても良いよね? 


「飛鳥? 大丈夫?」


 彼が心配そうに、見詰めてくる。


 どうしようかな……って、ん? ちょっと待って? みんなって……?


 ハッとして周りを見ると、会ったことのある彼の友達、知らない人も合わせて15人も居た。みんな優しい顔をしていて、中にはさっきの警察官も居て、心配そうに見ている。


 急に恥ずかしくなってきた。顔が赤くなるのが自分でも分かる。


「も、もう嫌だぁー」


 恥ずかしくて、その場から立ち去ろうとした。けれど、彼は素早く私の手を掴み、また、手錠をかける。


 え?


「逃さないよ? 結婚、しよ?」


 ちょっといたずらっぽい笑顔で、手錠をかけた私の手に口づける。


 返事、直ぐにしてやんないって思ったのに、完全に私の負けだわ。


 観念して、彼の方に真っ直ぐ向き直り、


「うん、ありがとう……よろしくお願いします!」


 そう、笑顔で答える。彼が私をぎゅっと抱き締め、お姫様抱っこをしながら、


「無事、事件解決です! みんなありがとー!」


 彼は、皆に笑顔で手を振る。周りに居た人達が祝福してくれる。


「おめでとー!」

「良かったな」

「もう、泣かせるなよ」

「良かった、良かった」

「幸せになれよ!」


 その後はパーティ状態。どうやら空き地の持ち主に交渉して、プロポーズに使いたいって借りたらしい。


「そういえば、何で事件? あのテレビはどうやったの? それに、警察官まで呼んで?」


 聞きたいことが山程ある。


「何でって、プロポーズって人生最大の決め事だし、事件みたいなものじゃん? 忘れられないプロポーズになっただろ? テレビは遠隔操作だよ。それと、警察官は俺の従兄弟だよ。現役警察官だから、迫力あったろ?」


 得意気に言う彼に、ちょっと溜め息が出てしまった。


「確かに、忘れられないプロポーズにはなったよ? でも、ちょっとズレてない?」


「ん? そうかな? 嫌、だった?」


 さっきまで得意気だった彼が、ちょっとシュンとなって上目遣いで見つめてくる。


「嫌だったら、オッケーするわけないでしょ?」


 なんて、拗ねたように言ってみるも、心の中は喜びでいっぱいだった。自然に顔がニヤけてくる。そんな私を見て、彼も幸せそうに笑う。


「そうだな。絶対幸せになろうな! 俺が絶対、幸せにするからなー」


「うん、絶対幸せになろうね!」


 こんな事件サプライズを起こした彼だから、きっとこれからも、いっぱい事件? を起こしてくれるのかなと、ちょっと期待しながら、これから始まる結婚生活がワクワクでたまらないのであった――――















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サプライズな事件? 猫兎彩愛 @misausa03

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