商業クラブの活動内容

 孤児院に行った翌日、クラスメイトの様子を見るために学園に顔を出す。

 すでに俺やシャルロッテを含む貴族組は試験に合格しており、夏の長期休暇まではすることがない。対して、平民組はどうしても家庭教師の問題で、歴史と魔法に苦戦しているようだ。


 ステラはシャルロッテとマロッティが重点的に勉強を見ているようで、今日の試験で最後だと話している。

 一方、フェイは俺が出した課題もあるせいで、やや遅れているようだ。フェイには今後のクラブ活動に支障が出るため、先に試験に集中してくれと頼んでおく。


 クラブ活動という話に、みんながこちらに注目する。


「ロイ、商業クラブは動き始めるのかい?」


「ああ、ポリム。そろそろ動き始めようかと思ってるんだ。大規模な計画になるから、みんな集まってくれる?」


 集まったみんなにこれからの計画を話す。王妃様から直轄地の土地を借りることが出来ること。そして、その土地に競技場を建設することを語った。


「本当に大規模な計画だったよ……」

「それで? 俺たちは何をすればいいんだ?」

「私たちにも役目はあるんでしょうね?」


「ああ、競技場の構想と役割分担についてはすでに考えているんだ」


 まず、フェイを除く貴族の男性組、イザークとカール、ポリムたち。この三人には競技場を任せる。


 イザークには美食クラブを通じて、競技場の周囲に飲食店を出してもらう。

 カールには俺の構想のもと、競技場の設計と運営計画を頼む。

 ポリムが一番大変なのだが、この二人を補助しながら全体の進捗の報告と相談役になってもらう。


「へえ、出店ってことか。食べやすくて美味しいものを見繕ってくるよ」

「競技場の設計に運営? 一体、競技場では何をするんだ?」


「スライムを使ったサッカーだ」


『サッカー?』


「あーっと、得点となる枠に球を当てる競技だな」

「それは、もしかして団体競技か? スライムをテイムさせるとこからになるぞ?」


「チームを組んでもらっての大規模な大会にするつもりなんだ。そのためには、出場選手を集めないといけない。このチーム集めはフェイに一任するつもりだ」


「じ、自分がやるのですか!?」


「フェイなら実家の商会つながりで人が集められると思うんだ。ちゃんと宣伝文句も考えているし、商会に旨味があることも説明するよ」


「わ、わかりました! 早く試験を終えて、親に相談してみます!」

「申し訳ないけど、フェイはそれと並行して玩具の大会の計画も立ててほしい。そのために出した課題だからね。余裕があれば、玩具を作ることも考えていいよ」


「うわ、オーガだ。オーガがいるぞ」

「フェイだけやることが多いのか」

「僕たちは協力出来るだけマシだね」


「うぅ、玩具を考えることも視野に入れないとなんですね……」

「大丈夫だって。ある程度は俺も手伝うからさ」


「そちらは終わったかしら? 私たちは何をすればいいのかしら?」

「マロッティたちには、マッサージ店の運営をお願いしたい。経営はロイヤル商会のハンナが担当するけど、人材の募集や育成を手伝ってほしい」


「ロイ様、こちらも分担は決まっていますか?」

「うん、考えているよ」


 シャルロッテには学生たちから従業員を募集してもらい、従業員たちのスライムのテイムをコルディヤ領でおこなってもらう。同時に、接客の練習もさせるつもりだ。これは母上も手伝ってくれるだろう。

 さすがに、俺の実家にシャルロッテ以外の女性を連れて行くのは外聞が悪いため、この人選は仕方がない。彼女もその点は理解してくれているようだ。


 ステラには従業員の勤務日程を表にして管理してもらう。これは従業員たちに休息を取らせるために絶対に必要なことだ。急な従業員たちのシフト変更にも対応できるように、連絡網も作成してもらう予定である。


 マロッティには従業員や客のケアを任せたい。彼らの不満や愚痴を聞いてもらい、解決やストレス発散に付き合ってもらう。

 店をより良くするために目安箱の設置も考えているが、こちらもマロッティに担当してもらうつもりだ。


 俺の説明を聞き終わったマロッティが怒気を込めた口調で詰問する。


「ロイ? なんだか私たちに貴方の仕事をすべて押し付けていないかしら?」


「そんなことないよ。俺は今言ったことすべてに関わるんだよ? まず、企画提案をして、問題があれば解決できることには意見を出す。そのうえで、全体の進捗確認をしながら関係各所との細かい連絡を取り合うから、俺だってかなり忙しいさ」


「それを聞きますと、ロイにも負担がかなりありますわね……」


「だろ? たしかに俺の仕事ではあるけど、みんなは人を動かすことを覚えるためにクラブに所属したんだ。これくらい忙しいくらいがちょうどいいはずだよ」


 まだ不満そうな顔をするマロッティだが、飲み込んでもらわないと俺が困る。

 俺だってやることは多いんだ。周りの期待も大きい。正直、プレッシャーで倒れてしまいそうだ。


 みんなにはかなりの負担を強いてしまうのは心苦しいのだが、卒業するための実績につながるんだから、ここは我慢してほしい。


 また後日、それぞれに詳細な計画を話すということで、今日はこれで解散とした。フェイとステラの試験が終わらないと始まらないので、頑張ってもらいたい。

 彼らの試験が終わるまでには計画書を作って、ゴロッソ先輩に届けないとな。

 計画書をしっかりと練って提出しないと、この企画は通らないだろう。


 スポーツ観戦という文化はこの世界にはまだ存在しない。

 スライムサッカーはきっと盛り上がるはずだ。スライムたちをテイムする商会らにたくさんのスポンサーがついて、将来的には専属のチームが生まれるかもしれない。


 ロイヤル商会も出場しようとは思う。マッサージを担当するスライムたちの息抜きにもなるだろうし、従業員とスライムの絆も深まるはずだ。

 それに言い出しっぺが動かないと、周囲もついてこないからね。


 みんな、しっかりついて来いよ!

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【1話から見直し中】スライムテイマーの異世界改革 ~スライムは意外となんでもできますよ? ご存じでない!?~ 物部 @mononobe2648

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