座敷牢の兄

岩須もがな

座敷牢の兄


 俺、四つ年上の兄貴がいるんだけど、兄貴は十歳の時に川に落ちて死んだんだよね。正確には川の途中で湖みたいに水がたまってるところなんだけど、まあ、村の人はまとめて川って呼んでたよ。湖には名前がなかった。というより、呼びたくなかったのかもしんない。


 あの川、昔はしょっちゅう人が溺れて、死体も見つからなかったらしくて。あの川は夏になると人を食いたがるんだ、ってばあちゃんは言ってたな。でも言わなくなった。口をつぐんで何も言わなくなった。川が干上がっちゃったからね。うん、川が丸ごと無くなった。川については、誰も何も言わなくなった。


 で、結局、兄貴なんて最初からいなかったってことになった。ある日、母さんが兄貴のものをどんどんゴミ袋に放り込んでてさ。服とか、靴とか、学校の教科書もおもちゃも関係なしにゴミみたいに回収してくの。兄貴のだよって必死で止めたけど、母さんさ、顔をそむけて言ったんだよ、お兄ちゃんはもう死んだの、あんたは最初から一人っ子だったんだと思いなさい、って。

 葬式はなかったよ。他の溺れた人と同じで死体が見つからないからだって父さんは言ってた。もっとやんわりした言い方だったけどね。


 え? ……ああ、死体がないなら生きてるかも、ってことね。まあね、そうかもね。


 でも俺は、大人が言うならやっぱり死んだのかって受け入れたよ。

 見てたからね、兄貴が川に落ちるところ。というより、俺のせいなんだよね。


 あの夜……俺が蛍を見てみたいって駄々こねたら、兄貴は優しいから夜中にこっそり川に連れてってくれたんだ。でも夜だから暗くて。俺が斜面で足滑らせて、兄貴が引っ張り上げて、そしたらなんか……反動っぽい感じで兄貴が落ちたんだよ。変な感じで。ばしゃ、って落ちる音がして、あとは静かなもんだった。泳いでる音もしないし、たすけて、とも聞こえないし、なんか意味わかんなくて。どうしたらいいかわかんなかった。真っ暗で何も見えなかったし。しばらくそこにいたんだけど、一人で暗いところにいるのが急に怖くなってきて、……ありえないと思うだろうけど、俺、怖くなって先に帰ったんだ。先に帰って、何もなかったみたいに寝た。うん、サイテーだよな……。兄貴は俺を責めないけど、やっぱ、俺が悪い。

 次の日になって、兄貴はやっぱり帰ってなくて、大人たちは様子がおかしかった。

 俺は泣きながら全部話したけど、一晩経ってからじゃ遅すぎるよな。もう死んでるだろうなって子供ながらわかってて、俺はものすごく後悔した。ずっと後悔してた。


 俺のせいで兄貴は川に落ちて、溺れて死んだんだって俺も思ってた。



 でも、実はさ……、兄貴は生きてたんだよ!



 本当なんだよ。死んだってみんなが言ったのは嘘だった。だから、家族が俺から目をそらして兄は死んだって言う時、もしくはそんな人間は最初からいないって言う時、ずーっと、俺を責めないように目を背けるんだと思ってたけど、あれ、嘘ついてただけだったんだよ。ウケるよな。


 夏休みに実家に帰ったんだけどさ。そういや教えたっけ、俺の実家ってまあ山奥の小さい村で、たぶん百人くらいしか住んでないような、まあ、決まり事ばっかり多い、寂れたところで……あ、そういうの聞いたことある? うん、うちの村はね、バスは一日に往復一本。平日のみ。だから車がないと生活できねーの。都会っ子には想像できないだろ? ……うんうん、あはは!

 まあ、俺もあんな村は大ッ嫌いで、こっちに出てきてから帰ってなかったわけ。でも就職先も決まったから、大学終わっても村には戻らないよーくらい直接言おうかなと思ってさ。


 それで久々に帰ったら、実家に、兄貴がいたんだよ!


