大文字伝子が行く188

クライングフリーマン

束の間の平和

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。

 大前(白井)紀子・・・総子の幼なじみ。ある事件を切っ掛けにEITO大阪支部事務員に。大前と結婚したが、まだ事務員は続けている。

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

 藤井康子・・・伝子マンションのお隣さん。EITO準隊員待遇。

 中津健二・・・中津警部補(中津刑事)の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。

 西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。

 幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。

 幸田(月山)澄子・・・飲み屋の女将。幸田所員と事実婚だったが、正式に婚姻届を出した。

 倉持悦司・・・南部興信所所員。

 花菱綾人・・・南部興信所所員。大阪阿倍野区の巡査部長。

 横山鞭撻・・・南部興信所所員。大阪府警の警部補。

 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。大阪府警のテロ対策室勤務の巡査部長。

 真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 本郷弥生2等陸佐・・・陸自からのEITO大阪支部出向。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹の三女。大阪府警テロ対策室勤務の警部。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からのEITO大阪支部出向。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女。

 中山千春・・・中山ひかるの母。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。

 山城(南原)蘭・・・山城の妻。南原の妹。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田(小田)慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。

 福本(鈴木)祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本の妻。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻文子と塾を経営している。

 南原(大田原)文子・・・南原の妻。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。

 服部(麻宮)コウ・・・服部の妻。

 小田祐二・・・やすらぎほのかホテル社長。小田慶子の叔父。

 村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。警視庁テロ対策室室長。

 橘藤兵衛・・・なぎさ二佐の叔父。陸自の陸将。

 前田空将・・・空自の、上から2番目に偉い人。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前9時。EITO本部。

 マルチディスプレイに、大阪支部の大前コマンダー、中津興信所の中津健二、警視庁の村越警視正が映っている。

 村越が、重い口を開いた。「サンドシンドローム、詰まり、偽和知南ことホンファ伊東は、今朝亡くなったよ。原因を先に言うと、コロニーの、通称オマージュ株ワクチンの新型で高熱を出し、一気に坂を転げ落ちた。体内から検出されたそれは、ワクチンと言うより、コロニーそのものだった。毒物に詳しい、池上病院の蛭田教授によると、オマージュ株と呼ばれたものは、コロニーを研究した者が、「人工的に」作った変異株だそうだ。ウイルスは変異を繰り返し、生き残る為に弱毒化していくのが常で、インフルエンザもコロニーも同じルートを辿らなければいけなかった。コロニーは、那珂国の科学者が研究中に「誤って」作ってしまった、失敗作だった。脳天気な政府の、いや、親那珂派の多い政治家のお陰で、水際対策が大幅に遅れてしまった。だから、広まった。」

「コロニーのことは、私もケンから聞いたことがあります。失敗した筈の那珂国に有利な展開が始まってしまった、と。」

「大文字君の言う通りだ。そして、検査ビジネス、ワクチンビジネスが『那珂国の主導』で始まった。利権に巣食う亡者どものお陰で、『五類』に下げることが遅れ、その間にコロニーⅡというべき、コロニーより強いコロニーが産まれた。結果、ワクチン後遺症被害者が多く出てきた。ここで、中津君に話を継ごう。」

 今度は、村越に促された中津が話し出した。

「私たちは、久保田管理官や兄貴の中津警部から言われて、偽和知のアジトであった部屋を隈なく探したが、あまりこれといったものが見つからなかった。高遠さんのアドバイスで、本物の和知の部屋を改めて調べたら、燃え残った部屋の5分の1くらいは使用可能で、使っている形跡があった。そして、ホンファの日記を発見した。そして、錠剤の瓶だ。瓶の画像は共有しているので、後で見て下さい。ユンファが飲んでいた錠剤は、彼女の持病の薬だけじゃなく、ある薬が混じっていた。オマージュ株の新型。コロニーⅢというべき、コロニーそのものの錠剤だった。ホンファは、だんだん体調を崩して行き、交際していた、本物の和知が誤って飲んでしまった。和知が知っている頭痛薬と色が似ているので、ちょっと拝借しただけだったが、一気に飲んでしまった。根っこがアメリカ人気質の和知は飲み過ぎ、あっけなく死んだ。和知をスパイとして疑ったホンファが殺し、火を付けたんじゃない。別の場所で焼いて、運んでまた火を点けたんだ。先に『火葬』をしていたんだ。そして、私たちと発見者になって、火事を通報した。興信所に探りを入れる為だけじゃなかったんだ。」

「アリバイ作りですか。」と、なぎさが言った。

「そこで、日記だ。ホンファは、組織が自分を消そうとしていることを知った。そして、決戦を早めた。初めから死ぬ気だった。だから、自らスイッチを押し、私たちを道連れに死ぬ算段だった。」と伝子は言い、ため息をついた。

