一緒に生きていきましょう
「二人で穏やかな食事を」の外伝です。
上演時間目安10分前後
過度なアドリブ、内容が変わるほどの改変はご遠慮願います。
演者様性別不問。役の性別変更不可。
<登場人物>
・カミラ
国家魔道士のエルフ。
木の精霊と契約している。
おっとりしている。
女性、見た目年齢は20代だが実年齢は400歳越え。
・アーク
隣国ツヴァイスの殺し屋。人間。
火の精霊と契約している。
男性、年齢不詳。
----お話はここから----
アーク:(M)ここが王都アインス…
街中のヤツらの平和ボケした面が癪に障る…嫌な街だ
-王宮にて
カミラ:姫様、このようなドレスはいかがですか?
-カミラが杖をかざすと、
姫のドレスのデザインが変わる
カミラ:あ…リボンが多かったですね…
これでは少し幼く見られてしまいます、、
え?このリボンがたくさんあるデザインが良いのですか?
それは良かったです!
今晩の舞踏会はバッチリですね!(微笑む)
アーク:(M)無防備過ぎないか?この国の連中…ここは王宮だろ?
門番も「こんにちは〜どうぞ」じゃないだろ!門番なら門番らしく仕事しろよ!
…とは思ったが、俺の変装が完璧だったから、分からなかったんだろう
ま、俺は隣国ツヴァイスの殺し屋だからな…
今回もきっちり仕事させてもらおう
カミラ:もしもーし
アーク:?!
(M)後ろをとられた…だと?……
カミラ:あなた、見ない顔ですね〜
冒険者さん?それとも観光客さんかしら?
アーク:あぁ…この国は初めてでな
俺は冒険者だ
カミラ:冒険者さんですか〜
冒険者ギルドの証明書はありますか?
アーク:なぜあんたにギルドの証明書の提示なんてしないといけないんだ?
カミラ:私、この国の国家魔道士なので王宮と国民を守る義務があります
ので、初めての方の身元の確認をしております
アーク:そうか、これで良いか?(証明書を提示する)
カミラ:ふむふむ、お隣のツヴァイス国と…
アーク:ああ、そうだ
カミラ:にしてはおかしいです
アーク:何がおかしい?
カミラ:…あなた、煙と血の混じった匂いがします
アーク:俺は火の精霊と契約している
冒険者なんだから、道中で炎魔法を使い魔物と戦うこともある
カミラ:(小声で)狙いは姫ですか?
アーク:…あんた、何を言っているんだ?
カミラ:この血の匂いは魔物ではありません
…と、私が契約している木の精霊さんが言っているのです
アーク:人の血の匂いがついていてもおかしくはないな
この国へ向かう間に商人の馬車警護の仕事も請け負って
俺を含めた3人の人間が大量の魔物と交戦した
その時に他の者の返り血を浴びたんだろう
カミラ:…それにしては魔物の血の匂いは…しませんね、おかしいです
アーク:…あまりまじまじと見ないでくれ
カミラ:なぜです?
アーク:あんたみたいな美人に見られると…調子が狂う
カミラ:(微笑む)美人だなんて、お世辞もお上手なのですね
商人の馬車警護なら商人ギルドに聴けば裏がとれます
ですが、この国に悪さをするようなら私が見逃す訳には参りません
アーク:俺がもし悪さをする人間だとしても
こんな平和ボケした国で何かしようなんて、思わねえよ
…あんたが晩酌してくれるならな
カミラ:晩酌?
アーク:ああ、美人に晩酌してもらえるなら
この国へ来たかいがあるってもんだ
カミラ:はあ…
今晩は難しいので、明日でも良いですか?
アーク:本当に晩酌してくれるのか?
カミラ:ええ、良いですよ
アーク:じゃあ明日の晩、城門すぐ側の酒場で待ってる
カミラ:(微笑む)ふふ、あなたは変わった方ですね
アーク:ああ、良く言われる
カミラ:あ、名乗っておりませんでした
私はカミラ、王都アインスの国家魔道士をしている者です
アーク:俺はアーク、冒険者だ
(M)晩酌ついでに酒を飲ませてこの魔道士を潰したら、仕事をさせてもらう
仕事の為なら一晩くらい待ってやるよ
-日は暮れて城では舞踏会が行われている
アーク:(M)城の舞踏会…ね、
俺の知っている城の舞踏会はこうじゃないんだが……
何で城門まで解放して、街中どんちゃん騒ぎしてんだよ!
どこまで平和ボケしていやがるんだ、この国は…
カミラ:…ん?
アーク:あ、
カミラ:アークさん!
アーク:あんたは…カミラ、だったな
カミラ:はい、少し驚かれました?
アーク:少しどころじゃない
城をあげての舞踏会なのに、
なんで街中でどんちゃん騒ぎまでしてるんだよ
カミラ:これも王都アインスの平和がなせる行事と言いますか…
アーク:しかも!なんだ?
あの城から見える王冠被った爺さん、この国の王だろ?
悠長に笑顔で手なんか振りやがって…!
カミラ:王様にそんな言葉遣い、失礼ですよ!アークさん!(人差し指でアークの口を塞ぐ)
アーク:な、何をする!
カミラ:アークさん…その服装では舞踏会を楽しめませんよ?はい!
-カミラが杖を振るとアークの服がタキシードに変わった
アーク:おい!木の精霊の力を何に使ってるんだ!服を元に戻せ!!
カミラ:タキシード、お似合いですよ?
アーク:似合う似合わないの問題じゃない!
カミラ:私と踊ってくれませんか?
アーク:…っ!、(悔しがって唸る)
もうどうにでもなれ!!
カミラ:(微笑む)ふふ、さあ舞踏会を楽しみましょう
アーク:(M)今日会ったばかりの国家魔道士に遊ばれてるのが癪に障る…
だが不思議と悪い気はしなかった
カミラ:そこのお嬢さんもドレスに着替えちゃいましょう、それ!
あなたもタキシードに、はい!
-カミラが杖を振ると洋服がドレスやタキシードに変わっていく
アーク:カミラ、あんたの魔法は変わっているな…初めて見た
カミラ:私は木の精霊さんにお願いをして、
木綿や絹などの構造を変化させて
服を新しいものに錬成する魔法が得意なのです
私はこの魔法に服飾創成魔法と名付けました
アーク:服飾創成魔法…初めて聞くな
カミラ:ま、私が第一人者ですから
アーク:(M)カミラが錬成した服ごと人間を燃やせば街中が混乱して…
俺の任務、姫の暗殺まで近付くことは出来る…ような気が、、
カミラ:(微笑む)ふふ、いま悪いことを考えましたね?
アーク:そう見えたか?
カミラ:ええ、ほんの一瞬ですけど
アーク:あんたみたいな美人を目の前に悪いことを考えない男がいるか?
カミラ:またそんなことを言って(微笑む)
アークさん、あなたに悪事は似合いません
アーク:悪事?
カミラ:あなたの目的は姫様の暗殺ですよね?
アーク:何を根拠に言っているんだ?
カミラ:舞踏会の前に商人ギルドで確認をしてきました
護衛をしていたのは本当でしたが、闇ギルドの商人でしたね
アーク:……
カミラ:闇ギルドの商人の側近をしていた方を1人、、、
アーク:…あれは俺がやった
カミラ:そう、ですか…
アーク:俺がどんな人間か少しは理解したか?
カミラ:……
アーク:仕事の為に殺しをするのが俺だ
こんな平和ボケした国とも
あんたみたいな美人と関わる資格なんか無い人間だ
カミラ:……
アーク:…殺し屋は生きるために命を奪う
カミラ:…生きるために、、
アーク:どんな理由であれ、殺しは殺し
俺は人間の中でも最底辺なんだよ
カミラ:アークさん…
アーク:明日晩酌してくれと言ったが、無しで良い
それに目的がバレたんだ
国家魔道士のあんたは俺を始末しないといけないよな
カミラ:…っ…
アーク:人気の無い所へ移動しよう
カミラ:……
(M)こんなに悲しい横顔をする方が殺しを生業にしているなんて…
-王都アインス郊外、星降る丘
アーク:ここなら街の人間も来ないだろう
……カミラ、命の取り合いだ
カミラ:……圧倒的に私が不利ですね
アーク:ああ、俺は炎であんたは木
カミラ:属性不利な戦いは何度も何度も経験しておりますので…
私の力、侮らないでくださいね
アーク:…っ!、総魔力量が桁違いだな
カミラ:木の精霊さん、少し無理をさせてしまいますが…
私のこと、嫌いにならないでくださいね
樹木創世魔法、エメラルドウィップ!
アーク:全部燃やしてやるよ!
炎創成魔法、フレアアックス!
カミラ:なかなかの使い手ですね
これはいかがですか?
服飾創成魔法、エメラルドアーマー!
アーク:すごい量の魔力を帯びた鎧だな…
だが、所詮は木だ
このツタもその鎧も燃やし尽くしてやるよ!!
カミラ:っ!速いですね!!
エメラルドウィップ!!
アーク:ぐっ…!、フレアアックスをツタまみれにされた!!
まだまだ!!炎炸裂魔法、フレアエクスプロージョン!!
-爆風と共にツタとカミラの鎧が燃やされる
カミラ:総魔力量は…私の方が上ですが、
戦闘経験の差、でしょうか…
アーク:戦闘経験はまあ、あんたより多いだろう
俺の国、ツヴァイスは軍事国家ドライと
北の鉄壁フィアットに挟まれた
戦争が耐えない国だからな
カミラ:ご自身の力に…慢心は無いようですね
アーク:慢心は自身を退化させる
カミラ:あら、私もそう思います
価値観は合うようですね、私達
アーク:研鑽(けんさん)も国家魔道士の義務か?
カミラ:いえ、人によります
アーク:まあ、そうだよな
そろそろ決着をつけさせてもらう!
炎炸裂魔法、フレアエクスプロージョン!!
カミラ:樹木創世魔法、エメラルドウォール!!
-爆発音と共に夜空に緑と赤の火花が散る
アーク:(息切れしながら)はぁ…はぁ、…どうなった?
