オーロラの雨

わたくし

『ヤツら』が来る……

 それほど広くない隠れ家には、ある戦闘集団の人々がいた。

 男女の割合はほぼ同数で、皆武器を携行していた。

 誰も一言も声を出さない、お互いに目と目で合図し合うだけだ。

 静まり返った室内に少しずつ機械音が近づいて来る。


「ヤツらが来たか……」


 誰かがポツリと呟いた。一斉に非難する視線が呟いた人物に突き刺さる。

 呟いた人物は黙って下を向く。


 そこにいる全員が解っていた、「ヤツらが来た」事を……


 ある日、突然にヤツら殺戮機械が現れて人々を虐殺していった。

 地球外生物の仕業か? マッドサイエンティストの発明か?

 自立コンピューターの最後の審判judgment dayか? 自然破壊を行う人類に対して神からの制裁か?

 何処からか現れたヤツら殺戮機械は瞬く間に全世界へと拡がっていった。


 人類側も直ちにヤツら殺戮機械に対して反攻を行った。

 ヤツら殺戮機械の一体一体は脆弱で簡単に破壊できるが、尋常でない個体数で強引に攻めてくるのだ。やがて人類側は武器や人員を徐々に消耗していった。

 多数あった戦闘集団も散り散りになり、この隠れ家に居る部隊以外の消息は不明であった。


 機械音は次第に大きくなる、このではヤツら殺戮機械の温度センサーで容易に隠れ家を見つけ出すであろう。

 あとは、手持ちの武器でヤツら殺戮機械を全滅できる事を神に祈るだけだ。


 突然、機械音が止まった。部隊の全員は各々武器に弾薬を装填する。

 全員が入口のドアに視線を集中する。



 あれから約一時間が経った、止まった機械音は二度と鳴らなかった。

 隠れ家のドアも破壊されず、部隊の人々も全員無事であった。

 部隊のリーダーは指名した三名で斥候隊を編制して外の偵察を命令する。


 外へ出た斥候隊はその光景を見て驚いた。

 極夜の中に我々の隠れ家を囲む多数のヤツら殺戮機械の集団がいた。

 しかし全てのヤツら殺戮機械は機能を停止していた。

 頭上には幾重にも重なった虹色のオーロラが雨降る様に垂れ下がっていた。


 斥候隊はリーダーに報告する。リーダーはエンジニアにヤツら殺戮機械の調査を命ずる。

 エンジニアは報告する。

「太陽活動周期が十数年振りに極大期に入り、地球に降り注ぐ電磁波の量が多くなっています」

「今、頭上に広がっているオーロラがその証拠です」

「電磁波の中の特定の周波がヤツら殺戮機械の回路にダメージを与えて機能を停止した模様です」

「太陽活動周期が極小期に入るまでは、ヤツら殺戮機械はこの周辺には近付く事は不可能でしょう」

「その間にこのヤツら殺戮機械の残骸を使って、特定の周波を見つけ出せばヤツら殺戮機械に対しての有効な武器になるでしょう」


 虹色のオーロラの光が、人類の希望の光になった瞬間であった。


 人類のヤツら殺戮機械への反撃が始まる……


 ――近日公開COMING SOON!――

 前売券は当劇場で発売中

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オーロラの雨 わたくし @watakushi-bun

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