「ホンファは次の刺客のことも知り、他に道はない、と、思ったわけか。」と、大前は言った。

 皆が沈黙する中、「ああ。大前さん、今度も無理言ってすみませんでした。ありがとうございます。」と、伝子は大前に謝った。

「いや、とんでもない。あの短い時間でよう段取り組みましたな。死んだのが、『幹』1人なんて、奇跡ですやん。」

「とにかく、今度の『幹』の名前だけは分かった。みんな、どこかでヒントになるようなことを聞いたら、速やかに報告してくれ。」

 午後1時。伝子のマンション。

 一緒に食事をしていた藤井が言った。「ダークレインボーの幹部って、訳あり、が多いのね。だからって、許せないけど。」

「そうですね。みんな訳ありの上で、死んで行っている。今生きているのは、オクトパスだけですからね。オクトパスは死なせる訳にはいかないですよね。」と、高遠は言った。

 チャイムが鳴って、高遠が出ると、高木と日向が立っていた。


「高木、日向。なぎさが確認をとっただろう?」「はい。ICレコーダーに録音されました。」と日向が答えた。

「通い事実婚だな、プロポーズしたな、と念押しされました。」今度は高木が答えた。

 日向は下を向きながら尋ねた。「自分たち、あ。私たちは処分されますか?」

「ああ。その通りだ。結婚しろ。隊長命令だ。拒否は許さん。拒否したら、EITOはクビ、空自や陸自にも圧力をかけて辞めさせてやる。私は横暴な上司だ。返事は!」

「はい。」「結婚します。」

 伝子は長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似たホイッスルで、普段は作戦中の合図に用いられる。依田達が待機していた為、ホイッスルを吹いたのである。

 勿論、依田達が聞こえる筈もない。オスプレイを中継して連絡が届いたのだ。

 すると、依田と慶子と、ホテルのスタッフが入って来た。スタッフは大きなバッグを持っている。

「ヨーダ。首尾は?」「私を誰だとお思いですか?明日、式と披露宴ですね。」

「若いカップルに変更して貰いました。クーポン渡して。」と慶子が言い、「しっかりした夫婦だな。」と、高遠は微笑んだ。

 採寸の結果を見て、スタッフは用意したウェディングドレスを持って、日向と共に慶子と奥の部屋に消えた。

 15分後。仮縫いのまま、一旦部屋から出てきた日向を見て、「まあ、綺麗。」と藤井は言った。

 伝子が頷くと、慶子はまた日向とスタッフを連れて奥の部屋に消えた。

 依田が簡単な電話を済ませると、奥の3人が出てきた。

「じゃ、先輩。明日ホテルで。」「うん。」と依田と伝子は短い挨拶を交わして、依田達3人は出て行った。

 入れ替わりに、中山千春とスタッフが入って来た。千春は、推理が得意でEITOの協力者の中山ひかるの母親で、宝石店を営んでいる。千春達は、実は、隣の藤井の部屋で待機していた。

 千春は藤井に鍵を返し、すぐに日向と高木の指の採寸をした。

「驚いたわ。やはり替え玉って言うか影武者努めるだけあって、伝子さんと同じサイズだわ。明日は、用意した、この仮の指輪にしてね。本物は、後日届けますから。あ。カタログ見ておいてね。」

 千春とスタッフは、すぐに出て行った。

「隊長・・・。」日向は泣いていた。「さやか。おねえさまのプレゼントは気に入ったか?急場だから、私のお古だが。」「はい。おねえさま。」

「高木。悩むことは無かったんだ。EITOの職場恋愛は自由だ。風紀を乱さない限りな。今夜は、ここに泊まる。さやかとのアレを済ましてから、明日返す。お前は帰れ。」

 高木は、固まっていた。

 藤井と高遠は、クスクスと笑っていた。

 翌日。午前11時。やすらぎほのかホテル東京。披露宴会場。

 小田社長の簡単な挨拶の後、依田夫妻がMCを勤め、進行をした。会場には、EITOメンバーの他、DDメンバー、中津興信所のメンバーが揃っていた。来賓には、前田空将や橘陸将もいた。総理からも祝電が届いた。

 午後1時半。ホテルの前に到着したのは、新郎新婦の為の車だったが、屋上ヘリポートに到着したのは、ロバートが操縦するオスプレイだった。

 高遠と伝子は急いで乗り込んだ。

 午後3時。大阪。EITO大阪支部。発着場。

 到着したオスプレイから伝子と高遠が降りると、オスプレイはすぐに飛び立った。

 そして、芦屋二美と本郷弥生が操縦するホバーバイクに、高遠と伝子はそれぞれ乗った。

 ホバーバイクとは、民間が開発した『宙に浮くバイク』で、EITOが改造、戦闘や運搬移動に使用している。

 午後3時半。天王寺。ハルカスの隣のホテル。

 ここは、総子夫妻が挙式したホテルである。

 披露宴会場に伝子達が走って入ると、既に披露宴は始まっていた。

 今日は、南部興信所の幸田社員と飲み屋の女将月山澄子の結婚式だ。仲人は、南部寅次郎と総子夫妻だ。EITOメンバーは勿論、南部興信所のメンバーも揃っている。吉本府知事からも祝電が届いた。

 小柳警視正も佐々刑事、真壁巡査と共に出席した。芦屋三姉妹も加えて盛大に行われた。

 平和な日だった。だが、その平安は、伝子や総子の願いも虚しく、その世に崩れた。

 午前0時。Redにメッセージが届いた。

 やっと、俺の出番だ。あとがつかえているのに、のんびりしている女子大生の時代は終った。夜明けまでに『変化』があるよ。

 》

 ―完―


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