流雪・受験

 昔から流龍リウリュ兄さんは魔術が好きだった。

 自分が使えないものに対してどうしてそこまで情熱を傾けることができるのか、と思わないでもない。でも、優れた魔術研究家の中にも魔術使いではない者はたくさんいて、そんな彼等が優れた呪文を生み出してきたという歴史もあるのだから、侮ることはできない。

 実際、兄さんの魔術に関する知識は凄まじく、過去の歴史に名を残すような大魔術師はもちろん、ほぼ無名の、些細な魔術の詠唱に僅かな貢献をしたような魔術師、魔術研究家の名前まで知っており、時々その知識を唐突に披露してわたしを辟易させたりする。

 もちろん、兄の話す内容は魔術師として勉強になることも多い。しかし、とりあえず都の魔術学校を目指すわたしにとって、例えば氷魔術の呪文がおよそ百アーキを要するものだった頃に、それを九十五アーキに減らす改良を詠唱に施したのは誰か、というのはさほど重要ではない。その後にパ・ラケという天才的な魔術研究家の出現により、あらゆる魔術の詠唱時に使うアーキは半分以下になったのだから。

 そういった真に重要なことしか魔術学校の筆記試験には出ない。兄のような魔術史の詳細な研究は、それこそ魔術学校に入った人達がやるような専門的な内容だ。

 兄は魔術に関する本もやたらと蒐集しており、働くようになってからは手当たり次第に集めている。まあ、家にもお金を回しているし、そのあまりを自分のために使うのにとやかく言うつもりはない。それでも書籍は高価で、兄が好むような『昔の魔術に関するもの』となると極端に少ない。そんな中で自称魔術研究家が遺したという手書きの文章を紐で綴じたものにまで手を出し始め、これは実に貴重な記録で、などと話し始めたときにはちょっと呆れた。

 好事家ってのはそういうものだと父さんは笑っていた。

 まあ、そう言いつつわたしも兄の本棚から面白そうなものを借りることもある。兄は決して断らない。

 隣のカッシュが湖に落ちた事故以来、わたしが魔術を使えなくなってしまったのを、兄はとても心配していた。

 兄がどれだけわたしを自慢に思っていたことか。人の怪我や病気を治す魔術を、もっと気軽に使えるものにする、ということを兄は熱っぽく話していた。それこそ、いつかわたしがそれを使うことを夢見ていただろう。

 魔術を使うというのは、わたしにとって事象の隙間にくさびを打ち込むような感じだ。どれぐらいの大きさの楔をどれくらいの強さで打ち込めば相手が壊れるのか。慣れてくればわかる。そういった感じだ。

 わたしには魔術の才能があった。昔から兄は何度も誇らしげにそう言ってわたしを褒めた。それが使えなくなったとき、兄はわたしを責めるでもなく、だったら魔術の研究家になればいいよと言ったのには笑ってしまった。

 氷の張った湖に落ちたカッシュを助けられなかった。

 何故助けられなかったのか。最初、わたしの中には自分を責める気持ちが残り、それが胸の中で重く渦を巻いていた。そのせいか魔術が使えなくなった。

 お世話になっていた村の魔術学校の先生の前でも火がまともに出せないほどだった。

 でも、魔術の使い方を忘れた訳ではなかった。

 いずれ、また元に戻ることは分かっていた。魔術を操る。それは生き方だ。そこに大きな道があり、多少遠回りをしたところで、進むべき方向は変えようがない。

 兄の本棚から借りてきた幾つかの手記。

 それらを読み、魔術に取り憑かれた人々の過去の熱を感じながら、日々を過ごし、気持ちも落ち着いてくると、いつの間にか自分が魔術を使えるようになっていることが何となく分かった。

 わたしはひっそりと魔術の練習を再開することにした。

 安全対策として水を入れたバケットと、坩堝を自室の机の上に並べ、炎を出す一アーキの詠唱を行ってみた。

 坩堝に生まれた炎は小さかったけれど、青白く長い間燃えていた。魔術師としての力が上がっていることがわかった。

 だけど、それを誰にも言うつもりはなかった。

 ふと思ってしまったのだ。これ以上進むのは危険ではないかと。

 普通の学校に行って、魔術とは無縁の日々を送る。それもまた魅力的な選択ではある。強力な魔術は誰にでも使いこなせるものではない。でも、残念ながら必ず感謝されるわけではない。事故が起こった現場で誰かを助けることができる。感謝もされるだろう。でも、全てではない。助けられない場合は恨みを買うことになる。

 助けられない人の方が多い場合は次第に恨みの方が大きくなる。そして、魔術師の数より事故に遭う人の方が多いという現実がある。

 もちろん、人の生き死にに関わらない魔術師の仕事というのも存在はする。しかし、わたしはきっとそうではない方を選んでしまうだろう。兄の影響かもしれない。

 魔術師になるのを辞めるなら、もう呪文も封印するべきだったのに、わたしは迷いながら一人で自分の魔術を育てていた。

 


