第34話 ぺちゃんこストレージ
聖女のご学友にして国王たるものの学生鞄がぺちゃんこなのは示しがつかないということでサンディに怒られている。
Eクラスのドレスコードで中身が全く入らないように表と裏を接着剤で貼り合わせた鞄で通学するものなのだが。
「だって必要なものがあればライトニング呼んで持ってこさせればいいし」
車の中が要らんもので散らかってると思ったら持ち物全部突っ込んで自走鞄として使ってるみたい。私のマイケルが何たる堕落。
「何も入らないようにするくらいなら鞄持ってこなければいいじゃないの。」
いや、本当にごもっともです。このドレスコードは正直アーネストもおかしいと思っているが、何故か正式にEクラスに適用される校則になっている。昔、Eクラスの学生が核兵器級純度の同位体結晶を持ち込んだり(三波さんじゃないだろうな……)、鋼鉄の鎧もも片手でぶち抜く超合金製ポンチ持ち込んで(並木さんじゃないだろうな……)以来Eクラスはカバンの中に何か入れてくるのを禁止されてしまって、手ぶらもなんなので中身が入らない鞄を持参するようになっている。
「それじゃ、そのぺちゃんこカバンをマジックバッグに変えるわよ!それで文句ないね?」
えっ?マジックバッグって?あの無限収納出来る魔法のアイテム?聖女だからそんな魔法もかけられるのか?
するとサンディはライトニングを呼び出し、手芸用品を取り出した。なんだかんだサンディもライトニング号を自走鞄として使っていた。他人のこと言えないじゃないか。
結構ガチめの手芸してる。表裏の接着面を剥離し、あれやこれやと縫製している。およそ魔法をかける準備には見えない。
「はい、出来たよ~。接着剤で表裏貼り付けてたかわりにマジックテープで裏表貼り付けて必要があれば剥がして内容量確保できるようになったよ〜」
……何かを期待したのが愚かでした。そんな夢みたいなアイテムあるわけないよな。
「でね、容量増やしたいときは、無理やり押し込むと鞄全体が膨れて、最大で一斗缶三つ分入るよ」
いや、たしかにチート級の容量ではあるのだが、鞄全体が膨れて格納出来るって、ただただ伸びますってだけじゃないか。
「でも、重さも変わらないんだよ?」
えっそれはすごい。
「入れたものの重さ全部と」
そりゃそうだろ💢
とりあえず、アーネストは30センチほどの火柱が上がるライターを鞄に入れた。なんだかんだでE組平民組の伝統を色濃く引き継いでいる生徒だった。
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