第4話 嫌になる
またも、玄関の前で立ち止まり動けなくなってしまった俺の情けない震える足をどうにか手で押さえて動かす。
「結人。結人が辛いなら私は別に学校なんて行かなくてもいいと思うの。大丈夫よ、勉強なら私が教えてあげるから。全部私が面倒を見てあげる」
隣にいる鏡花の甘い誘いに乗って、挫けそうになってしまうのを何とか我慢する。ここで折れて彼女にすべてを預けてしまったら僕はきっとこれから先も彼女に頼り切る。
そして優秀な彼女の足枷になってしまう。落ちるなら僕一人で沼で藻掻いた方がいい。彼女に付き合わせてはいけない。
「大丈夫」
俺はそう言って扉を開けて外へと拙いながらも歩き出した。一歩、また一歩と足を踏み出し徐々にだが前に進む。
僕のその様子を心配しながらも応援してくれている鏡花に感謝しながら歩いていく。
徐々にだが、恐怖が薄れていき普通に歩けるようになった。
隣に鏡花がいるというのが大きいだろうけれど。
「結人、手を貸して」
「え?」
「いいから」
そう言って俺の手を強引に掴んで恋人繋ぎにした鏡花は、此方に優しい笑みを浮かべた。
あぁ...........やっぱり鏡花は凄いな。俺の不安を全て吹き飛ばしてくれるのだから。彼女にまた頼ってしまった情けなさと大きな安心感が僕を包む。
鏡花に手を引かれながらやっとの思いで学校についた。
全学年で人気の高い鏡花と俺が手を繋いで学校に来たというのだから、朝から学校は騒然としていた。
それをものともせず鏡花はさもどうでもいいように「気にしなくていいわ。結人のことをよく知らない奴なんかに何を言われようが、私がついているから」と笑みを浮かべてこういった。
なんて鏡花は強いんだろう。自分がほかの人にどれだけ変な目を向けられたとしても全く動じる気配ががないどころか俺の心配までしてくれているのだから。
鏡花が俺を心配しつつ、自席へと戻り俺は外からの情報をシャットダウンするようにイヤホンを耳に突っ込んだ。
ただ時間が過ぎるのを待っていると教室に入ってくる人物が目に映った。
明るい彼女は人気者であり、アイドルでありこの学年、いや学校で知らない者はいないと言っていい程の人物である。
幼い時から美人で可愛かった彼女は高校生になりその美しさにより磨きをかけ、顔はそこら辺にいるアイドル顔負けの美しさを誇っており、モデルのスカウトをされたなんて話も沢山耳にしたことがあるほど、顔だけでなく体のプロポーションも抜群に良い彼女の名前は
俺の最初の苦い思い出であり、今朝の悪夢の張本人である。
俺は彼女から目をそらして外へと視線を逃がして、空を眺めることにした。今日はうざったいくらい晴れ晴れとしていて俺の矮小な心を照り付けるような日差しであった。
あぁ、嫌になる。
俺は日差しからも視線を逸らし教師が来るまで机に伏せることにした。
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