第4話

昼もだいぶ過ぎた頃、昼休憩から戻った俺は隅の定位置に座る。


少しぼんやりしていると、俺の受け付けに利用客が現れた。



「おぉ、おかえり。どうだった?」


こいつらは、新人の頃から何故か俺の受け付けを好んで利用する変わり者パーティーだ。


「「「ただいま。無事に戻った。」」」


「あはは。お前らのそれ、久しぶりに聞いたわ。上手くいったようだな。」



俺が受け付けした長期の依頼を成功させて、無事に帰還してくれたようだ。

長く顔を見ないと不安になるから、元気な姿を見せてくれると安心する。



「確か、この依頼が成功すればBランクに昇格だったな。

ここからは依頼の難易度が一気に上がるから油断するなよ。


でも、ひとまずはおめでとう!高位ランク冒険者の仲間入りだ!

ここまでよく頑張ったな。


今日は飲み過ぎるなよ。」



新人の頃から知っているパーティーが昇格するのは、特に喜びを感じる瞬間だな。

これからも頑張ってほしいところだ。






そろそろ、早めに依頼を終えたパーティーが帰って来る時間だ。

ギルド内の空気が張りつめ臨戦態勢という雰囲気だ。




俺は、相変わらず誰も並ばない受け付けに座りのんびりと辺りを見回す。

特に変わったところは無いようなのでこのまま利用客が訪れるのを待つことにする。



いつものことだが、周りの受け付けが忙しそうなので居心地が悪い。


誰か俺の受け付けに並んでくれないかな。

などと考えていると、少し焦ったようなパーティーがこちらを見ているような気がする。

目で軽く促すとこちらに来てくれるようだ。



「どうかしましたか?」


「あ~、その依頼の完了処理をしたいのだが、、、」


なんとも歯切れが悪い。


「もちろんこちらで承りますよ。」


依頼書を出してもらい、完了の処理を行っていくが別に何も問題はない。

何故躊躇ためらっていたのかわからないな。



「これで、依頼の処理は完了しました。お疲れ様でした。」


「急いでいたから助かった。」


「いつでもご利用ください。」



急いでなくても利用してほしいところなんだが?

やはりおっさんには処理されたくないということか?


他にも並んでいるパーティーがいるので目配せしてみるが、誰も目を合わせてくれない。

なんだかとても悲しくなってきたぞ。





そうやってまたぼんやり過ごしていると、朝見送った少年のパーティーが帰ってきた。

笑顔で一直線にこちらに向かってくる。

なんか、ちょっと持ち直した。こちらも嬉しくなるな。



「おかえり。」


「「「「ただいま」」」」



不足している素材の納品依頼だったが、とても良い状態で採取してきている。

俺が朝伝えた通りだったので、驚いた。


「これなら割増で買い取ってもらえるかもしれないな。

依頼の完了処理は終わったから、買い取りカウンターへ持っていってくれ。


それから、ギルドの貢献ポイントにも加算があるから楽しみにしててな。お疲れ様。」





それからも、ぽつり、ぽつりと忘れた頃に、急いでいるようなパーティーが、躊躇いながらも通常の依頼完了処理のため利用してくれた。

ちょっと悲しい気持ちになりながらも、ギルドの慌ただしいピークタイムは過ぎていった。




ちらりと隣を伺うと、朝に記号一覧表を渡した新人嬢もこのピークタイムを上手く乗り切ったようだな。よかったよかった。






こうして、俺の長い1日は就業時間となる。



次の時間の職員に軽く引き継ぎをし、同僚たちにあいさつをしてギルドをあとにした。





やっぱり暇な1日だった。


今日もなんで俺が受け付けなのか、わからなかったな。











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冒険者ギルドの受け付け ~おっさんの長い1日~ アルミ @aluumi

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