 どういうことって……まず、実家は田舎にあるからすげ〜広くて、間取りもよくわかんないんだよ。だいたい手前の方で生活してるんだけど、家の奥のほうに使ってない和室がいっぱいある、みたいな。久々に帰ったら迷路みたいで楽しくて、子供の頃は奥まで入るなって言われたけどもう大人だし、襖を開けたり閉じたりしながら奥の奥まで行ったら、なんか変なとこに出てさ。

 初めて見た部屋で、四畳半の畳の部屋なんだけど、入ってきた襖の他が、三面とも壁だった。何もない部屋に、無地の厚塗りの壁。不気味だよ。

 で、よく見たら左奥に壁と同化した引き戸があって。なんだこれって開いたら板の間の廊下。これも両側の壁が和風らしくない分厚いやつで、しかもすごく狭くて肩幅もないから、半身で歩かなきゃ通れなかった。歩くと、一歩ごとにぎいぎい鳴って……え? そりゃ入るよ。怪しいけど、別に実家だし。気になるし。それにこういう行動力のおかげで兄貴を見つけたんだよ。

 それでさ、短めの廊下の突き当たりに引き戸があって、開けたら、薄暗い部屋に出た。変な部屋と変な廊下を通った先の秘密の部屋ってわけ。


 実家にこんな場所があったんだ、って冒険気分でワクワクしながら入ったら、暗さに目が慣れてきて、目の前に……格子があるのが見えた。鉄格子じゃなくて木製の格子。分厚い木が縦横に重なってた。えーとね、江戸時代の牢屋って感じ。で、変なお札がべたべた貼ってある。ヤバいよな? その部屋、壁は塗り固めた感じの分厚いやつでね、床は手前の一畳くらいが土間みたいに何もなくて、格子を挟んで、向こうは一段上がって畳になってて、四畳くらいかな。畳を敷いた牢屋なんだよ。


 一目でわかるような、本物の監禁部屋。


 あとで調べたんだけど、一種の座敷牢ってやつなんだってさ。田舎ならどこにでもあんのかな? ない? まあいいや。



 とにかくさ、そん中に……座敷牢の中に、兄貴がいたんだよ。生きてたのは嬉しかったけど……ヤバいよな? だって、十五年と二ヶ月だ。

 俺も最初はショックすぎて現実を受け入れられなかったんだけど、こんな隠し部屋に兄貴がいるってことは、兄貴は死んだことにされてず〜っと監禁されてたんだなって徐々に理解できてきて、あわてて格子に駆け寄って、兄貴、兄貴、って呼びかけた。兄貴が生きてたって嬉しさと、早くここから出さなきゃ、助けなきゃって焦りでどうにかなりそうだった。



 そう、不思議に思うかもしれないけど、中にいるのが兄貴だってすぐにわかった。見た目が川に落ちた十歳の時のままだったから。



 兄貴は浴衣を着てて、あぐらをかいて目を閉じてたんだけど、俺が格子をバンバン叩いて呼びかけたらゆっくり目を開けた。

 俺だよ兄貴、今助ける、って格子を殴りはじめたら、やめろやめろ、って兄貴があわてた風に立ち上がった。俺はここから出ちゃいけないんだーとか言って。俺の体には神が入ってるから封じ込めとかないといけないー、って。……信じらんねーよな。俺は反抗的な気持ちで、爪を立てて格子のお札を剥がそうとした。そしたら、兄貴が格子の隙間から手を伸ばして、たしなめるように俺の手を掴んだ。小さくて痩せた手だけど、確かに体温があったよ。ああ、兄貴は本当に生きてるんだ、って俺は感動してね、泣いた。泣きながら、ぜんぶ俺のせいだって謝った。兄貴は優しいから、一つもお前のせいじゃないって言ってくれた。そんなんで許されていいわけないけど、なんだかほっとしちゃって力が抜けた。

