第21話 両者の嘘
ですが、私は神のお考えを尊重するつもりでいます。
心中お察しすることは、出来かねますが『代行者』としての名に恥じぬ姿は貫いていきます――
と、シレナは感じる。
「天道さん、ちょっとよろしいですか?」
「なに?あらたまって?」
「やはり、受験しましょう。中位への昇級試験を」
「また――急に意見が変わるんだね・・・?」
二転三転しているのだから、彼が私を訝しむのも無理はない。
「正直に申します、と・・・天道さんは非常にもったいないのです」
「もったいない?」
「はい。すぐにでも上へあがって飛躍をするべきなんです」
シレナはひとつ嘘をついたことを悔やんだ。正直にと言っておきながら、全く違う考えを口にしたのだから。
「うん?だってシレナ先延ばしにしたのは、いい判断だって言ってくれたじゃん?矛盾してない?もう受験しようっていうのはさぁ」
「先見の明が強くなった、と言いますか」
「先見の明、ね・・・」
心苦しい言い訳だ。
「分かった。シレナを信じるよ」
「ありがとうございます。では――参りましょうか」
だが天道は、シレナが促すまでもなく先に一歩目を踏み出していたのだった。
・・・半分だますような形になってしまったこと、謝ります。
と、終始罪悪感に心を支配されていたシレナの様子を、横目を使って時折観察していた俺はもちろんこの事態も想定済みだ。
エルシャが事前に教えてくれたまさにその通り。
多分、シレナは俺をだましているつもりかもだけど俺もグル。
まぁ、お互い様といこうじゃないか?
<一部 完>
「次」の転生先はどこですか?~巡りめぐって転生の道先案内人になりました~ 葵 京華 @Rosewood
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