 あの夜に何もかもが変わってしまって、わたしは思い知ることになった。

 魔術からは逃れられないということを。


 

 都へ出るという兄の案はとても魅力的に思えた。

 七万アーキの魔術を使ったわたしの体は一気に十年近く成長してしまった。あの時、皆を救うにはそれしかないと思ったのだ。

 でも、そこまでしても父を救えなかった。兄は左目と左の腕を失った。

 周りの視線もあるし、そんな雰囲気の中で生きていくのは辛いものがある。

 だから、都でやり直すというのはとても現実的でありがたい提案だった。魔術学校の試験で成績が優秀であれば学費も免除になり、指定の下宿は格安で家族と住むことができる。本当は寄宿舎があって、そちらは無料で食事も出るのだが、それだと兄は入れない。

 わたしは入学の手続きをしながら一人で試験の勉強をした。

 

 

 試験前日、わたしは兄と一緒に都に来ていた。

 この国で『都』とは城のあるパダタウの町を意味する。西にケマナの港町があり、南北に流れるポトゥ川沿いに栄えた歴史のある町だ。

 西の川を背に大きな城が聳え立ち、町で一番賑わう市と、その周辺に並ぶ商店があって、常に多くの人々が石畳の道を行き交う。覚悟してきたつもりだけど、田舎の村とは世界が違っていた。数年前に父に連れてこられたことがあったけど、その時よりも格段に進歩している感じだった。

 わたしと兄はあちこちの店や、只の住居なのにやたら立派な建物を見ながら言葉少なく歩いていた。最初はその辺りで昼食を、という相談をしていたけれど、あまりに値が張るので諦めた。

 魔術学校は町の東にあり、そちらはやや落ち着いた家並みが続く。

 乾いた土に細かな砂利が敷かれた道の両側に並ぶ家や店は二階建てのものが多く、木でできた家も珍しくはない。素朴な感じのレストランが看板を出しており、それは何というかまっとうな値段だったので兄と店に入って魚料理を食べた。『消えない灯り亭』という店の名前を覚えて、引っ越した後もまた来ようと思った。

 魔術学校の指定となっている下宿を外から見る。三階建ての立派な煉瓦造りの建物だ。やや古い外観だけど、なんと言っても月に五千パタクで住めるというのが魅力だった。他の下宿の値段を調べたけれど、南の治安の悪そうなところでもこの五倍はするし、学校周辺の東地区なら十倍だ。お城のある西地区では相場が十五倍以上なので候補にも入れていない。つまり、破格の値段なのだ。もちろん、優秀な魔術師を集めたいという城の方針があるのでそちらから補助が出ているのだろう。

「絶体ここだよね」

 建物を見上げながら漏らしたわたしの言葉に兄は頷きながら「まあ、流雪リウシェが魔術学校に受からなきゃだめだけどな」と言う。そうだ。わたしは過去を断ち切るためにここへ来たのだ。試験に落ちたからと言ってあの村に帰るつもりはない。

 現状だと父が遺してくれたお金と、田舎で兄が働いて貯めた額を足しても、南地区の宿で三年生きていくのが精一杯だろう。

「筆記試験も実技試験も自信があるんだけどな」

 唯一つ心配な点があるとすれば、それは年齢だった。

 わたしは自分の年齢を十八歳と偽って申請していた。村の役場でもらった書類の年齢欄は簡易数ではなくホルヴィ綴りで数字を記載してある。十二カリュ・サンを同じ色のインクで十八トゥカリュ・サンに書き換えて提出した。兄と相談して、二十歳以上に見えるけれど、まあ、これぐらいならごまかせるだろう、そして書き換えが容易だということで十八に落ち着いた。本当は今年で十二歳だけど。


 明日試験を受ける魔術学校の正門前まで歩く。

 学校は東地区の中央にあり、広い敷地は白く塗られた高い木の柵で囲われている。これは百年以上朽ちていない。魔術で作られた優れた防腐剤を使っているかららしい。本当だろうか。

 柵の向こうには芝生が広がり、花壇や噴水が白い小道で繋がっている様が見える。なんと美しい学校だろう。こんな所に行けるのか。いや、行かなければならない。

 正門前の大通りを南へ。しばらく歩くと次第に建物が小さく、汚れた感じになっていくのが分かる。

 受験のために学校の近くの宿を探したけれどどれも大層な値段で、おそらく入学試験を受ける人達が殺到しているからだと思うけど、村の役所で安いところを探してもらったら南区の宿屋を紹介された。