 俺がしゃがみこむと、兄貴は、神が自分の中に入ってることについて詳しく説明してくれた。でも俺はいっさい聞かなかった。もうね、洗脳されてると思ったよ、完全に。十五年だもんね。


 神が実在するのかって? 何、神様に興味あんの? まあ一応説明するけど、村の人間は、例の川に棲む神を信仰してたんだよ。というより、畏怖してた、って感じかな。昔話なんだけどね。川の神は冬は眠っているけど、夏になると川に近づいた人間を何人か丸呑みにする。丸呑みだから死体は出ないってやつ。夏に水場で人が死ぬのは当然なのに。でも村では神がいることになってて、人間が食べられないように、毎月動物を生贄に儀式をするようになった。その主催が、最悪なことにうちの家系で、両親の代までず〜っと儀式を続けてた。本気で信じてたんだよ。俺はちょっと信じられなかったな。因習まみれの村の連中と違って、近代的な科学っ子だから。


 そういうわけで、俺は兄貴の言うことは無視してとにかく兄貴を助けようとした。格子の右下は戸になってて、壊れやすそうだから殴りまくった。


 待て待て、俺を見ろ、って兄貴が苦しそうに言った。見た目が十歳のままなんておかしいってさ。……え? うん、確かに最後に見たままだった。まあ服はTシャツ短パンじゃなくて浴衣になってたけど、あとは変わってなかった。

 お前ならどう思う? 神が宿っているからだと思う? ……嘘だろ、都会生まれのくせに神を信じるのか。

 俺はね、人間そういうこともあるだろうと思ったよ。ずっとあの座敷牢にいたなら、日光も食事も運動も十分じゃない。そのうえ、変な神を信じ込まされて孤独に過ごすなんてものすごいストレスだ。そういういろんな要因で成長が止まったままってこともあるだろう、と俺は思って、格子戸を殴りながら兄貴にそう説明した。大丈夫、こんな牢屋壊してすぐ出してやる、って言った。

 兄貴は、俺はどう見ても普通の人間の雰囲気してないだろ、出しちゃだめだろ、って怒ってたけど、どう見ても俺の兄貴だったよ。真剣に俺を叱る雰囲気なんか、大学生の俺よりちゃんと年上っぽいから、十五年監禁されてたわりに精神は大丈夫そうだって思った。


 それから、とうとう格子戸がばきっと折れて、開いた。

 俺が座敷牢に入っていくと兄貴は急に怯えはじめた。お前を食べちまうかもって後ずさって。ほら、さっき説明した川の神な、あれが人喰いだから、神が入ってる兄貴も人を食うんだってさ。俺はフツーに無視して近寄った。怖いわけないだろ、血の繋がった兄弟なんだから。

 俺がこうして生きてる時点でわかると思うけど、やっぱり大丈夫だったよ。


 俺は兄貴を抱きしめて言った、大丈夫、兄貴は普通の人間だよ、ここから出ようって。

 兄貴は、俺の腕の中で小さい体を強張らせて、出たらダメなんだと悲しげに繰り返した。洗脳の賜物だと思ったね。俺のせいで兄貴はこんな目に……ってますます後悔した。俺は兄貴に償いたかった。そのためにはまず、あんな牢屋はさっさと出て、あんな村もさっさと出なきゃいけなかった。


 洗脳状態なら説得しても意味ないなと思って、俺は兄貴を無理矢理抱きかかえて、暗い牢を出た。兄貴は抵抗しようとしたけど、俺を傷つけることを怖がるみたいにおとなしくなった。もう十歳と六歳じゃなくて子供と大人なんだから、本気で殴ってくれても平気なのにね。

