ざまあに終わらない、サレ妻。


本作、いわゆるざまあ系のサレ妻のおはなしに分類されるのでしょう。

夫と妹の不貞に苦しめられた挙句に異世界に転生。
ところが当の加害者たちまで同じ世界に……!
執拗な嫌がらせ。一方的に理不尽に憎まれ、疎まれ。
ヒロインとともにぎりりと奥歯を噛むことになります。
ああ、ざまあが待たれる……。

と、なります。
なるのですが。

作者さまの作り出す物語は、そんなにちいさくない。

主人公といっしょに悔しがりながら、それでも作者さまならではの優しくてテンポのある文章にのせられて、世界を、学園を、魔法を、心地よさのなかに体験しているうちに。
あら、不思議。
あなたは正統な恋愛ファンタジーのどまんなかに、立っているのです。

頼りになる仲間があらわれ。
互いに、気持ちのちいさな芽が、ぽこんって生まれて。
嫌がらせにううってなりながら、その芽の、ゆっくりゆっくりの成長を見守って。

そうして、花開いた時に、ぜんぶがきれいに、終わるのです。

あああ、と、思わず声のでる結末。
そこに導く、すべてを紐づける、作者さまの構成力。

それでいて、主人公だけが完璧に救われて悪はどこまでも堕とされる、そんなかんたんな世界ではありません。
みんなみんな、負を抱え続けて。
それでも。

ネタバレはいたしません。
でも、大丈夫。
作者さまと、わたしを信じて。

さあ。
ざまあに終わらない、サレ妻。
そんな世界をみてみませんか。