 もらった地図によれば、この通りを真っ直ぐ行けば宿屋に着くので明日は逆に行けば学校だ。迷いようがないのがありがたくはあるが、次第に家の造りが頼りないものになってきて、路上に壊れた桶やら瓦礫やら何か分からないものがあちこちに目立つようになってきた。人はそれなりに行き交っているけど、城の近くとはまるで異なる雰囲気だ。玄関が開け放しになっている家の前で座り込んでいる年寄りがこちらを見てうっすらと笑みを浮かべているのすら怖ろしく見える。瓶を手に路上に倒れている人は酔っ払って寝ているのだろう。微動だにしないけど。

 兄もわたしの不安を察したのだろう。「大丈夫だって。明日も一緒に行ってやるから」と言ってくれた。

 そして『宿』と書いた建物が見えた。二階建ての、まあ、周りの建物より大きくて、古びてくたびれた感じではあるけど落ち着いた雰囲気と言えないこともない。

「ここだよね。宿の名前なんだっけ」

「羽虫荘だって」

 兄が門の柱に消えかかった文字を指さした。知らなければ読めないだろう。



 カウンタにいたのはちょっと耳が遠そうなws、大きな声で喋るお婆さんで、喧しくはあったけど何だか安心できた。

 案内された二階の部屋は意外なほどちゃんとしていた。夕食は一階の食堂で食べられるそうだ。これなら明日のためにゆっくり休めそうだ。

 持ってきた荷物を整理していたら、殆ど手ぶらで来た兄が「ちょっと外に行く」と言った。

「どこに行くの?」

「仕事を探してくる。案内してくれる役所が南区にあるんだ」

 そうか。わたしはまだ魔術学校への入学が決まっていないし、兄は仕事も決まっていない。わたし達には戻るという選択肢はないのだから、早めに仕事を探すのは良いことだろう。

「わたしもついてく」

 一人でここで待っていたら、きっとずっと落ち着かないだろう。

「町に慣れておきたいし」

「この辺りはあまり治安が良くないらしいぞ」

「そこを見ておけば、大抵のことには驚かないでしょ」

 下に降りて兄がお婆さんに職安の場所を訊ねた。

「ああ、ここをちょっと南に行くと教会があるから、そこを右に折れたところにあるよ」

 お婆さんは兄の左腕の袖を見た。

「良い仕事が見つかるといいね」

 そして、わたしを見て言った。

「若い娘さんは日が暮れたら外を歩かない方がいいよ」

 

 

 目立つ看板のおかげで役所はすぐにわかった。

 外観は周りの建物と完全に同化している。看板だけが妙に新しいが、わかりやすいのは良いことだ。

 役所とは言え、普通の家といった佇まいだし、中に入ると無理矢理あとから付け足したカウンターの向こうに眠そうな目をした大男が座っていて、ずっと部屋の隅を見ている。あまりこれからの自分のことを相談したくはない雰囲気だ。

「こんにちは」

 兄が挨拶をすると、大男は兄とわたしを見て一瞬だけ笑顔を浮かべた。

「いらっしゃい。仕事探してるのか?」

 ぞんざいな態度で聞いてくる。兄が「そうだ」と頷くと「お前さんか? そっちの姉ちゃんか?」と訊ねてくる。

「俺だ。ここなら俺みたいな奴でも仕事を紹介してもらえると聞いた」

 そういうと大男は頷く。

「まあな……あんた、モップで床は磨けるか?」

 兄は頷いた。

「もちろんだ」

「人を運ぶのはできるかな。台車に乗せたり下ろしたりするらしい」

「どうだろう。怪我人や病人を運ぶとなると、万全とは言えないな」

「ああ、それは大丈夫だ。相手は死んでるからな。多少手荒に扱うことになったって文句は言わないだろう」

 兄がわたし見た。わたしは黙っていた。

「なら問題無い。その仕事をやりたい」

 兄が働けるのはそういう仕事であり、本人はそれを覚悟していたということだ。

「死体置き場の清掃と、死体の運搬だ。では、地図を渡そう。実際に採用するかどうか決めるのは先方だ。うまくいくことを祈ってるぜ」



 夕食はお婆さんの手料理だった。鶏肉を豪快に焼いたもので、まったく知らない香草の匂いがすごくて、ちょっと驚いたけどとてもおいしかった。客はわたし達だけかと思ったが、食堂には数人の親子と思われる人達がいて、皆言葉少なく食べていた。もしかすると明日の魔術学校の試験を受けに来ているのかもしれない。そう思うとわたしにも緊張が移ったようで、考えまいとしていた明日のことが急速に心配になってきた。

 わたしはもう村に戻るつもりはないし、魔術師としての道しか考えていなかった。明日の試験は何としても合格しなければならない。魔術学校を卒業すれば魔術を生業として生きていくことができる。

