花火が打ち上がる
非常にマズイ状況になった。
おそらく近接戦闘最強と思われるヒタチが、魔王の触手に拘束されたからだ。
打撃斬撃に対するカウンター系のスキル満載のヒタチだが、拘束されたらスキルが発動させれないんじゃないかと思う。
魔王の触手はすでにヒタチの体中に巻き付いている。
――― ブチィィ!! ――
「はぁぁん!!♥♥」
何かが千切れる音と同時にヒタチ(♂)の喘ぐ声が聞こえた。
見ると魔王の触手には血に塗れたヒタチの右脚が。
……でもヒタチには右脚が残っている。
おそらく千切れた直後にスキルによって瞬時に再生し、何もなかったかのように元通りになっているのだろう。
千切られた脚が回復しながら元の位置に戻るのでは無く、新しい脚が瞬時に再生するタイプのスキルみたいだ。
ヒタチのスキルの追加効果か、魔王の体の右下のあたりが肉が抉れている。
「グハハハ!!
面白い!!!オモシロイ!!」
魔王は叫びながら順番に触手を動かしてヒタチを何度も何度も千切る。
――― ブチィィ! ―――
「ひぃぃぃん!!♥」
――― ブチィィ! ―――
「あぁぁん♥」
――― ブチィィ! ―――
「イイィィ!!♥」
………ヒタチは痛みが快感に変換されるスキルがあるから悲鳴は上げないが、変な声がその都度あがる。
腕や脚、首が千切られても再生していた。
どっちが魔王かわからん。
頭が千切られた時は頭から体が再生していた。
基準は頭みたいだが、頭を触手で締め潰されてもその頭が元通りになっていたので本当によくわからん。
しばらく玩具みたいにアレコレ痛められてきたが、直後にヒタチの体は再生し、ダメージは全て魔王に返されているので異様な光景が広がっていた。
あたり一面魔王の体の破片とヒタチの血塗れの体のパーツが相当数転がっている。
そして当のヒタチ自身は魔王に触手で拘束されているのだが、興奮と快感で全身汗ばみながら頬を紅く染めて裸でナニをおっ立てていた。
……奇しくも俺も裸で汗ばみながらナニをおっ立てているが、興奮しているわけではない。
性剣が魔王に反応して勝手に
ウン◯が出そうなのを我慢して脂汗が出ているのである。
「ククク………」
魔王が不敵に笑った。
その時後ろから声が聞こえた。
「ま……まず…い
は……早く……なんとか……せ……ねば…」
後ろを見ると満身創痍のタチアナが脚を引き摺りながら魔王に向かっていた。
聖剣は一本しか持って無く、しかも折れていた。
俺が押しただけでも倒れそうなタチアナはまだ諦めていなかった。
が、状況は最悪だった。
魔王は笑いながらスキルで抉られた自分の体と千切って捨てたヒタチの体のパーツを集めて食べ始めた。
「あ……あ………」
タチアナはもう歩く事も出来ず剣を杖のようにして座り込んでしまった。
――― グチャグチャ ―――
静寂の中に咀嚼音だけが響き渡る。
――― ゴクン ―――
あらゆるものを飲み込んだあと、魔王は触手を自分に巻き付け、縮んでいく。
そして触手が緩んで新たな姿が現れる。
出てきたその姿………まるで人間だった。
魔王の目の前で(裸で)触手に捕まっているヒタチよりも若干背の低い人間サイズ。
全身真っ黒で何処を向いているのかさえわからないその姿は、シルエットだけなら人を彷彿させるが、体のアチコチから出ている触手で人では無いのがすぐにわかるだろう。
「ふう……」
「あん♥」
魔王のため息とヒタチが喘ぐのと、ヒタチが触手で貫かれるのが同時だった。
まさに一瞬。
間違い探しの映像の前後くらいに一瞬でヒタチの胴体に触手が生えていた。
しかし直後にスキルで回復。
ヒタチの体内を貫いてた触手は、体の再生の際に消失したのか、触手の先端部分がボトっと落ちた。
見ると魔王の土手っ腹にも穴が空いていたが、そっちも即時再生。
もはやアニメの主人公でないと倒せないのでは無いかと思えるほどの強さになってしまった。
魔王は歪な笑顔で「ククク」っと笑うとヒタチを触手でグルグル巻にした。
そして……
……ズゾゾゾゾゾ………
「はぁぁん♥イクイクイクイク!!♥
ぎ……ギモチイイィィ!!!♥」
ヒタチの肛門から触手が侵入していく。
半端な攻撃は意味がないと学習したのだろう。
肛門から触手を侵入させて体内から一気に破壊するつもりのようだ。
ヒタチは痛みを快感に変換するスキルがあるので、壊れた機械のように「あ♥あ♥あ♥あ♥」と喘ぎながら、白目剥いて涎や鼻水・涙を垂れ流している。
よほどの激痛なのだろう。
すでにヒタチの体のサイズ以上の触手の量が体内に侵入しているようにも見える。
どうすることも出来ぬまま、その時が来てしまった。
「あ!!♥イク!!!♥♥♥」
――― パアアアァァァン!!! ――
ビチャ!! ビチャビチャ!!
