第22話 オープンウォー 3

『陣営はランダムと言ったけどぼくは例外なんだよ。今回の後継戦に参加してはいるけど、ぼくは勝つつもりはなくてあくまで参加しつつ盛り上げたいって方向性なんだよ。

 だから陣ぼくの営だけはぼくのために設定された特殊なものなんだよ』


 そう言ってメクロムは指を弾く仕草をする。するとキンと小気味よい音と共にコインのような紋章がディスプレイにこぼれ落ち、拡大される。


『名前はウェイジャーズだよ。宣誓者を10人だけもらって彼らにゲームを盛り上げる、ひっかき回せるような特殊能力を与えて行動させるんだよ。

 勝つためじゃなく面白くするためだけに動くからよろしくね。まぁそもそも10人だけじゃ勝てないと思うけどね。

 ただ少人数すぎるから早々に全員やられておしまい、なんてつまんないことになっても嫌だし半数に欠員が出たらその際は希望者を募ったりランダムにスカウトしたりすると思うよ。

 ちなみにぼくの陣営は勝利しないから勝利報酬はないよ。かわりにどこが勝利してもその陣営に参加していたとして扱うから安心してほしいんだよ』


 無邪気な容姿、愛嬌のある笑顔、独特のトーンの話口調から剥離する自己中心的な遊戯欲求。他の神々との後継戦争も、宣誓者の命も、何もかもが彼にとっての娯楽のパーツでしか無いようだ。


『そうは言うけど、一体宣誓者にどこまでの力を与えるつもりなんだい?』


 ヴィッグリアがウェイジャーズに与えられるとやらに疑問を呈する。


『うんむ、わしらまではいかずとも、神の力を与えられ強化されたもの、となってしまっては他の宣誓者ごとき束になってもかなうまいぞ』


 ラムラエストも続く。子供のような見た目の彼らにどれほどの力があるのかはわからないが神はやはり神ということ。その力の一端が与えられるだけで大きな影響があるようだ。


『すごい力で戦場で大暴れ、とかそういうことにはならないようにしているんだよ。あくまでゲーム的な……そうだ、ひとつだけ開示しちゃおうと思うよ。

 例えば、相手とどんな内容でもいいから勝負をして、それに勝てば相手からなんでもひとつだけ奪い取れる。負けたら死ぬ。そんな能力なんかがあるよ。何か条件を満たすことで発動するような感じなんだよ』


『手間かかる、直接的な能力ではない、理解した』


『他のも手順や発動が限定的、ということか』


 ヒドゥン、アリアオーは納得したようだ。


『ふーん、確かにゲームゲームした能力ね。うちの雑魚どもにもなんか能力つけれない?』


『だめだよ』


『えー?やっぱ損してる気がする』


 ティキトゥスは余程カニ達が気に入らないようだ。メクロムは即座に断りを入れ再度説明を再開する。


『さあ、宣誓者諸君は選択したわけでもないのに開始時点で陣営が決まってて不思議に思ってると思うよ。理由を教えてあげると、召喚前の行動履歴とか潜在意識とかそのへんが大きく影響されて割り振られているんだよ。例外もあるけど基本的には今いる陣営が君達に合ってるはずだよ』


 ディスプレイの表示が変わる。そこには移籍、と書かれている。


『それでもこっちがいい、とかここがいやだ、なんてのがあると思うしちゃんと移籍機能もサポートしてるんだよ』


 得意げに表示を更新し、指さしながら説明を続ける。


『一定期間おきに陣営を離脱可能なタイミングがあるんだよ。そのときに離脱を宣言すれば一時的に無所属、離反者というものになるよ。その後付与される移籍待機期間を凌いでから移籍したい陣営の勢力圏内で再度移籍の宣言をすれば陣営の移動ができるよ。ちなみに移籍可能なのはORCAとエンフェルノ、ハーヴェスターだけでファントムフリートとシェルフィッシュにはいけないのと、離脱した時点の乗艦と乗組員はそのままもっていけるよ』


 離脱には特定のタイミングが必要、待機期間など、何か決まりがあるようだが陣営の移動自体はできるようだ。


『ただ、宣言可能な数はその時々の先着順で限りがあるよ。あんまり移籍しちゃうと数のバランス崩れちゃうしね。

 あと離反者になった時点で全ての陣営から敵とみなされる上に、賞金首に設定されて討伐報酬が付与されちゃうから待機期間をいかに生き抜くかを計算しないと危険なんだよ』


移籍自体はできるが活用させる気はなさそう、といった感じだ。

 離脱の選択が可能なのは特定タイミング下のみ、その際に離脱を選択できる宣誓者の数に制限がある、離脱をした時点で離反者となり全ての勢力から狙われる賞金首となる、待機期間がある関係上その状態でしばらく生き延びねばならない。


『さあ、ひとまず陣営の説明についてはこんなところなんだよ』


 いくつかのディスプレイが消える。これで6陣営、その全てがおおよそどういったものなのかが宣誓者たちに開示された。

 ヴィッグリア神のORCAオルカ星間同盟、アリアオー神のエンフェルノ連邦、ラムラエストのハーヴェスターリージョン、ヒドゥンのファントムフリート、ティキトゥスのシェルフィッシュ、そしてメクロムのウェイジャーズ。


『戦うのは6つの陣営、まぁ実際には5つになるんだよ。これから共闘だったり裏切りだったり面白いこともいっぱいあるだろうけど、最後に勝ち残るのは1つだけなんだよ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スターシップストリーマーズ ~配信者宇宙戦争に巻き込まれた少年、転移先では美少女艦長になっていた~ ばうまお @bawmao

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