流雪リウシェなら大丈夫だろ。魔術の歴史の中でも十分に優秀な例だと思う」

「そうかな」

「僕が言うんだから間違いないよ」

 自信満々だ。わたしは兄がどれだけ魔術の歴史に精通しているのか知っている。だから、その言葉の信頼度は高いとは思う。身びいきがなければだ。

 あれこれ思い悩んでもしょうがないので部屋に戻って早めに寝ることにした。



 朝、目が覚めたときにはまだ窓の外は薄暗かった。

 窓を開ける。二階から見下ろす南区の有様は昨日と変わらず薄汚れた町角という印象ではあったが、人がいないだけで怖ろしい感じは薄れていた。

 今日、わたしの運命が決まる。いや、落ちたところで村を離れることには変わりない。


 朝食は一階の食堂でテーブルの上に並べられたパンと牛乳、エトラの実を勝手に食べる。お婆さんは何やら忙しげに働いており、時々食堂に顔を見せるが、すぐにまた姿を消す。

 朝食を終えた兄とわたしは出かける準備をする。

 いよいよか。

 魔術学校までの道を歩く。

 試験を受ける。自分の力で自分の将来が決まってしまう。そんな不安に向かう道のりは、今までに感じたことのないとても不思議な気分だった。

 魔術学校の白い木柵。その向こうには庭園のような光景。奥に三階建ての立派な木造の校舎がある。

 門の前には帯剣した警備員が立っていた。鋭い目付きの、警備にはもってこいのがっしりとした体格だ。わたしは名前と村名と嘘の年齢を警備員に言った。彼は折りたたんだ紙を見てわたしの名前を確認したのか「入って右手の青い屋根の校舎へ。あそこに見える男の指示に従って下さい」と言った。青い屋根の校舎は左右にある。右手には立っている人影があった。今まさに受験者であろう男の子がその人影に導かれて中へ入っていった。

「じゃあ、お昼にはここで待っているから。流雪リウシェのいつもの力を出せれば何の問題もない。頑張れ」

 兄の言葉に頷いてわたしは門を潜る。

 兄はこれから昨日紹介された仕事場に行くとのことだ。

 途中まで歩いて振り返ると兄はまだ門の前に立っており、わたしを見ていた。



 青い屋根の校舎を見上げる。大きな透明な窓が並び窓の両側には赤い枠が一階から三階まで伸びている。窓と窓の間は白く塗られており、眩しいほどだ。おそらく防塵処理でも知れているのか汚れ一つない。

 古いはずなのに、輝かんばかりに美しい。

 ふと考えてしまう。わたしにはこんな立派なところで勉強する資格があるだろうかと。

 学舎の前に立っていたのは若い青年だった。兄より少し上だろうか。黒く長い外套を羽織っているのは何か教える側の人のようにも思える。

「受験生ですか?」

 にこやかな表情、穏やかな口調で話しかけてくる。少し緊張が和らぐ。

「そうです」

「では、そこから入って『水』と書かれた部屋へどうぞ。机の上の札に名前が書かれていますから、自分の名を探してください。あ、筆記具はお持ちですか」

「はい」

 と答えつつ、心配になって自分のフートゥンを開ける。大丈夫だった。

「では、間もなく試験が始まります。落ち着いて頑張って下さい」

 中に入る。目の前の教室の扉に虫の殻を嵌め込んで『水』と文字が書かれている。その右隣は『炎』でその隣は『土』だ。

 教室は既に二十人ほどが席に着いていた。横長の机に一定間隔で名前の書かれた札がある。もう空いているのは五つぐらいしかない。

 わたしの席は後ろから二列目の中ほどだった。

 席について使い慣れた筆袋を出す。

 周りの人達を見る。殆どが十五歳までだろう。

 三列前の一番窓側の席にいる子が横を向いた。とても若い。わたしと同じ十二ぐらいだろうか。合格したら友達になれるといいな、と思ったけど、わたしの見た目はそうではない。向こうからしたら周りが自分より歳上ばかりで、その中でも群を抜いているのがわたしだ。

 それは少し悲しい。

 そんなことを考えていたら先ほど校舎の前で案内をしてくれた男の人が入ってきて、試験の問題を配り始めた。

「もらった人から始めて良いです。あと、試験問題は全てが同じではないので、右上に自分の名前が書かれていることを確認して下さい」

 問題は虫皮紙に手書きで書かれている。ほとんど同じ内容だけど、それぞれ得意とする魔術の分野が違うため、それに合わせて作問されると聞いていた。基本的に筆記試験で落ちることはないと言われている。やはり実技が重要らしい。

 最初の問題は基礎的な学力を試すようなものばかりで、単語の綴り、掛け算、割り算、分数の計算などは最近まで習っていたので簡単に解ける。

 魔術に関する問題は、わたしは一応得意な魔術の分野を水と書いていたので、その歴史や、人々の生活でそれがどのように役立つかを問う内容だった。何の問題もない。優等生的な解答を記す。

