重厚感のある歴史の裏側を覗き見るような

 ※素人考えの語りですので作者様含めて不快になったらすみません

 物語は濃密だが文章自体は読みやすい。踊り子との旅は長く続くのかと思えば、すぐ目的地に着いて気持ち良く別れた。おかげで余計な要素を引き連れずに踊り子の言葉だけを持って次の場面に進めたような気がする。

 これは全キャラに共通する話だが、口調も良かった。世界観に沿っていているように感じた。踊り子の私たち現代人に近い話し方が平民っぽさを与え、上級階級の人間と区別ができた。

 第二王子の雰囲気も非常に好ましい。誰が求められているか理解して動いているのが良かった。そして明かされる事実、そのタイミングも相まってもっと早く動いていればという登場人物たちの切なさがある。強い嘆きもあるが、最後はそれが鳴りをひそめていて終わりの一文が一気に客観的に世界を見ていた気持ちにさせる。ゆっくりと現実に引き戻される感覚がストレス無く読めて心地よかった。

 バッドエンドとあるがそれはその世界にとってであり、私という読者にとっては寧ろ素晴らしい世界観の構成と幕引きを楽しませていただいた。