第22話 地下墳墓へ
この地下墳墓、実は俺が嫌いなマップの一つである。
マップ自体は簡単で少し覚えればすぐに目的の宝箱へと到着できるのだが、トラップの数が多く地下墳墓特有の仕掛けも用意され、街で子供達が歌う昔話に仕掛け解除のヒントあるはずだった。
しかし、街があの状態では街で歌っている子供達の姿は無く、情報が無い状態でのスタートする。
さらに、この地下墳墓は魔獣の発生率が異常に高く戦うのが非常に面倒なマップでもあった。
開発コマンドで攻略中の為、ここまで来る適正レベルになっていないのが裏目に出ているのだ。
「エド、敵が多いっすよ……毎回クリティカルヒットが出るから敵はすぐに倒せるっすけど勇者スキルで何とかならないっすか?」
本来なら聖水や魔獣よけの魔法を使う事で魔獣との遭遇率を下げる事が出来るのだが、聖水や魔獣よけ魔法は使用者のレベルよりも低い魔獣に対して有効なのだ。
現在の俺達はこの地下墳墓に来られるレベルにはなっていなかったので、聖水や魔獣よけ魔法を使っても全く効果がなかったのである。
「エロイヤン四世のトレーニングを思い出しますわ、体を追い込むとかで何度もトレーニングさせられましたわ」
地下墳墓の中を十メートルも歩かずに次の魔獣と遭遇を繰り返している。
インテグラを言うように体を追い込む……ダメージを受けているのではなく、精神的に追い込まれている感じさえもした。
開発コンソールにも敵を出現させないコードがあったのだが、俺は覚えていないんだよなぁ……面倒なら調べておけばよかったと後悔している。
出てくる魔獣は 腐った墓荒らし・腐ったミイラ・マミーがメインで出てくる。
セレスの聖なる光魔法でアンデッド系は一掃出来るのだが、こんなに出現するとMPが持たないので結局物理攻撃中心となってしまった。
「エド、ここの魔獣はドロップするゴールドは多いのに経験値がほとんどはいらないのですね」
「そうなのだ!損な場所なのだ!」
俺がこの地下墳墓マップの嫌いな理由に敵が強いのに経験値がほとんど貰えないことを追加する。
ただ淡々と敵を倒し続け目的の場所へ進んで行くのだが、目的地までが異常に長く感じ、やっとのことで最初の目的地へ到着。
「エド壁にボタンが複数並んでいますわ」
最初の難関、ボタンを押す順番で地下墳墓のからくりが動作し、新たな通路が現われる重要なイベントなんだが、本来なら街の子供の歌にヒントがある。
でも今回はノーヒント、間違えると地下墳墓の上層に転移させられ、1度外に出なければならないという苦痛イベントだ。
「エド、これが何なのか知っているのですか」
「このボタンを操作すると墳墓の仕掛けが動くのだけど、間違えると違う場所に転移させられるんだ」
ビクッと驚いたフレイアは壁から離れて俺の横にスッと逃げてきた。
でもゲームと違い、ここは異世界空間だゲーム中の転移ブロックの位置は判っているし、転移ブロックは壁際一ブロックと決まっていた。
ゲーム中、ボタン操作を間違えると、なんで転移ブロックから離れてボタンを押さないんだ!と何度も思った事を思い出してしまう。
「たしか子供が歌っていたのはリン・ピョウ・トウ・シャーと唱えれば、トー・ナン・シャー・ペー」だったな
「何なのですかその変な歌は」
「オアシスに伝わる歌だよ」
セレスは俺が奇妙な歌を口ずさんでいるとあきれ顔でこっちを見ていた。
オアシスは荒んでいたし、歌っている子供の姿すらなかったのに、なぜ知っているの?と思っているに違いない。
セレスのことは軽く流し、パーティメンバーの中で最も身長が高いフレイアにボタン操作をお願いする。
「フレイア、剣と鞘をロープで縛って長くしてくれ」
フレイアはロープを使い剣と鞘を伸ばし一本の棒状にする。
「これをどうするんだ?」
「一番リーチの長いフレイアに頼む、その棒状の剣でボタンを押すんだ、絶対にその向こうのブロックに入るなよ」
「わかった、これも勇者スキルの知識なんだな?」
たぶん大丈夫だと思う。
子供達の歌をヒントに壁のボタンを「東南西北」の順番で押していくと、壁からカチャっと音がして「ゴゴゴゴ」と何かか移動する音が聞こえたのだ。
「どうしたのだ!何が起きたのだ!」
「メイア心配するな、墳墓の封印が解かれた音だ」
「お兄ちゃんが言うなら信用するのだ!」
無事に墳墓のからくりをクリアすると、再び移動を開始。
時々落とし穴ポイント等もあるので、それを器用に避けていく。
「エド兄ちゃん、さっきからトラップをきれいに避けているけど、ここに一回来た事があるのか?」
「兄ちゃんは何でも知っているからな」
初めて来た地下墳墓のはずなのに、俺が的確にトラップを避けている様子を見て、メイアはもちろんだがインテグラやセレスも何故知っているのって目をしていた。
フレイアだけは何の疑いもなく俺の事を信頼しているみたい。
魔獣が次々と現われるが、次々と撃退。
アイテムボックスは既に満タン、使えないアイテムをダルマ落しみたいに捨てている状態になっていた。
「ついにこのアイテムまで捨てる時が来たっすよ」
「必ずクリティカルが出ますし、必ず敵がアイテムを落とすから、アイテムを捨てることになりますわ」
さほど貴重なアイテムでもないが、貴重なドロップアイテムなのに重要度の低い順から捨てなければならないのはセレスは聖職者として若干抵抗があるのかもしれない。
墳墓の中を進んで行くと、この墳墓には多数の宝箱が配置されている。
「エド、さっきから通路の隅に宝箱が沢山あるが、全部無視しているのはなぜだ?」
疑問を抱くフレイアが当然のように質問してきた。
「あれは全部トラップだ」
「なぜ知っているんだ?」
「だって普通ならこんな古い墳墓に置かれている宝箱だぜ? 宝箱も古く無いとだよな、でも真新しい宝箱があるなんて怪しいだろう?」
「そう言われればそうだな、わかった今後は気を付けるようにするよ」
俺の簡単な解説でフレイアは納得したようだ。
新品の宝箱がわざと汚されたような感じで配置されているので、見ればトラップと一発で気が付くよ、ゲーム中ではそんな表現は無かったから結構騙されたけどな。
やがて俺達は怪しい石像が建ち並ぶ部屋に到着する。
祭壇の上に宝箱が一つ。
部屋の中には棺桶と宝箱がギッシリと配置されていた。
「凄い秘密の部屋なのだ!」
「宝箱だらけっすよ!もしかして私達大金持ちっすか!」
メイアもセレスも興奮気味だが、絶対に宝箱に手を出すなと言っておく。
ここも祭壇の上の宝箱以外は全部トラップだから。
「全員戦闘準備だ」
「今更なんだ、さっきから魔獣だらけだったぞ」
「あの祭壇の上の宝箱の前に移動すると魔獣が現われるんだ」
「そんな事も知っているっすか」
「まぁ勇者スキルだ」
宝箱に近づくと、棺桶が動きだしエンシェントマミーが出現した。
「エド!エンシェントマミーなんて聞いて無いっすよ!」
実はこの墳墓に入ってからみんなのレベルが上がりまくっている事を話していていない。連戦で経験値が少ない物の元のレベルが引くかったためそれなりにレベルアップし強くなっていたのだ。
「大丈夫だ、さっきまで戦いでお前たちは強くなっているはずだ!」
「そ、そうだなクリティカルヒットが続けて出ているから実感が少ないけど、あれだけ連戦をしたのだ、きっと強くなっているはず」
エンシェントマミーが三体現われ戦闘開始となった。
セレス達の知識ではエンシェントマミーと出会ったら撤退が推奨される強敵だ
ただ、俺達は勇者パーティだから気にしないで戦う!
「全員防御を意識して攻撃だ!」
「了解!」
まぁ勇者討伐3のバグ技を使う訳で、防御状態で戦うあれである。
いつも通りに二回攻撃全てクリティカルヒットを叩き出すが、エンシェントマミー二体が残ったままの状態になる。
続けてエンシェントマミーの攻撃を受けたのはフレイアだ!
「グゥぅ!」
次に攻撃を受けたのは俺、他の仲間に攻撃が行かずラッキーだった
「うぉぉ!」
強烈なエンシェントマミーの攻撃が直撃する。
「フレイア大丈夫か!」
「私は大丈夫、エドはどうなんだ」
実は結構マズい、二人ともHPの60%を削られた。次の攻撃で倒さないと二人のどちらかが死んでしまう事になる。
防御しながらでもこのダメージは痛すぎる。
「回復は無しだ続けて攻撃だ!一気に倒すぞ!」
「了解!」
三ターン目に入るとエンシェントマミーの先制攻撃が入ってしまう。
これはメイアとセレスが攻撃を受けてしまった。
「危ないっす、次は駄目っすよ」
「お兄ちゃん、攻撃を続けるよ!」
「ああ、俺を信じろ!」
俺達の攻撃ターンになると、フレイアがクリティカルヒット一撃でエンシェントマミー一体を倒し、残り四人で最後のエンシェントマミーに総攻撃を加えた事で無事にエンシェントマミーを倒す事に成功したのだった。
「今回は危なかったな」
「少しレベルを上げた方がよいかもしれないです」
その後に全員薬草で回復すると、宝箱の中から真実のマスクを取り出し地下墳墓から脱出したのであった。
エド LV17 ちから255
メイア LV16 ちから220
フレイア LV19 ちから230
インテグラ LV15 ちから218
クリスティーン LV16 ちから215
魔王討伐、開発コンソールで攻略します エルス @elssan
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