 最後の問題群を見てわたしはそれこそ血の気が引いた。

『王都周辺の村から徴収する税の名称とその額の決定方法は?』

『都の議会政治に属する貴族院の任期は何年か?』

『都の議会政治に属するもう一つの院は何か?』

 そんな内容の問題が五つ並んでいる。

 何一つわからない。

 税の名前は何だっけ。属州何とかと言ったような気がする。貴族院って聞いたことがあるような……思えば申請した十八歳はこの国では成人だ。おそらく、わたしの歳相応の『常識』が試されているのだろう。曖昧な解答を書いてまったく的外れだったら恥ずかしいし、こんなことも知らないのはいかがなものか、などと不合格の烙印を押されてしまうのだろうか。

 とりあえず何年かという問題なら数字を書けば良いだけなので、書かない手はないだろう。でも、もう一つの院の名前を知らないのに年数だけ書くというのはいかにも当てずっぽうではないか。いや、実際そうなのだ。

 筆記試験はさほど合否に影響はない。よほど非常識でなければ。

 まさにそれではないのか。

 答案の文字が滲む。

 泣いている場合ではない。でも、どうなるものでもない。

「はい、では終わりです。手を止めて下さい。解答を集めます」

 穏やかな声が試験の終わりを告げた。

 青年試験官がわたしの解答用紙を持っていくのをぼんやりと見ていた。

 結局、最後の問題には一つも答えを書けなかった。

「では、続いて実技試験に移ります。申込書に皆さんの得意な魔術の種類を書いていただきました。お気づきでしょうが、この階の扉には水、炎、土の文字が書かれています。皆さんの得意とする魔術の部屋に移動して下さい。ちなみにここは水です」

 その言葉を聞いてもまだ頭が働かない。

 周りの受験生が立ち上がって教室を出て行く。その動きで我に返る。

 実技だ。筆記試験の挽回ができるだろうか。 

 教室を出なければ、と思って立ち上がり、ここが水であることを思い出した。残っている受験生は僅かに三人だ。長髪の男の子と、わたしと同じぐらいの歳だと思った女の子だ。

 廊下の様子からすると皆の人気は炎に集中しているようだ。多くの人が最初に使う魔術が炎だろう。生活に直結して役に立つ。魔術師になってからも使いどころは多い。次は土だ。穴を掘り、岩を粉砕する。人々の生活する場を広げるにはとても重要な役割を担う。

 炎も土も一通り使える。そういう人は多い。でも、それこそ人々の生活に必須である水魔術はまったく使わない人も結構いる。

 それは、この魔術の効率が悪いからだ。

 例えば鍋一杯の水を温めるのに、初心者は十アーキを必要とする。炎魔術を使えば一アーキで小さな火を出して薪に火を点ければ用は足りる。もちろん、薪もなく瞬時にわかすことができるという点は異なる。しかし、魔術師が命を削ってでもそうしなければならない状況はそれほど多くはない。

 受験においても水は人気がない、と聞いていた。だからわたしはここを選んだ。

 魔術学校としては満遍なく人材を揃えたいだろう。世間に最も要求される水魔術の成果とは『氷』の作成である。ただ、これは水を湧かす以上に難しく、それこそ鍋一杯の水を凍らせるのに初心者は二十から三十アーキが必要になる。熟練した魔術師ならこれを数分の一まで下げることができるけれど、熟練の度合はどれだけ魔術を唱えたかという回数にも大きく依存するので、水魔術師は総じて短命である。

 そんなこともあって、いまこの教室に残って『水』魔術で試験を受けようとしているのは、わたしと同じように手薄なところを狙って、という者ばかりだろう、と失礼なことを考える。

 試験官の青年はそのまま残っていた。

「じゃあ、実技試験を始めます。僕はこの王立魔術学校の教員をしているカツェネと言います。皆さんの水魔術の試験を担当します。よろしく」

 自己紹介をされて、わたしは曖昧に小さく頷いた。長髪の男の子がはっきりと「よろしくお願いします」と言った。しまった、そうすべきだったか。もう遅い。失敗だ。

 カツェネ試験官が笑みを浮かべた。

「はい、元気なのはよいですね。まあ、皆さん緊張しているからね、いま挨拶ができなかったからといって気にすることはありません。僕も十年ぐらい前にこの部屋で実技試験を受けたんだけど、手も声も震えてしまってうまく魔術を練ることができなかった。いまでもその時のことを夢に見ます」

 ああ、そうか。おかげで気持ちが少し落ち着いた。なんて良い人なんだろうと思った。

「では、皆さんにやってもらうのは……」

 試験官は屈んで教壇の陰から透明な水槽を抱え上げた。

 教壇の上に置かれたそれは半分をやや過ぎたところまで水が入っており、ゆらゆらと水面が揺れている。

「はい、ジュンチシロの殻でできた水槽です。透明なのはそれなりに高価なんだよね。加工の途中で特殊な虫の体液に浸けておく工程が必要なので手間も日数もかかるそうです」

 無駄口が多いのはわたし達の緊張をほぐそうとしているのだと思っていたけど、もしかして単にお喋りが好きなのかもしれない。

 わたしには何となく試験内容の察しがついた。

「これを凍らせてもらいます。使うのは三アークの呪文で」

 やはりそうか。これなら大丈夫だろう。

「では、最初はルグラ君からお願いします」

「はい」

 長髪の男の子が立ち上がった。机の間を迷いなく教壇まで進む。最初に実演するのは緊張するだろう。わたしでなくてよかった。

「三アークを一度だけですか」

 ルグラが問う。先生がうなずく。

「それでできるだけ大きな氷を作って下さい」

「わかりました」

 ルグラが手で印を組んだ。

「三つ。三つの命を水の精霊フラに」

 自信に満ちた声が教室に響く。彼の足元が青く光る。祈りが届いた証だ。

 わたしは彼が魔術を行うのをただ見ていた。

 呪文が終わると彼の手の間に青白い光が生まれた。

 その光が水槽へ飛ばされると容器の中の水が音を立てて固まった。

 三分の一くらいは凍ったようだ。わたしがいた村の魔術学校の常識では、三アークでこれなら上出来だと思う。しかし、優れた魔術師が集まるであろうこの場所ではどうなのか。

「はい、よくできました」

 試験官が手元の帳面に何か書いた。書き終えると水槽に手を当てて小さく何か呟いた。水槽の水が一瞬青く光る。どうやら氷が溶けたらしい。なんと素早い詠唱だろうか。

「では、次、ラユンコルトさん」

「はい」

 十二歳ぐらいの少女が立ち上がった。ラユンコルトという立派な名前を覚えておこうと思った。

 少女が迷いなく水槽の前へ移動する。

「三つ。三つの命を水の精霊フラに」

 足元が青く光る。もちろん、詠唱の文言は前に唱えたルグラと同じで、いま最適とされているパ・ラケ式だ。

「三つの命のお力をトウとしていまここに顕現させ給え」

 青い光は最初のルグラよりも強かった。

 そして、水槽の波が収まる。

「お、これは」

 試験官が声を上げる。

 ほぼ全体が凍っていた。すごい。

「なるほど」

 帳面に何か書き込み、再び短い詠唱で水槽の氷が溶けた。

「では、最後に流雪リウシェさん」

 ついに呼ばれた。

「はい」

 立ち上がる。胸の鼓動がひどい。

 できるだろうか。

 突然自信が持てなくなる。

 駄目だ。

 魔術の成果は魔術師の心の動きに連動する。しっかりしなければ。

 印を組む。大きく息を吸い込む。

「三つ。三つの命を水の精霊フラに。畏れ慎み奉奠ほうてんいたします。我に力を分け与え給え」

 足元が青く光る。わたしの人生から三アーキが失われた。血が音を立てて流れるような軽い耳鳴り。問題無い。うまくいっている。

「水の精霊フラしずくありがたし、水の精霊のご加護ありがたし、水の精霊の怒りなおありがたし。我の感謝を聞き入れ給え。願いは祈り。祈りは言葉。三の命のお力をトウとしていまここに顕現させ給え」

 手元に光は出なかったが、手応えはあった。

 印を解く。息を吸う。

「あれ? 凍ってる」

 試験官が水槽を覗き込む。きれいに全体が凍っている。よかった。

「いま、君の嘆願の後の光が出なかったよね? 凍る音もしなかった」

 水系の魔術であれば詠唱完了後に青白い光が出現するのが一般的だ。

「あの、アークが少ないと出ないみたいです」

 いまのわたしはそういう状態になっているのだ。何故かはわからない。

「そうなんだ」

 試験官が帳面に何か書いた。光がないと減点だろうかと心配になる。

「では、皆さん、試験はこれで終了なのでお帰りいただいて結構です。他の教室ではまだ試験をやっているので、静かに建物を出て下さい。合否は明日の朝この建物の前に貼り出されます。それでは、皆さんお疲れさまでした」

 わたし達は無言で学舎を出た。

 試験が終わった開放感。筆記試験で歯が立たなかった問題のこと。実技試験の光が出ない詠唱のこと。穏やかではない感情が胸に渦巻く。

 正門に向かう小道は白いアスフェンで固められていた。城のある地区では一般の道もこの造りだった。

 花壇の前のベンチに座る。

 兄とは正門の前で待ち合わせだ。と言って、門の前で門番とにらめっこして待つのも避けたい。ここにいれば兄が来たらすぐに分かるだろう。

 花壇には黄色と青い花が隙間なく咲き誇っていた。座ると目の高さに細かな花達。蜂が花弁から花弁へと弧を描いて飛び交う。名も知らない花に蜂だけど、故郷の村と同じような光景だ。

