ただ怖いだけのホラーではない、じっとりとした深みを感じます。


ホラーとは、ただ怖ければホラーなのでしょうか?

読み手の価値基準に囚われればそれまでですが、本作には愛や嫉妬、切なさや悲しみをはじめとする様々な心情描写が効果的に織り込まれ、物語に深みを与えています。

暗示めいた思念の波――

それらがある時、執拗に襲いかかる心の闇の部分を総じてホラーと呼べるのではないでしょうか?

凪いだ水を震わせる感情の水面が、やがてひた打つ波へと押し寄せる。

短絡的なホラーとは呼ばせない感情のうねりが心に迫る一作です。