第26話 文化祭準備 その2
「鏡よ鏡」
ゾワッとした。
凛とした艶のある声。
「この世で1番美しいのは」
なんか大人の台詞に聞こえてならない。
「誰?」
おぉ…
そんな溜め息混じりの空気に包まれた。
「はーい、
「ありがとう」
監督演出の
「うん、次にいこー」
久尾さんの本領というか本性というか、持っている性質が凄過ぎた。
これは期待以上の出来上がりになるのではないかと予想する。
この迫力に
気になるところだ。
「じゃあ鏡役の人ー」
斉藤の呼びかけに「はいはーい!」と元気に返事をしたのは
ちょっとした学内のアイドル的存在で、男女問わず人気者の女子である。
平均的な身長であるが、顔面偏差値は高い方、整った顔立ちなのだ。
そこにクリっとした大きな目は童顔を強調している。
腰辺りまで伸びているストレートロングヘアで、綺麗に手入れがされている。
「面白いこと言っても良いよって
「久尾さんと相談してねー」
「はーい!」
元気いっぱいで周りにいた俺以外の数人の男子は尊いものを見るような目だ。
「可愛いよな、谷家」
「あっそ」
「お前男か?」
「
「うっ…」
彼女いるんだから余所見をするな。
と思ったから言ってみたが、俺の方がおかしいのか?
分からんな。
※
「じゃあ次はー…魔女と姫のご対面をやろうかー」
メインイベントの場面だ。
「準備出来次第よろー」
「「「はーい」」」
役者達は配置につく。
練習中、役に入るとどこか別人になる雨宮さん。
だからなのか、とても魅力的に見えて、心を奪われそうになる。
カメラ越しから見つめて早3日。
ドキッとすることが多くなり、その度に頭をぶんぶん降って、演劇マジックだから、惑わされるなと言い聞かせる。
助手の竜二は能天気で羨ましい。
「じゃあー、やりまーす」
3、2、…。
委員長が合図を出すと、役者達は動き出した。
※
文化祭実行委員2人と俺と竜二で途中経過分の映像を観た。
視聴覚室を暗くし、スクリーンに映し出された数々の小さな物語は、集結されて大きな物語へと成長していた。
観終えると委員2人は「なんか、泣けてくる」「最後どうなっちゃうかな」と、感動の言葉を言っていた。
竜二も「撮影終えて編集してみんなで観たら大号泣かもな」と能天気に言う。
そうだなと同意の気持ちが表れる。
が、その他にとある感情も揺れ動いていた。
今まで気づかなかった、それは人として大事な感情で、今後何度も経験する事のない、でも必ず通る感情。
それに気づきつつあった。
彼女への想い、あるのではないか…
蓋をしてきたこと、だったのだろうか。
はたまた、出会って彼女の気持ちを知ってからずっと、知らない間に、密かに…。
ぐらつく心をどうにかこうにか芯を通す。
深呼吸をしてから機材の片付けを始めた。
"好き"が伝わってくるのだが、どうしたら良いものか? 奏流こころ @anmitu725
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。"好き"が伝わってくるのだが、どうしたら良いものか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます