第1位・森迫永依さんの俳句について 題「月」

最後に、見事、金秋戦2023決勝の1位に輝いた、

特待生3級の森迫永依さんの俳句を見てみましょう

(優勝おめでとうございます!タイトル戦2勝目ですね)。


朝月のアザーン砂漠の空港へ


この句は、森迫さんの説明によると、

モロッコへ行ったときの実体験を詠んだものとのこと。

ちょっと久保田早紀さんの楽曲『異邦人』を思わせるような、

異国情緒あふれる見事な俳句です。

当然のことながら、夏井先生の添削は無し。

ただ、確かに良い句なのですが、

天の邪鬼な私は、まだ直せるのでは?と思いました。

添削例を挙げてみます。


A 朝月のアザーン ひとり空港へ

B 朝月や砂漠の中の空港へ

C 空港へ朝月のアザーンの中

D 朝月夜アザーンの中を空港へ

E アザーン響く朝月夜なり空港へ

F 空港へアザーン響く朝月夜


「アザーン」とは、イスラムの礼拝を告げる呼びかけのことです。

「朝月(あさづき)」とは、

明け方の月、もしくは月の残っている明け方のことで、

「朝月夜(あさづきよ)」とも言います。


さて、この句のいちばんの問題点は、

「アザーン」と「砂漠」、それぞれのイメージが

微妙に被っていることです。

アザーンと言えば、砂漠が感じられ、

砂漠と言えば、アザーンが感じられます。

では、どちらを断捨離(割愛)するべきか。

とても悩ましいのですが、強いて言うなら、

「アザーン」は、声(朗詠)ですので、

聴覚を刺激するというメリットがあるのではないでしょうか。

つまり、この俳句では、

「砂漠」という言葉を捨象するほうが、

視覚、聴覚のバランスが取れて、

読者の感性(心)に染み込んでいくことができるのではないかと、

私は判断しました。


添削例Aは、一人旅という設定にしてみました。

添削例Eは、7・7・5のゆったりとしたリズムにしてみました。

添削例E、Fの「響く」は、

不必要では?と思われるかもしれませんが、

「アザーン」が音に関するものであることを読者に伝えるだけでなく、

「アザーン」と「朝月夜」をやわらかく繋げる

接着剤のような効果もあるでしょう。

ですから、この「響く」は、意外と重要な役割を担っているのです。


個人的には、添削例E、Fあたりが、完成度が高いかなと思います。


第4章(最終章)は、以上です。





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プレバト俳句 金秋戦2023の決勝(2023年10月12放送)について 滝口アルファ @971475

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