 異常な空間を出て普通の和室まで戻ったら、兄貴ももう諦めたみたいでね、仕方ないから早く村の外に出ようって言った。


 その時の俺は、脱出賛成してもらえたことにはしゃいで、とにかく兄貴を連れて出ることしか考えてなかった。



 本当はよく考えるべきだったよなあ。実家の座敷牢に兄貴がいたってことは、家族が兄貴を監禁してた犯人ってことだもんなあ。


 でも、家族を疑うところまで頭が回らなくてさ。



 俺は母さんに車を借りようと思ったんだよ。もうその日バスなかったから。兄貴を連れて台所に顔出したら、母さんは料理の手を止めて振り返って、で、急に青ざめて、兄貴を指差した。

 ソレ、座敷から出しちゃったの。って母さんがつぶやいた。

 その言い方で俺も気づいたよ、母さんは因習村の仲間で、兄貴を監禁してたうちの一人なんだって。そういえば兄貴が川に落ちるまでは毎月儀式やってたしな。


 母さんはまな板の包丁を取ってこっちに向けた。あんた、なんてことしたの! ってさ、震えながら包丁を構えるんだよ。まあビビったよ。兄貴が死んだことになってから母さんはずっと変だったけど、あの時は全然違うヤバさだった。目が血走ってぎょろぎょろしてて、明らかに異常。ちょっと真似してみようか。


 あんた、なんであの川が枯れたと思ってんの! 神様がソレに乗り移ったの、だからソレを閉じ込めてまるごと閉じ込めたの! そこにいるのはねぇ、あんたのお兄ちゃんじゃなくて神様なの! しまっておかなきゃいけないのーっ!


 で、向かってきたから、投げ飛ばした。

 もちろん俺だって母親と戦いたくなかったけど、実の息子を監禁してたくらいの狂信者だからね、対話は無理だよ。

 でも母さんの執念はすごくてね、すぐに起き上がって突っ込んできた。俺もまさか母さんがそんなタフとは思わなくて反応できなかった。刺される、と思ったらさ、……あー、兄貴が間に入って刺されたんだよ。胸のあたりをぐさっと。


 ありえねーよな。兄貴を助けたつもりが、また俺を庇わせて、危険な目に遭わせた。兄貴は優しすぎるんだ。


 母さんはびっくりした感じで包丁を引き抜いた。血がべっとりついてた。母さんは錯乱してて、何か喚いて、自分で自分の首を切って、血をいっぱい噴きながら倒れた。兄貴を刺した女とはいえ、やっぱりショックでしばらく動けなかったよ。


 でも、兄貴が怪我してるって思い出して、あわてて兄貴の前に回った。だいぶ深く刺された感じだったのに、兄貴はけろっとして立っていた。浴衣の胸のところが刺された風に破けて、周りが血で汚れてたけど、体に傷はなかった。信じらんねーけど、本当に。

 俺が混乱してると、兄貴は困ったふうに笑った。で、手品の種明かしをするみたいな調子で、血まみれの母さんの手から包丁を取り上げて、自分の腕をざっくり切った。ちょっと血が出て、傷はすぐ塞がった。ほら大丈夫、って兄貴は悲しそうに笑ってた。


 ……お前はさっき、超常的なものを信じるって言ったよな。実はさ、その通り、兄貴は普通の人間じゃなかったんだよ! 見た目は普通だけど怪我はすぐ治るし、年も取らないんだって。すげーよな。なんか、そういうことってあるんだな。

 ああ、神かどうかは知らないし、どうでもいいよ。因習とか信仰とか、俺は興味ないからさ。でも、母さんでこれなら村じゅう強烈な信者だろうなってのはわかったから、ますます村から逃げるしかなかったよ。まあこうして無事帰って来れたわけだけど。


 何、母さん? 倒れた後? たぶん死んだんじゃない。村ごとなくなったからわかんないけど。


 そういや言ってなかったっけ、あの村はもう無いんだよ。俺たちが村を出たすぐ後、大きい災害があって。山奥だからそういうこともあるよね。壊滅して、もう跡形もないんだよ。

