第35話 私だけのナイトにするために

〜ヨシオ(世を忍ぶ仮の名はサンディ)視点〜


 ぼくのアーネスト兄ちゃんが倒すにふさわしいとっておきのワルを探してアーネスト兄ちゃんが活躍出来る舞台をお膳立てするんだ!


 秘密を奪われた悪い奴らが口封じに兄ちゃんを追い詰めてもはやこれまでとなったところからの、スーパーマシンが駆けつけて形勢逆転、一気に畳み掛けるカタルシス。

 前世ではブラウン管越しに視聴覚だけを受けて応援してたけど次回は助手席で全身で体験して、ブラウン管の先にあるスタジオに届かない声でなく、アーネスト兄ちゃんに直接届く行動で応援するんだ!


―――

〜サンディ(本名はヨシオ)視点〜


 サンディは国内からの要望、提案書を国体たる聖女の御身自ら分類してる。備品が壊れたので管財係にとかそういうハンコ押すだけの案件は鼻歌混じりにバンバン盲判捺していく。

 本来なら各部署の責任者にある程度分散させる権限なのだが、王家転覆後カネの流れを詳細に把握し、反革命的分子に資金が流れないように目を光らせるというのは表向きの建前。本当はアーネスト――私だけのナイト――に活躍の場を作って、助手席から応援するためだというのはサンディ以外誰も知らない。

 サンディが書類をパラパラとめくっていると、ある地区の風土病患者の陳情書が出てきた。この問題については、工業排水が原因と判明してるし、向こうの政府向け対策として王子妃を送り込んでいた事も王室全員処刑により最終解決済みだが、原因となった企業はまだ存続しているし、対策も後手後手に回っている。何より被害者への補償は遅々として進まず。

 被害者に補償しないだけならまだしも被害者を分断して互いに牽制させるためのしょうもない連帯破りや子飼いの被害者団体乱立させたり、王室にオーナー一家の関係者を縁組させたり。

 その労力の半分でも被害者救済に充てればすぐに終わりますのに、被害者への謝罪だけは絶対にしないのですわ。


 王室に取り入ったら革命で皆殺しになったというのに、今度は大聖堂に取り入ろうとまたしょうもないことをやってきて策を弄してるのも調べがついてる。

 まずはこれを趣味と……もとい実益のためにアーネストと一緒にやっつけましょう。


 サンディは恐ろしく残酷でありながら恍惚とした笑みを浮かべていた。


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