第3話
まだ、昼ごはんには早い時間だが、ギルドは24時間営業のため昼休みはない。
そのため、職員たちは順番にお昼を取っていく。
俺は、人に待たれていると思うとゆっくりご飯を食べることが出来ない
受け付けに座る職員が少なくなった時間、ギルド長が外出から戻ってきた。
何故かいつも俺のところに寄ってから、執務室に戻るんだ。
今日もギルド長が声をかけてきた。
「おぅ、やってるか。」
「おかえりなさい。相変わらず暇してます。」
「そうか、なんかあったか?」
俺は、珍しい薬草が納品されたことを話した。ついでに思いついたことも伝える。
「あの年は豊作だったんですよ。
もし、今年も同じなら魔物の発生件数が増えるかもしれないんで、予算は多めに取った方がいいかもしれません。」
「なるほどな。その話
「俺がですか?」
「嫌か?」
「いえ、副ギルド長はいつも忙しそうなんで、こんなことくらいで声をかけるのは悪いかと思って。」
「いや、問題ないから。お前から頼む。
あー、ほら、俺は忘れるかもしれないからな。」
「ん?よくわからないが、わかりました。副ギルド長に話しておきます。」
「よろしくな。」
そう言って、他の職員にも話しかけながら執務室に入っていった。
俺もすぐに副ギルド長のいる執務室に向かう。
コンコン
「受け付けのボードです。」
ガタンガタガタ
毎回なんか慌ただしそうなんだよな。
「どうぞ。」
「失礼します。」
中に入ると椅子を勧められるが、すぐに終わるので遠慮し、ギルド長に伝えたことと同じことを話す。
やはり忙しそうなのですぐに退室することにする。
受け付けの定位置に戻ってから考える。
やっぱりわざわざ俺が行く必要ないんじゃないのか?
ギルド長も副ギルド長も暇じゃないだろうに。
よくわからんな。
そんなことを考えていると、掲示板の前に小さな男の子がいるのが目についた。
まだ、冒険者登録可能な年齢に達してなさそうに見えるな。
親はいるのか?
周りを見るがどうもひとりだ。
こんなところに何故?
他の職員は忙しそうだし、俺が声をかけてみるか。
「少年、何か探しているのか?」
「あ、あ、あ…」
「大丈夫だ。落ち着いて。ゆっくり話せ。」
「ぼく、冒険者になりたくて」
「そうか。今いくつだ?」
「9歳」
「そうか。冒険者登録が出来るのは、早くて来年だ。わかるか?」
「うん。」
「知っていたか?」
「ううん。」
「そうか。親はなんて言ってるんだ?」
「いない」
「そうか、誰と暮らしているんだ?」
「ばぁちゃん。」
「じゃあ、ばぁちゃんに来年登録してもいいか聞いてみな。わからないことがあったらいつでも聞きにきていいからな。
それでなんで冒険者になりたいんだ?」
「早く稼げるようになって、ばぁちゃんを助けたいんだ。」
「そうか、偉いな。なんで冒険者なんだ?」
「近所のお兄ちゃんがかっこよかったから。」
「そうか。そうか。なら、立派な冒険者になるには、まずばぁちゃんと話してからだな。」
「うん。じゃあね。」
「気をつけてな。」
冒険者に憧れる子供は多い。
カッコいいからな。
でも、危険と隣り合わせだ。
だから万全で
冒険者たちには、もっと俺たち受け付けを上手く使ってほしいとも思っているんだ。
ん?さっきの少年がもう戻ってきたな。
「どうした?」
「ばぁちゃん連れてきた。」
「お、おぅ。そうか。何か手伝えるか?」
「ばぁちゃんに説明してほしい。」
「わかった。」
少年が連れてきたおばぁさんに、冒険者のことを説明する。
それからおばぁさんの方は、少年の現状について説明してくれた。
冒険者になることに反対はしてないが、賛成でもないらしい。
おばぁさんも病気がちで将来に不安があるそうだ。
まだ登録できるまでに時間もあるし、なるかならないかは今すぐ決める必要はない。
冒険者にしても他の仕事につくにしても、読み書き計算と体力は必ず必要になるだろうからそれだけ伝えてみた。
どうするかは彼らが決めることだ。
「少年、これで良かったか?手伝いになったか?」
「うん。ありがとう。」
「少年は賢いな。いつでも来ていいからな。」
もし、将来冒険者になることを選んだとすれば、あの少年はきっと優秀な冒険者になれるだろう。今から楽しみだ。
「ボードさん、お昼行ってください。」
「おぅ。」
少し遅くなったが、昼飯にするか。
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