 ぼんやりしていて近づいてくる女の子に気付くのが遅れた。

「ちょっとお話しさせてもらってよろしいでしょうか」

 先ほど一緒に水の教室で試験を受けた十二歳ぐらいの女の子だった。名前は確か……もう思い出せない。

 ラタンの葉のように鮮やかなクーツ色の髪がとても美しい。わたしを真っ直ぐに見つめる大きな瞳には迷いも陰もない。

「わたしはトゥトゥール・ラユンコルトです。東のコッコルトという町からやってきました」

「わたしは流雪リウシェ。ウトウの村から。よろしくね」

「水の魔術が得意だという人には初めて会ったので、少しお話しできればと思って。隣に座ってもよろしいでしょうか」

 十二歳だと思っていたけど、話し方もとてもしっかりしている。

「どうぞ。兄を待っているところなの」

「では、少しだけ。流雪リウシェ、あなた『嘆願』の後で光が出ないでしょ。それって昔からなの?」

「……いいえ。最近よ」

「何か、きっかけがあったのではなくて?」

「……何故そう思うの」

 思わずわたしの口調は強くなってしまう。

「ごめんなさい」

 トゥトゥールが怯えた表情になる。

 彼女から見たら、わたしは十歳ぐらい大人に見えているわけだ。慌てて謝る。

「あ、こちらこそごめんなさい。つい。あの……」

「そんな大切なことを簡単に人に言える訳がないものね。軽率な質問でした。気を悪くしないで。本当にごめんなさい」

 トゥトゥールが立ち上がって駆け足で正門へと去って行っていってしまう。

 その後ろ姿を見ながら、わたしは自己嫌悪を感じていた。

 空を仰ぐ。高い所に掠れた雲が一つある。

 ごめんなさい。

 わたしは新しい土地で新しい生活を始めたかった。

 好奇の目で見られるのを避けて故郷を逃れて来たのだ。

 ここでいきなり自分のことを話す気にはなれなかった。でも、それをうまく説明することはできたはずだ。

「どうだった試験は」

 いつの間にか兄が門へと続く小道をこちらへ歩いてきていた。わたしは立ち上がる。

「うん。頑張ったけど、わかんない」

「まあ、大丈夫だろ。実技試験で何やったんだ?」

「水槽の水を凍らせた」

「ちゃんとできたか?」

「うん」

「じゃあ、大丈夫だ」

 兄は何故かわたしが受かることを絶対的に信じている。まあ、それを聞いて少しは安心できるけど。

 門を出て治安の悪い南区の宿へ向かう。昨日と同じように薄汚れた通りの光景も、試験が終わったからか、穏やかな気持ちで見ていられる。

流龍リウリュはお仕事の面接どうだったの?」

「ああ、いまは前の人が辞めてしまっているから、できるだけ早くに来てくれと言われた」

「じゃあ、お仕事決まったってこと? 良かったね」

「ああ。給料かなり良い。これでこの町で生きていくことができそうだ。だから流雪リウシェも安心して勉強に励んでくれ」

「まだ受かってないから」

「大丈夫だ。万が一流雪リウシェの力を分からないなら、そもそも通う価値なんかないってことだよ。だったらどこかの魔術師に直接弟子入りすればいい。王都には個人的に生徒を持っている魔術師もいるんだ。魔術師としての勉強は、手段を選ばなければ何とでもなるんだ」

「でも、そんなやり方、お金がかかるじゃない」

「それはそうだな。その時は流雪リウシェも働きながら学ぶことになるか」

「それは仕方ないけど……やっぱり魔術学校がいいな」

「彼等に見る目があることを期待しよう」

 

 

 翌朝、魔術学校へと向かう。兄もついてきてくれた。

 南地区からの道を北へ向かう間、わたしはずっと無言だった。

 正門前で兄がひと言「まあ、大丈夫だって」と言った。

 昨日試験を受けた校舎前の掲示板に大きな虫皮紙が貼り出されていた。上に黒々と立派な書体で『王立魔術学校 試験結果』の文字。その下にやや小さく名前が書かれている。

 朝一番から貼り出されているので、大方の人はもう合否を確認した後なのだろう。人はまばらで数人しか掲示板前にはいない。親子だろうか。うなだれている男の子の肩を抱く父親らしき人達とすれ違った。

 怖くて掲示板を見ることができない。

 でも、ここを乗り越えてわたしは新しい日々を手に入れるのだ。

 近づく。名前が判別できるようになってきた。わたしの番号は五十三だと意識する前に自分の名前が書いてあるのが見えた。

 近づく。

 入学試験合格者と書いてあり、その下に多くの名前がある。わたしの名前がその中にある。間違いない。

 不意に涙が出てきた。

「おめでとう」

 兄がわたしの肩を抱く。

 わたしはうなずいた。

 