 小さい村だからテレビではやってなかったと思うけど、知ってるかな、T村だよ。知ってる? さすが、詳しいね。



 まあそういうわけで、ハッピーエンドだよ。

 兄貴は助かったし、元凶の村はちょうどよく滅んだし。



 うーん、病院も警察も行かなかった。漫画とかでよく見る、特殊体質の人間が捕まって人体実験されるやつが本当にあったら怖いからさ。


 兄貴は、いまだに自分は神の器かなんかだと思ってるし、しょっちゅう押し入れに引きこもってるけど、まあ、うまくやってるよ。

 うん、今も押し入れにいる。え? だからそこの押し入れ。下の段に布団とか持ち込んで自分の部屋みたいにしてんだよ。……いやいや、何怖がってんだよ、俺がこんだけ時間かけて話したんだからわかってくれよ。座敷牢暮らしが長かったから、日光とか広い空間とかにまだ慣れてないんだってば。


 座れよ。


 なあお前、同じ学校のよしみで俺の相談に乗ってくれるって言ったよな? そうそう、先月の麻雀の負け分、チャラにしてやる約束で。いくらだったかな。

 ……なんでお前かって、そりゃ、詳しそうだから。民俗学だったか、俺の村みたいなのいっぱい知ってるんだろ? だったら、人喰いの神なんか実在しなくて、ただの古い思い込みだってわかってくれるよな。なあ、わかってくれるよな。兄貴がちょっと特殊なだけの人間だってこと。母さん父さんが兄貴を閉じ込めたのは間違ってるよな?


 ……何? 理解していないなら、出すべきじゃなかった? どういう意味?

 俺はぜんぶ理解してるよ。言い伝えも信仰も、生贄の儀式の正しい順序も、お札や結界の作り方も破り方も、兄貴がどうなってるのかも。俺は祭祀の家で育ったんだから、理解してる。でも俺、そんなん興味ないから。俺は村の奴らとは違う。そういう古いの、もうやめるべきだよ。兄貴を神様扱いするつもりない。普通に暮らしたい。


 俺は兄貴を外に出したいんだよ。

 早くあそこから出してやりたいんだよ。


 そうそう、俺の村、というより俺の家、神に生贄の動物捧げる儀式やってたじゃん。あれ、川が干上がってから無くなったと思ってたんだけど、週一で兄貴に捧げる感じで続いてたらしい。

 兄貴ね、村にいる頃はニワトリとかウサギとか、数が多い動物をご近所に分けてもらってたんだってさ。十五年、それでやってきて、もう生きた動物以外食えないんだってさ。生きるためにはこれを食わなきゃっていう自己暗示だと思うよ。本当は野菜とかもいけるはずだって俺も頑張ったけど、ダメだった。動物じゃないと食べないんだよね。

 でも都会って、全ッ然、動物がいねーの。犬猫はいるけど家族カウントだから分けてもらえないし。そもそも、人喰いの神を宥めるために生贄の動物が必要です、なんて馬鹿な話が通るのは田舎だけだよな。


 …………何? ふざけんなよ。兄貴が人間食うわけね〜だろ。


 ネズミだよ。そう、だからネズミ飼い始めたんだよ。そこの棚のやつな。兄貴が自分で世話して増やして自分で食べてる。もちろん儀式は無し、丸呑みするだけ。…………。お前、さっきから兄貴に対して失礼だな。俺らだって動物の肉食べるだろ。


 でもまあ、お前の言ったことも的外れじゃないっていうか……いや食ってねーって。

 ただ、兄貴さ、今の自分はちゃんと封印されてないからそのうち人を食いたくなるかもしれないー、って怯えてるんだよ。ありえねーだろ? じゃあ俺のこと食べるわけって言ってみたら、おまえは弟だから食べないけど他人なら我慢できないかもって言うわけ。それで引きこもっててさ。悲しいよな。出してやりたい。俺の気持ちわかってくれるよな。


 うんうん。よかった。じゃあお前、ちょっと兄貴に会ってくれない?

 あはは! さっきから何を怯えてんだよ。兄貴は普通の人間だってば。お前に会って大丈夫なら、そういうことになるんだよ。

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