言葉から感情は生まれるものか

藤泉都理

言葉から感情は生まれるものか




 とある建物の屋上。私だけの秘密の場所。そこからは見下ろす街も、見上げる月や星も、私が日々神経をすり減らしながら惰性で生きている世界と同じとは到底思えないほど綺麗に映った。だから私はここにいる時間が大好きだった。どんなに冷たく汚い世界でも、ここから見れば美しく見えたから。




 なんて、口に出しでもしたら、あなたは腹を抱えるのでしょうね。

 おまえはただ破壊するだけのAIロボット。

 そんな繊細な感情プログラムは組み込めないようにしてある。

 生みの親が言うのだから間違いない。と。


 ええ、ええ。

 そうでしょうね。

 私だって、こんな言葉が頭に浮かんだ事にひどく驚いているところですよ。

 きっと、どこぞの敵兵AIロボットが私を攪乱させようと、こんなプログラムを組み込んだのでしょうが。


 ええ、ええ。

 私だって、腹を抱えています。

 こんな、

 こんなもので私を攪乱できると、私に人の感情を植え付けては破壊を止めさせようと考えるその短慮さ、浅慮さに。

 無理ですよ。

 無理です。

 私は破壊式AIロボット。

 破壊にこそ、


 では何故泣いていると、あなたは問いかけるでしょう。

 愚問ですね。

 そんなの。


 笑い過ぎて、腹が痛くなったから。

 ただそれだけですよ。


 まったく。

 痛覚なんて、不要なものを組み込まないでくださいよ。




 面倒ったら、ありゃあしない。











(2023.11.1)



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