第6話 切ないほどに

「大丈夫・・・?」

妻が問いかける。


僕の手を握り。

涙で滲む瞳で見つめている。


妻の背後に男が立っていた。

何処かで会った気がするのだけど。


「いくらVRでも衝撃は強いです」

意識が朦朧として僕には意味が分からない。


「御主人は本当に死ぬ気だったようです」

只、妻が嬉しそうに頷くのに安心した。


ああ・・・。

そうか。


会えたんだ。

良かった。


良かった。


僕は。

安堵のタメ息と共に。


再び。

目を閉じたのです。


でも。

妻の唇が。


切なく。

歪んで見えたのは。


僕の。

気のせい、だったのでしょうか。

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泣きたくなるほどに 進藤 進 @0035toto

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