ヒタチが一言発した後、ヒタチは弾けた。
水をタップリ入れた水風船のように辺りに肉片と血を撒き散らして……
「おうげぇぇぇぇ!!」
ビチャビチャビチャ
目の前の光景に我慢できず、盛大に嘔吐してしまった。
全て吐き切ったつもりでもまだまだ胃に熱いものがこみ上げる。
「ハァハァ………ヒタチ……ヒタチ!」
辛うじて叫ぶ事が出来たが返事は無い。
代わりにタチアナが倒れたまま応える。
「ヒタチ……は……もう……」
その一言で察した。
さっきまではどんな目に遭ってもヒタチは再生していた。
心の何処かでヒタチは死なないと安堵していたのだ。
例えバラバラに千切られても、すぐに再生されていたから気が付かなかったのだろう。
目の前の敵が、魔王と呼ばれるほどの強大で凶悪な存在である事を。
そして気が付かされてしまったのだろう。
ヒタチが死に、次は自分達の番であると。
そしてその恐怖と絶望にいち早く体が反応し、嘔吐してしまったのだ。
タチアナも色々垂れ流しているが、ダメージの蓄積か殺意をあてられたのか、気を失っている。
「神様……恨むぜ!」
剣も握ったことも無ければ喧嘩すらした事が無いが、一矢報いるためにタチアナの持っていた折れた聖剣を掴み魔王に走り出した。
細身で途中折れているのに、ズシリと見た目よりも重い聖剣を両手で持って2〜3歩走り出した時、風が吹いて急に剣が軽くなった。
いや、手首から先が無くなっていた。
そこに気が付いた瞬間に感覚が津波のように押し寄せる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!
何が起こったのかわからなかったが、状況的に両手で持っていた聖剣を手首ごと触手で吹き飛ばされたのだろう。
「う……うぁぁぁぁぁ!!!!!」
叫ばずにはいられなかった。
「あぁぁ!! ああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
叫びながら両手を見るが、手首から先は
無い。
ホースから出る水のように、血が心臓の拍動に合わせて出ているだけだ。
「うう……あぁ……」
絶望の声と共にその場に座り込んでしまったが、魔王はそんなこちらを見て満足そうに笑う。
そして触手で掴み引き寄せる。
魔王と向かい合う状態だ。
触手は小さな鱗みたいなのがビッシリ付いていてまるでヤスリのようだ。
こちらが動くか触手が動くと肌が削られて出血する。
おまけに車牽引ようのロープでキツく巻き付けられているように、いくら藻掻いても触手はびくともしなかった。
そんな触手を使い俺を引き寄せた魔王は、顔を近づけて低い声で一言。
「次は……お前だ」
直後ヒタチの時のように数多の触手が肛門を襲う。
……ズゾゾゾゾゾ……
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
風邪引いた時に入れた座薬の比じゃないくらいの激痛がお尻を襲う。
「がああぁぁぁぁあ!!!!」
苦しさから声にならない声も上げる。
魔王の触手は物理的に体内に入るだけでなく、途中から細胞レベルで同化し侵食しているようで、体の一部が触手になるような感覚がやだてくる。
激痛・頭痛・吐気・悪寒・焦燥感・不安感・虫が這う感覚、そういったものが一気に押し寄せる。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い
「ククク」
魔王の笑い声が低く響くなか、目の前が赤く染まっていく。
もう……紅い景色しか見えなくなった。
内側からミチミチと拡げられていく感覚がある。
あぁ……ヒタチみたいに殺されるんだなぁ………
魔王がこんなに強いなんて聞いてねぇよ……
ミチミチミチィ……
体が弾ける予感。
目の前は真っ赤ですでに何も見えない。
死ぬ前に文句の一つでも言っておきたい。
「クソバ神が!!!
話がちげぇじゃねぇか!!!」
――― パアアァァン!!! ――――
意識の最後に遠くで何かが弾ける音がした。
個性派勇者達と裸オッサンのドキドキ魔王討伐の旅 きちくいんちょ @kkk_kick14
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