渡辺の不倫がバレるまで
@kkk2046
第1話
今日も誰も笑ってなかったな。
渡辺けんとは相方の大島かずたとの舞台を終えると、小汚く狭い楽屋でストロングゼノを飲みながら目頭を押さえた。
ここのところ、老眼が急に来ていて、壁に貼ってある「禁煙!」や「オナニー禁止!」という貼り紙文字もぼやけてきている。
笑っていないだけならまだしも、見てもいないし聞いてもいない。みんなスマホを見ていて、中にはイヤホンをしている奴もいた。
「お前さぁ、あの入りのところ間違えてただろ。あれのせいで後半意味分かんなくなっちゃったじゃねえか」
大島が大声で怒鳴り、壁を足で蹴った。
「うっせぇなあ。あんなもんどうせちゃんと出来ててもウケねえよ!」
同じくらいの大声でけんとは怒鳴り返した。
「はぁぁ? 俺のネタが悪いってのか!」
「あー、うっせ、うっせー、うっせえ!」
殴りかからんばかりの勢いだった。喧嘩になるのも面倒くさいと思ったけんとは酒の缶を持って立ち上がり、楽屋を出た。
渡辺の不倫がバレるまで @kkk2046
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