暴発の行方
やり切れない日がある。
運転席の窓に向かって肘打ちをかましてやりたい。
金属バットでガードレールをベコベコになるまで殴りつけたい。
粉々になった硝子や無残にひん曲がったガードレールを見れば、少しは気持ちが晴れるというのに。
知らず知らずのうちにアクセルを踏む足に力が入り、速度計はいつの間にか90km/hを超えていた。
そんな夜、僕は声にならない叫びを上げながらめちゃくちゃにゴミが詰まった黒い袋を殴り続ける。
『重力ピエロ』に倣って、誰にも迷惑をかけないよう、バットでゴミ袋を殴り続ける。
いつの間にか手にマメが出来ていて、それが破れて血が出ても、僕は構わず殴り続ける。
筋肉疲労が限界に来て、立てない。
腕も上がらない。
カタカタと震える手のひらを見つめていると、目の前に血塗れの男が立っていた。
真夜中に光る血塗れの男。
「気はすんだかい?」
男は声にならない掠れた声で呟いた。
僕は何も言えずに、ただただ男を見つめて固まっていた。
「ゴミを殴るのはもうやめなさい。代わりに私を殴ればいい」
血塗れの男はそう言った。
「なぜ…?」
思わず口を付いたその言葉に、男は微笑みながら答える。
「ゴミじゃないから。声もあげられない一番弱い者だから。私は強い。だから私を殴ればいい」
文學の破片 深川我無 @mumusha
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