第19話 エピローグ

 野鼠のようにやってきて嵐のように去っていったマリアそっくりの少女。


 グエンは時々考える。


 天文学は詳しくないがテラリウムという惑星ほしのお姫様だと聞いた。

 こんなときサルルがいてくれたらどの辺りにある惑星ほしなのか聞けたのにな。

 また会えるだろうか。


 突然頬を強烈に引っ張られた。


 「あなた!どこの女の子のことを考えてるのかしら?」


 陽葵さんそっくりの顔がそこにある。


 「も、もちろんキミのことを,考えてたんだよ。」


 「はっはー!それならよろしい。」


 マリアはパンパンと,グエンの背中を叩く。

 [たまには恩人の陽葵さんのことを考えても怒らないよ。]

 そう心の中でマリアは呟いていた。


 二人は陽葵がテラリウムに帰る前に結婚をした。

 ブーケは陽葵が掴んだが誰か好きな人がいるんだろうか。

 謎は深まるばかりである。

 何にしてもグエンは幸せであった。


 その後、魔洞窟にマリアと一緒に結婚の報告にも行った。


 サルバドールは「そこ」にいるのだ、永遠に。

 もう昔の記憶もなくまともに話は通じないが幽体のような姿の左手には「天」の文字がくっきりと浮かび、サルバドール本人だと主張している。

 たわいない話をして二人は魔洞窟を離れた。fin,

****


 ブラックビュートの街は今日も平和だった。

その一角にアゼリア・シーフォールドという魔女が住んでいた。


 その日もポカポカ陽気にウトウトしていると来客がある。


 「いらっしゃい、何の花の種をお求めかね。」


 「やあ店主。僕だよ。」


 それは領主の息子で大金持ちのスネオラだった。


 「おや、スネオラ坊ちゃん、豪華サムシティセットの具合はいかがかね。」


 それなんだけどおばちゃんとこで買った珍しいトカゲが一匹残らず居なくなってしまったんだよ。

 それでこの前買った生き餌パックいらなくなったのを全部返品に来たんだ、未開封だからいいよね。


 「ええ、もちろん構いませんよ、トカゲは残念でしたね、また,別の珍しいのが入ったら案内しますよ。」


 スネオラは生きた小さな獣人の入った袋をアゼリアの店のカウンターに置き、返金を受け取って帰っていった。

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エウロパの片隅の小さな小さな恋。そこそこ令嬢のそこそこ日記外伝 七星剣 蓮 @dai-tremdmaster

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