 

 昨日と同じベンチに座ってしばらく休んだ。

 兄は隣で黙って花壇の花を見ている。

 空を見る。雲がやや多い。

 昨日、ここに座っていたときの感情と打って変わって、わたしの心は安堵に包まれていた。

流龍リウリュも魔術学園を受ければよかったのに」

 わたしは以前から思っていたことを口にした。

 兄は魔術が使える。普通ではないやり方だけど、魔術には違いないのだから。

「だめだよ。こんな術法は近代の魔術学では異端もいいところだ。絶体に受け入れてくれないよ。魔術学校は将来人々の為に魔術を使う人材を育てているわけだからね。僕がおかしな魔術の使い手とわかったら、もしかすると、流雪リウシェにも迷惑がかかるかもしれない。そんなことは絶体に避けたい」

 それはそうなのかもしれない。

 確かに兄の魔術は特殊だ。それがいま世に知られていない、ということは既に排斥されていると言うことだ。でも、だからこそ、魔術の発展にはその研究が必要なのでは、とも思う。

 そういったことも、魔術学校で学ぶことによって理解が深まるのだろうか。

「あ」

 声のする方を見ると昨日の少女、トゥトゥールが立っていた。わたしの目を見ている。

流雪リウシェも受かっていたね。おめでとう。わたしも。来月からよろしくね」

 わたしは慌てて立ち上がる。昨日からずっと悔やんでいた。それをいま何とかしなければならない。

 わたしは早口で言った。

「昨日はごめんなさい。わたしあなたとお友達になりたいの。そしたら色んな事をたくさん話せると思う」

 トゥトゥールが驚いた表情でわたしを見る。大きな美しい瞳で。

「うん。わたしもあなたと友達になりたい。よろしくね」

 差し出された手は華奢で小さい。わたしはそれを両手で包んだ。

 

 

 兄と学校周辺の店を見ながら下宿へと向かう。立ち寄ることはせずにひたすら歩く。先着順なので希望者はできるだけ早く手続きをするようにと試験の案内に書いてあった。これを逃すわけにはいかない。

 東区の二十六番通りと八番通りの交わるところ。それが新しいわたしの住所になるのだ。

 これからトゥトゥールと仲良くやっていけるだろうか。

 わたしは彼女に打ち明けることにだろうか。

 先生にはいずれ分かってしまうのかもしれない。

 詠唱の後で光が出ない理由を。

 アーキが少ないとそうなる。とあの時は先生に言った。

 それは本当ではない。

 意図的に魔術の規模を抑えているからだ。

 三アーキも使って氷を作ると教室全体に霜が降りてしまうだろう。それを何とか押さえ込んであの水槽が凍るだけにしたのだ。

 魔術を操るというのはそういうことだ。

 あの湖で呪文を唱えてから、わたしの魔術の効き目は凄まじいものになった。

 トゥトゥールが言っていた『きっかけ』はそれだ。

 そのときにわたしは経験としてわかってしまったのだ。

 自分の魔術を、より強いものにする方法。誰もが同じであるとは思わない。わたしの場合はそれだった。

 それは怒りだ。身を焦がすような激しい憤り、あるいは憎しみ。

 あの時わたし達を殺そうとした魔術師に感じたのはそういう歪んだ感情だった。

 それを理解して以来、わたしは常に怒りを抱えている。

 そのせいでどうにかなってしまう気がする時もある。

 そもそも魔術師とは寿命を削って奇蹟を顕現させる存在なのだ。

 改めて、これから兄と暮らす建物を見上げる。

 昨日見たときにはまだ実感はなかった。いまは違う。

「空いてるといいね」

「ああ。ここに入れるかどうかで暮らしは全然違ってくる。南地区でもそれなりに安い下宿は見つけられるけど、それでもここより高いし、日が暮れると表を歩けないってのはちょっと勘弁してほしいな」

「そうだね」

 新しい暮らしが始まる。

 父を失い、子供だった自分を失った。

 これからどうなるのかはわからない。

 そういった不安定さが、すべてわたしの中で怒りとなってうねり、心を焼いている。

 兄がわたしのことを心配してくれている。それだけがわたしの道筋を案内してくれる綱だ。

 だから、こうして日々を生きていこうと思う。

「よし、流雪リウシェが叩いていいぞ。合格祝いにな」

 兄が下宿の扉を指している。

 昔、二人でどこかへ行くときにノッカーを叩くのはじゃんけんで勝った方だった。

「やった」

 わたしは早足で石段を三つ上がり、両開きの扉の前で二度深呼吸をすると、立派なノッカーを掴んで大きく鳴らした。

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挽歌詠唱 赤井五郎 @Red56

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