本能が理性の膜を、突き破ろうとして

心優しい主人公のユウは、一人の男性として家族を取り巻く背徳に苦悩しながらも、誘惑や懊悩に耐え続け、幸せな家庭を築こうと奮闘する物語。
次第に明らかにされる夫婦関係、寝取られて孕まされたシウの成長と、それらを取り巻く環境とが、あなたの心を執拗に揺さぶりにかけてきます。
婚姻関係・血縁関係・家族関係・交友関係、そして社内関係。
想像してみてください。
これらの事実関係が白日の下に晒され、それらが複雑に入り混じり、常識的イメージが覆され、想像を超えた結末を目の当たりにしたら、恐らくとてもまともではいられないと思います。
そして、そこから解放されたときに得られる精神状態。
狂おしいまでに求めてしまう自由という名のインモラルは、その一端を担うかのよう。
擦り切れて千切れそうなユウの良心の呵責。
焦らされて、焦らされて、焦らされて、
本能が理性の膜を突き破ろうとしていく性的描写が、理性と本能の相剋が渦巻くように、扇動的かつ情熱的で繊細な筆致で紡がれています。
それでも愛の性に打ち負けるように乱れて、堕ちて、壊れていく趣きは、この物語の秘めたる妙味なのでしょうね。

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