第31話「遠くまで」
「人気ロックバンド『
普段何があっても笑顔を絶やさない
友人代表として弔辞をと、促されてマイクの前に立った影三は、しばし呆然と周囲に視線を巡らせる。両手で顔を覆って泣きじゃくるひと、そのひとを慰めるよう肩に手をやる気丈なひと、歯を食いしばるようにして立ち尽くすひと――、そして、掲げられている直斗の遺影と目が合った。
――こんなに大勢が集まってるのに、情けない姿を晒すわけにはいかないよな? ナオ、お前もそう思うだろ?――
ぱしんっと自分の両頬を叩いた影三が、マイクに向かう。
「俺、こういう時に気の利いたこと言えなくて、でも……遠くまで、直斗がいるところまで届くように歌うから。だから曲知ってるやつは、俺と一緒に歌ってほしい」
じわりと広がる静かな毒を吹き飛ばしたあの時のように、影三は伴奏もなく歌い始めた。それを聞いた
影三は空を見上げる。さっきまでどんよりと雲が垂れ込めていたというのに、今は抜けるような青空が広がっていた。
The Show Carries On! サンレイン @sunrain2004
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