第31話「遠くまで」

「人気ロックバンド『歌舞伎Ageかぶきえいじ』のメンバー新津 直斗にいつ なおと、交通事故死」の一報は、テレビのニュースにも小さいながら取り上げられた。

 普段何があっても笑顔を絶やさない影三えいぞうの憔悴しきった姿は、しとしとと雨が降る葬儀場、弔問に訪れたファンたちの悲しみを深めるばかりだった。

 友人代表として弔辞をと、促されてマイクの前に立った影三は、しばし呆然と周囲に視線を巡らせる。両手で顔を覆って泣きじゃくるひと、そのひとを慰めるよう肩に手をやる気丈なひと、歯を食いしばるようにして立ち尽くすひと――、そして、掲げられている直斗の遺影と目が合った。


 ――こんなに大勢が集まってるのに、情けない姿を晒すわけにはいかないよな? ナオ、お前もそう思うだろ?――


 ぱしんっと自分の両頬を叩いた影三が、マイクに向かう。

「俺、こういう時に気の利いたこと言えなくて、でも……遠くまで、直斗がいるところまで届くように歌うから。だから曲知ってるやつは、俺と一緒に歌ってほしい」

 じわりと広がる静かな毒を吹き飛ばしたあの時のように、影三は伴奏もなく歌い始めた。それを聞いた幸雄ゆきおが、泥谷ひじやが、浩也ひろやが影三に続く。会場で立ち尽くしていたファンたちも、影三たちに倣って次々に歌い始めた。


 影三は空を見上げる。さっきまでどんよりと雲が垂れ込めていたというのに、今は抜けるような青空が広がっていた。

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The Show Carries On! サンレイン @sunrain2004

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