僕はこちらの物語を読んで、なるほどと思いました。
「サレ妻」というコンテスト、創作のポイントは圧倒的に「共感性」に重きを置くのが正しい書き方となります。
かつてレディコミなどでどろどろとした物語がウケました。それはもうヒステリックな内容で、愛憎の狂気を深くえぐり、そこに共感性を強く打ち出したものです。そのイメージが強い中、現代はどういう時代かと言うと、どろどろ過ぎると引いちゃう感じがします。あんまり重いのは胃にもたれそうです(笑)。
ゆえに「冷静」さが共感性に必要となります。
ただし、その「冷静」さを強く打ち出すとあっけなく物語は終わります。不倫された、さっさと別れる、次の人生を始める、こんな感じです。では「サレ妻」としてエンターテイメントすべき「冷静」さを生かす方法とは何でしょうか?
それは「異常な環境の構築」となります。
社会を生きる上で、ストレスを感じる最大のポイントは「人間関係」です。こちらの物語のヒロインは「冷静」な女性でありながらも、「異常な環境下」でその心を何度も折られそうになりながら、それでも「冷静」に生きて行こうとします。
ただし、それは対処であり解決ではありません。物語の構造として、リアルなこの「抜け出せない苦悩」が読者様の「共感性」を産めるのだと思います。
どろどろの争いから「一歩引いた感性」、そういうマインドを現代の「サレ妻」は必要とします。ゆえに、こちらの物語は今時の「サレ妻」という立場の「真ん中」を、的確に捉えた立ち位置となっております。
さて、そんなヒロインがどのようなエンディングを迎えるか? 復讐やざまぁというお題を筆者様がどのように消化するか、答えは読んでのお楽しみです。
お勧め致します。
とても正しく、今時な「サレ妻」の感性をもったヒロインの物語。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
本作、いわゆるざまあ系のサレ妻のおはなしに分類されるのでしょう。
夫と妹の不貞に苦しめられた挙句に異世界に転生。
ところが当の加害者たちまで同じ世界に……!
執拗な嫌がらせ。一方的に理不尽に憎まれ、疎まれ。
ヒロインとともにぎりりと奥歯を噛むことになります。
ああ、ざまあが待たれる……。
と、なります。
なるのですが。
作者さまの作り出す物語は、そんなにちいさくない。
主人公といっしょに悔しがりながら、それでも作者さまならではの優しくてテンポのある文章にのせられて、世界を、学園を、魔法を、心地よさのなかに体験しているうちに。
あら、不思議。
あなたは正統な恋愛ファンタジーのどまんなかに、立っているのです。
頼りになる仲間があらわれ。
互いに、気持ちのちいさな芽が、ぽこんって生まれて。
嫌がらせにううってなりながら、その芽の、ゆっくりゆっくりの成長を見守って。
そうして、花開いた時に、ぜんぶがきれいに、終わるのです。
あああ、と、思わず声のでる結末。
そこに導く、すべてを紐づける、作者さまの構成力。
それでいて、主人公だけが完璧に救われて悪はどこまでも堕とされる、そんなかんたんな世界ではありません。
みんなみんな、負を抱え続けて。
それでも。
ネタバレはいたしません。
でも、大丈夫。
作者さまと、わたしを信じて。
さあ。
ざまあに終わらない、サレ妻。
そんな世界をみてみませんか。