第14話 私の可愛い人

「起立、礼」


「よーし、じゃあお前ら気を付けて帰れよ」


 担任の先生がそう言うのを食い気味に教室を後にする。

 早歩きで、走らないように目立たないように急いで体育館に向かう。


 運動会の後、部活は休みになっている。

 熱中症対策で水分補給もかかされなかったし、必要以上の運動は体に悪いとのことだ。


 俺は体育館につくと、アヤメさんがいないか見まわした。

 まだ来ていないようだ。


「ちょっと急ぎすぎちゃったかな……」

「いや、ちょうどいい時間だよ」

「うわっ」


 後ろからアヤメさんに急に声を掛けられ、思わず声を出してしまう。

 それをアヤメさんは手を使って口をふさぎ、余った手で人差し指を立ててシーっと黙るように指示をだす。


「本当は皆帰宅してるんだから、だめだなんだよここにいちゃ」

「でもアヤメさんが来てって」

「だからさ、ここなら誰もこないだろ?」


 そう言ってポケットから鍵を出すと、体育館の扉を開ける。

 この学校の管理体制ガバガバじゃないか?

 アヤメさんがすごいのか、学校がバカなのか、……両方だな。


「ここじゃ万が一もあるし、あそこに行こうか」


 アヤメさんが内側から鍵を掛けた後、マットやボール、跳び箱がある用具室を指す。


 俺は今から何が起こるのか、今日の朝、焦らされた分何をされるのか不安と興奮で心が苦しかった。


 アヤメさんに手を引かれ、用具室へと入っていく。

 ここにも鍵が掛かっているので、開けてから中に入る。

 外から鍵かけられたら中から開けられなくてどうしようと思っていると、俺の頭上をアヤメさんが指差し、あの窓から出れるよと不安を一つ解消してくれる。


「まあ、誰かが来るってことはないよ」

「そうですかね……」


 俺はそわそわしながらアヤメさんの次の声を待つ。

 いつもならこんな状況になったらすぐに抱き着いてくるのに、今日はマットに腰かけたまま何も言わない。


 俺も何も言えずに扉を背に立ち尽くしている。


 え?

 何かする為に呼んだんじゃないの?

 それとも俺が何かしないとダメ?

 でも俺からアヤメさんに何かするっていうのは、気が引けるというか、出来ないというか。


 そんな俺の心象を察したのか、ふうと息を吐いてアヤメさんが声に出す。


。いいよ合格だ」


 何がだろう?

 とりあえず褒められたのかな?

 俺が戸惑っていると、いつもみたいに両手を広げて俺を迎え入れるようにアヤメさんが言う。



 俺はなにか催眠にでもかかったかのように、ふらふらとその両手の先にあるアヤメさんの体にダイブする。

 汗ばんだ体操服、ほのかに香ってくるシャンプーの香り、汗をかいたとは思えないいい香りのするアヤメさん。


 俺の臭くないかな!?

 急に恥ずかしくなり、体を放そうと体を上げる。

 それをアヤメさんが両手両足を使ってがっちりとホールドしてくる。


「すぅーはぁー、君らしい男くさいいい匂いだ」

「やめてください、恥ずかしいです」

「自分は私のにおいを嗅いでおいて?それは不公平というやつだよ」


 そう言われてしまっては何も言えない。

 俺はされるがまま、ぎゅっとアヤメさん抱きしめられた。


 また固くなったそれが、薄いズボンに擦れていく。

 だめだだめだ、そういう目的で来ているわけじゃない。


 俺が煩悩と戦っていると、アヤメさんがプルプルと震えだした。

 それが止まると、恍惚とした表情のアヤメさんがそこにはいた。


「あの、大丈夫ですか」

「……ああ、ちょっと、疲れてしまったかな」

「横になって―――」

「こうかな」


 俺は急に引っ張られたと思うとマットを背中にアヤメさんとサンドイッチされるように抱きしめられた。


「アヤメさん!?」

「たまには私が上でもいいだろう?」

「たまにもなにも俺が上を取ったのは一回だけで」

「ならおあいこ、だ!」


 そう言ってぎゅうっと強く抱きしめるアヤメさん。

 だめ、擦らないで。

 あ。


 ジワリと滲むズボン、それがアヤメさんにも伝わったのか、楽しそうに俺の顔に近づいて囁いてくる。


「君は、敏感だね。


 いじめという言葉に少しドキリとする。

 違う、これはそういう意味じゃない、ちょっとしたいたずらみたいなものだ。

 だってこんなにアヤメさんは



 アヤメさんの瞳に映る俺は、表情をしていた。


「今日は、もう帰ろうか」


 満足そうな顔をしてアヤメさんが身支度を整える。

 俺はぬれたズボンを隠すように体操服をズボンから出す。


 うん、なんとか隠せるかな?


 用具室の鍵を閉め、体育館の鍵も閉めて外へ出る。

 橙色をした空は日が落ちる手前だった。


「ちょっと遅くなってしまったね、気を付けて帰ろうか」

「はい」


 俺達は手を繋いで学校を出た。

 俺の家まで近づくと、アヤメさんが手を離しお別れの挨拶をする。


「それじゃあ、また明日ね」

「はい、おやすみなさい」

「ふふ、まだ寝ないけどね、おやすみ」


 俺は刺激的な体験をして運動会を終えた。


 明日からも楽しい学校生活が待っていると思うと、ルンルンな気分だった。
















これで完成だ。私の可愛い英雄さん。

明日からどうやって遊ぼうか、いやまだ早いな。

完成したとはいえまだまだ未熟な体だ。

ゆっくりと、じっくりと私を植え付けていこう。


高校も同じがいいかな。

彼が通えるような高校に行こう。

なに、違った高校になれば転校すればいい。


高校生という爛れた時期に、どっぷりと浸からせてからが本番だ。

最後まで壊れてくれるなよ。

















ここからは、ちょっと過激になるから見ちゃだめだよ。


そこの君、見せられるのはここまでだ。


二人の愛の結合は私たちのものだけだからね。



















また会う機会があれば。

どうなったか話してあげるよ。

私を見ているということは私が見ているということなんだ。



それじゃあね、覗いていた人達。


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虐められてる子を助けたら俺が標的になったけど、何故が学校一美人の生徒会長が俺に構ってくる 蜂谷 @derutas

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