見知らぬ推しは、オリコン上位をかっさらう?!~コッソリ、推しの友達目指します!!~

ミコトノリ812

見知らぬ推しは、オリコン上位をかっさらう?!~コッソリ、推しの友達目指します!!~

いつも聞こえる澄んだ歌声。

通学途中に聞こえる歌声。

毎日朝、通学路にある空き地の近くから聞こえる。

誰の声?

でもいくら探したって時間が足りなくていつも見つからない。

いつしか妖精なんじゃないかと感じるようになった。

一体どんな人が歌っているのだろう?

いくら探しても見つからない。

現実味がないけれど、アイドルのようで毎日の登校が楽しみになってきた。


いつも妄想する。


カッコいいイケメンなのか、服もイケてるのか。

もしかして有名人がお忍びで練習しているのではないか? なんて考えたこともあった。

ただ妄想は膨らむばかり。


私がその人について知っている事はたった一つ。


『誰もが魅了される歌声の持ち主』


そんな事を頭で考えつつ休み時間を過ごす。


あ……。

あいつが来た。


いつも遅れて来るくせに先生はいいよ、いいよ、と言うだけである。

なんだよ、ほんと。

楽しかった気分が急激にしぼんでいく。


あいつが誰かと話す所を見たことない。

なんか怪しい。


いつも色々言えない事を言おうじゃないか。

あいつが帰る時になった。

帰りの会が終わるとすぐに教室から出ていくあいつ。


私はいつも一緒に帰る友だちに、今日は一人で帰るねと言っておいた。


曲がり角を右、十字路を真っ直ぐ。

見知った道のり。

突き当たりのラーメン屋を左……?


なんといつもの帰り道の途中まで一緒。

妄想の中のあの人の顔がちらつく。

そういえばあいつって顔は整っているような気がする。

多分、勘違いだ。

そんなバカな話は、ない。


まぁそんな事より尾行もとい、追跡に集中しないと。


あれ?

アソコって例の空き地だ。

そこに入って、細い山道を進む。

そして古い神社へ。


こんな所あるんだなー。

こんなところを見つけるなんてあいつにしては凄いかもしれん。

というかどんどん登っていくあいつ。


やば。


追いかける? でも見通しのいい階段。見つかってしまうんじゃないかな。

そもそもこの後どうするの?

考えた結果、スギの木の裏に隠れる。

これこそ自問自答だ。


あいつにバレたら何が起きるか分からないからな。


何があるか、ね……。


あいつは何やら喉を押さえ調子を整えるような行為をする。

とろっとした蜂蜜を飲んで。


そして、歌を歌い始める。


え、マジか……。

音痴の練習かと思ったが、聞こえてきたのはあの、妖精のような歌声だった。

ウソだと思った私はもっと前で見ようと、ふらふらと歩きだしてしまう。


そんな時。


私はコケた。

そこにある石でコケた。

漫画で描いたかのように。

大胆に。


「大丈夫?」


あいつに聞かれたけれど、何も応えないまま

態勢を整えすぐに走り出す。


あいつがあの人のわけがない!

私の頭の中はそんな想いでいっぱいだった。


あいつの汗まで綺麗に見える。

「ウソだ、ウソだ、ウソだ〜!!!」

私は走りながら叫ぶ。

周りの目も気にせず。


家に帰ってからもずっとあいつの事ばかり。

なんでなんだ。

あー。

頭が回らない。


次の日。


食中毒を起こしました。

普通に食中毒です、うん。


あんな暑い中窓開けないでわーわー騒いだ挙句

賞味期限が1週間も過ぎてるヨーグルトを食べたらそうなるわな。

学校もお休み。

最悪。

今日の昼ごはん揚げパンだったのに。


そんな時、ベッドの近くに置いておいたスマホが鳴る。

鬱陶しいと思いつつパスワードをサッと入力する。

もう慣れた手つきだ。

「友達が持って来てくれたよ〜」

お母さんからのLINEだった。

なんだよと思いつつ下に降りる。


そこにあったのはあの揚げパン。

お母さんいわく、男の子が手紙と一緒に持ってきてくれたらしい。

というか男の子ってだれ?


そんな単純な疑問を持ちながら封筒を開ける。

======

昨日は本当にすみません。

学校に遅刻したのに、

先生からいいよと言われているのが

嫌だったのでしょうか?

そうなら申し訳ございません。


ご存じかと思いますが、私は歌手です。


なるべくバレないようにしているので

秘密にしていただけると幸いです。

私にできることがあれば言ってください。

すみませんでした。


歌手のことは次のページに記載して

おきますのでもしよかったら見てください。

dttp://www.turugantoko

======


……うん。

凄く丁寧。


字も綺麗だし書き方が大人な対応。

まさに神の対応で神対応!!

というか歌手だったんだ。


ネットサーフィン中……。




======

は?

最近オリコン一位のツルガさんだったの!!

素顔も、年齢まで不明のツルガさん?!

紙袋の仮面がチャームポイントのツルガさん?!

あのショタ系歌手で有名な?!

素顔イケメンっておかしいでしょ。


うん。

「明日、サインもらおう」

そう意気込む私のことなんて知らない、あいつもといツルガさん。


いや。

ツルガ様。

私はあなたのファンになりました。


「あぁ、貢ぎたい……」




これは初めて推しができたほんの序章の物語。


==========

読んでいただきありがとうございます。


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