第5話

菊の宴果て、宮にさぶらひけるに、着綿きせわたの未だ香りたるに、よみける


菊のの あらむ限りは 人の手に 秋までぞ 久しくあらめ


 ◇


「まぁ、来年の秋まで長持ちしろ、だなんて、そなたは欲張りね」

「宮様の輝かしいご威光の前ならば、そんな無茶だってあり得ることですわ!」

「ふふ、もちあげるのがじょうずね。――けれど、まこと、良い香のすること……」


 ◇


――――

菊の宴:宮中年中行事、観菊の宴。九月九日の重陽(ちょうよう)の節句に催され、酒杯に菊の花を浮かべて飲む。

着綿:菊の着綿とも。重陽の節句に行われた慣習。前夜に菊の花に、黄色の染料で染めた真綿をかぶせてその露と香りを移しとり、翌朝にその綿で身体を撫でると、長寿を得るとされた。


✽菊のしめやかな香りってすごく好きです

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平安女子の✨秋の✨短歌 カワセミ @kawasemi_kawasemi

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