第4話
数年後、奏は肺炎により亡くなった。
葬儀を終え、火葬場で焼いた後に、志藤家の墓に納骨した。
ここには父と母の骨も納められている。きっと今頃、天国で仲良く一緒に暮らしていることだろう。
父と母は奏が13歳の時に、トラックとの交通事故で亡くなった。奏の筋疾患の診断をされて寿命が短いことを知った両親は、そのことに気を取られ、運転を誤ったのだろう。
それがきっかけで奏の自宅療養が困難となり、施設での療養という形になった。
奏を納骨して以降、俺は奏の月命日には必ずお墓に来るようにしていた。
今日もまた、お墓に花を供え、両手を合わせて供養した。
ただ一つだけ違うことがある。それは今日供えた花の種類だ。いつもは、ピンク色は『カーネーション』の花にしているのだが、今日は『ガーベラ』の花にしたのだ。
奏が亡くなり、彼女の部屋の整理をしている時、一枚の紙を発見した。
『お兄ちゃんへ
夏休みに行った場所の文字を順番に注意して取ってみてください。
それが私のお兄ちゃんに対する気持ちです。
奏より』
紙には簡潔にそう書かれていた。
俺はメモ用紙を取り出し、書き連ねたところで奏の抽出して欲しかった言葉を理解した。
ガーデンフラワーパーク。
ヨーロッパ村。
アドベンチャーゾーン。
山寺(やまでら)。
これらの『行った順番の数字』番目の文字を取ると『ガーベラ』になる。
ガーベラの花言葉は『感謝』。花が大好きな奏は最後に花言葉を通して俺に感謝を伝えたのだ。
「何が『そうだ、〇〇へ行こう』だよ。ゴリゴリに計画練ってたんじゃないかよ」
供養しながら俺は一滴の涙を流す。
今日ガーベラを供えたのは奏の気持ちがちゃんと伝わったことを教えてあげるためだった。きっと奏も喜んでいるに違いない。
不意にスマホの通知が鳴った。
内容を確認すると、カノジョから連絡が来ていた。
一人となった俺を家族が心配しないように充実した人生を送ろうと決めた。今は仕事に恋愛と充実した日々を送っている。
カノジョからは次のような内容のメッセージが送られてきていた。
「そうだ、来週の三連休『ディストランド』に行こうよ!」
【短編】練られた衝動 結城 刹那 @Saikyo-braster7
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