王道的な面白さを継承しつつ、既視感を覆す新鮮なSFファンタジー

高校生の主人公・加々実優が、ある日突然、神の化身として覚醒し、巨大なロボット「サーガンディオン」に乗って、人類と地球を脅かす謎の怪物と戦うSFファンタジー作品です。

一見王道とも言えるロボットバトルものですが、主人公の優をはじめとする登場人物たちの個性的なキャラクター性と、独創的な設定が見事に融合することで、飽きさせないエンターテイメント性を実現していると感じました。

優が普通の高校生から突如として神の化身へと覚醒するくだりは、非日常への一歩を踏み出す若者の葛藤と成長を等身大の視点から描いており、感情移入しやすい導入となっています。そんな優を導く美しくも謎めいた巫女のキャラクターも印象的で、彼女の発する言葉の端々から、物語の核心に迫る伏線が随所に散りばめられているようです。

クラスメイトの唯についても、明るく活発な表の顔とは対照的に、何か秘めたる想いを抱えているような描写がなされており、彼女が物語にどのように関わっていくのか、先が読めない面白さがあります。

何より特筆すべきは、サーガンディオンと怪物との戦闘シーンでしょう。臨場感あふれるその描写は、まるで目の前で繰り広げられているかのようで、物語の渦中に引き込む迫力があります。画面が無くともアニメのようにリアルで鮮烈なバトルシーンを文章で表現できている点は、高い文章力の表れだと感じました。

同時に、「神の趣味」など所々でユーモアのある描写も織り交ぜることで、重苦しくなりがちな設定に変化を与え、物語に奥行きをもたらしています。

本作は、少年漫画やアニメの王道的な面白さを継承しつつ、登場人物の魅力的な描写と予測不能な展開で、既視感を覆す新鮮なSFファンタジーに仕上がっていると言えるでしょう。主人公・優たちが織りなす、神と人間、そして未知なる脅威が交錯する壮大な戦いの行方を、期待を持って見守りたいと思います。

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