第6話
懐かしい出会いを果たしたはいいものの、話す話題もあまりなかったし他の子達もいたのでそこそこに話を切り上げて、さっそく歌うことになった。
各々が最近流行っている曲や大体みんなが知っているような曲を空気読みのように歌っているのを一緒に適当に盛り上げながらその場に合わせて私も歌う。
歌うことが特段嫌いじゃない私は、それなりに上手く歌えるので場を盛り下げることなく歌い切り、座る。そこで、先ほどから視線を向けてきている他校の男子たちが歌うことになったのでそこそこに聞いているふりをしながらスマホを触る。
下手にここで煽てたりしてしまえば男子たちの誰かは勘違いしてしてしまうのは過去の経験から分かっているため、そこそこ聞いていますよという体を保ちつつスマホを見る。
だから、私はこういうところが嫌い。別に友達とカラオケに行くのは好きだがこういう場が苦手。
全員が一周した頃、ちらちらとこちらへと視線を向ける男子達に嫌気がさしてきたため、断りを入れてから席を立ち、お手洗いへと向かう。
はぁ、本当に疲れる。やっぱり来なければよかった。でも、来なければ来ないで付き合い悪いとか言われるのも嫌だしなぁ。本当に女の子って面倒臭いな。無駄にいい顔に生まれていなかったら、こんな人生じゃなかったのかななんて思う。
顔が良いからといって得したなんてことはあんまりない。小さい頃なんてそのせいで軽い苛めを受けていたし。
お手洗いで適当に時間を潰してから戻ろうとしたところ、丁度岡山君とお手洗い前で出会う。
「あ、結束さん」
「岡山君」
「本当に久しぶりだね」
「うん、そうだねぇー」
小学生の頃よりもかなり背が伸びており、身形もそこそこ整えた岡山君はそれなりに女の子からの人気は高いんじゃなかななんて思いながら昔話に花を咲かせ、そこそこ話し込んでしまう。
「結束さんは相変わらず美人だね」
「そんなことないよ。岡山君こそかっこよくなったよね」
「そうかな、ありがとう」
そんな話から始まり、今はどんなことしているのかとかどこの大学に行こうとしているのかとか話し、そろそろ戻らなければならないなというところで彼がこういった。
「あぁ、そういえば今更だけれどさ」
「ん?何?」
「あの時は悪いことしたなって思って」
「どういうこと?」
「あのさ。...........昔は結束さんって美人だったから言い方は悪いけれど、他の女子たちに虐められてたじゃん」
「まぁ、そうだね」
思い出したくないことを言われて、きっと私は何とも言えない顔でそう返したことだろう。
「それで、結束さんのこと味方してた結人いたじゃん。あいつには悪いことしたなぁって」
「...........え?」
「ほんとに今更なんだけれど、実は結人は結束さんの私物を盗ってなかったらしいんだよね。詳しくは俺もあんまり覚えてないけれど、結束さんと仲が良かった結人が気に入らなくて村田達が結人の机に結束さんから盗んだものを勝手に入れたって後から聞いた」
...........え?
「だから、あの時あいつらあんなに結人が盗ったって騒ぎ立ててたんだなって」
「...........」
「いいわけかもしれないけれど、村田達がクラスを仕切ってたし俺も流されるように結人の事を避けちゃったんだよな。今になって思えば悪いことしたなってぁって。まぁ、もうあいつとは会わないだろうし会っても気まずいし。あれが原因かは分からないけれど、中学は別のところ行ったみたいだし」
岡山君から発せられる声が遠のいていく。激しく心臓が脈を打ちドクンドクンと音が聞こえ、更に思考が乱れていく。
「いやぁ、良かったわ。結束さんとこの話を出来て。当事者の結束さんにこの話を出来てなんか胸のつっかえが取れた気がするわ。ほんと、今になったから話せることだよな...........って結束さん、どうかしたの?」
「...........な、なんでもないよ。ちょっと眩暈がして」
「大丈夫?帰った方がいいんじゃない?」
...........やっぱり、あの時の判断は間違ってたんだ。
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