カミラ:あら、息切れですか?
魔力も使い果たされたご様子で
アーク:ああ…魔力切れだ、、
カミラ:姫様の暗殺はご遠慮頂けますか?
アーク:…くっ……属性有利で負けた魔道士に居場所は無い
帰っても国の面汚しとして俺は処刑される
処刑されるくらいなら…
カミラ、あんたが俺にとどめを刺してくれ
敗者がこんな事を言うのはお門違いだが……
俺は、あんたになら殺されても文句は無い
カミラ:国へ帰ったら処刑、
それよりも私にとどめを刺してほしい、と…
アーク:ああ、そうだ…頼む
カミラ:お断りします
アーク:は?
カミラ:だから、お断りします
アーク:あんた、何言ってんだ?
俺はこの国の姫の命を狙う殺し屋だぞ!
国家魔道士のあんたが姫の命を脅かす存在を始末する、それも仕事だろう!!
カミラ:アークさん、あなたは自分の命を軽んじる方の中でも下の下の下の下です
アーク:はあ?馬鹿にしてるのか?!
カミラ:はい、馬鹿にしています
たった一度の敗北で命を捨てようとしています
しかも自分の命を他者の手を汚させて断とうだなんて….
私はその考えが気に入りません
なので、お断りします
アーク:…カミラ……!、
カミラ:国へ帰らなければ良いではないですか
アーク:は?
カミラ:人の命を軽んじる国なんて…
国王や貴族の方たちは国民の幸せを何だと思っているのでしょうか
アーク:……
カミラ:アークさん、あなたの帰りを待つ人は国にいますか?
アーク:…誰もいない
両親も妹も戦争で失った…
カミラ:そうですか
アーク:俺に帰る場所は無い
カミラ:…なら、私があなたの帰る場所になりましょう
アーク:……何を、言っているんだ?
カミラ:王都アインスで私と共に暮らすのです
アーク:は?
カミラ:アークさんはこれから王都アインスで私と共に生きるのです
晩酌して欲しいのなら私がいくらでもします
暖かい食べ物が食べたいなら私が作ります!
そして一緒にご飯を食べます!
アーク:えーと、、
それはあんたにとって何のメリットがあるんだ?
カミラ:私は両親と村長と大喧嘩をしてエルフの里から出たはぐれ者です
アーク:…見た目に反してなかなかやんちゃな事をするんだな
カミラ:エルフの里しか知らないはぐれ者の私を快く迎えてくれたのは、この国なのです
だから、私は居場所が無い方を今度はお迎えしたいのです
アーク:俺の事をこんなにボコボコにしておいて迎えると?
カミラ:それはそれ、これはこれ、です!!
私よりも弱い方がこの先、一人で生きていけるとは到底思えません
アーク:だいぶ失礼なことを言うな
カミラ:あなたは私に負けたのです!
大人しく言う事を聞いてください!
アーク:…傍若無人
カミラ:なんとでも言ってくださって結構です
アーク:(どんどん笑いが込み上げてくる)ははは、あんたと一緒なら退屈はしないだろうな
カミラ:(得意げに笑う)ふふふ
あら、街の方が来ちゃいましたね
アーク:あれだけ派手な魔法をぶつけ合ったんだ
人が来てもおかしくない
カミラ:え?花火…???
そう、花火をあげておりました!
こちらのアークさんに手伝ってもらって!
アーク:おい、腕を掴むな!痛いだろ!
カミラ:あら、失礼
アーク:ま、街の人が花火だって言うなら花火ってことで良いだろう
カミラ:そうですね、ふふ(微笑む)
初めての二人の共同作業、といったところでしょうか
アーク:なんだそれ?(笑)
カミラ:(微笑む)ふふ、改めまして…
これからよろしくお願いいたします、アークさん
アーク:さん付けはしなくていい
よろしくな、カミラ
カミラ:(N)この出会いから時は過ぎ、二年が経ちます。
アークさんはあの日から殺し屋を辞め、
王都アインスで私と一緒に平和な暮らしを送っています。
そして去年、私たちは結婚をしました
アーク:出会ってからそろそろ二年か、
カミラ:二年という月日は結構長く感じますか?
アーク:いや、あっという間だったな
カミラ:私にとってはもっと速く感じます
エルフは寿命が長いので
アーク:そうか
こいつは時の流れをどう感じるんだろうな?
カミラ:んー、私とアークの子なのでハーフエルフ…月日の感じ方も私とアークさんの体感している速さの丁度真ん中くらいかもしれませんね
アーク:ハーフエルフという名のままだな
カミラ:この子、リドは優しい子に育ってくれますかね?
アーク:母親がカミラなんだ、
まあ変人にはなるだろう
カミラ:変人って…ちょっと聞き捨てならないですね〜
アーク:その通りだろ?
カミラ:うっ……一緒に暮らすアークがそう言うのなら…
…そうかもしれませんが、、
なんか嫌です(ムスッとする)
アーク:平和ボケした顔で元気に大きくなればそれで良いだろ
お前もそう思うよな、リド
-完-
二人で穏やかな食事を ネコ山 @nekoyama0312
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