エピローグ
第43話 エピローグ/お似合い
あの時と同じように血の様に夕日に染め上げられた涼香の部屋には、祐真と涼香の荒い息遣いが響いている。
莉子と別れた祐真と涼香は、無言でどちらからともなく倉本家へ向かい、互いのやるせない気持ちをぶつけ合うようにして、激しく何度も交わった。会話もなく、ただの獣のように。
「……」
「……」
沈黙と性臭の漂う気だるい余韻の中、縋るように身を寄せ合う祐真と涼香。
会話がない、というより何を話していいのかわからない。
そもそも自分たちのことではないのだ。それに外部がここで話したところで何かが変わるわけでもない。
ただただ虚しさが募るばかり。それは身体を重ねても埋まらない。
やがて身を起こし、身だしなみを整え始めた涼香は、色のない声で呟いた。
「恋愛って、中々うまくいかないもんだね」
「そうだな、難しいな。きっと皆、俺たちが思う以上に失敗や妥協もしてるんだろ」
「あたしはあんな
「俺もだよ、もうこりごり」
「でもそんなこと言ってると、誰とも付き合えなくない?」
「かもね。困ったな」
「ふふっ、じゃああたしで妥協して付き合ってみる?」
「まさか! 付き合ってもどうせすぐ、何か違うってなって別れちゃうだろ」
そう言って祐真と涼香は肩を揺らし、おかしそうに笑う。
やがて身だしなみを整えた涼香は立ち上がり、ポツリと呟く。
「……お兄ちゃんにりっちゃん、どうなっちゃうんだろ」
「……ほんと、どうなるんだろうな」
そんなどうしようもない言葉を返した祐真は、後ろから涼香を抱きしめる。
そして互いの傷をなめ合うように、舌を
◇
翌朝、沈痛な面持ちの祐真と涼香とは裏腹に、晃成はいたって今まで通りだった。
そして莉子さえも、まるで昨日のことなんて何もなかったように、普段通りだった。
「え、晃成先輩、本当にその顔のままバイトに行ったんですか!?」
「おうよ、さすがにお化けみたいな顔で接客させられねーってんで、急遽キッチンの方手伝うはめになったけどな」
「晃成先輩って料理できましたっけ? 皿洗い?」
「皿洗いとか食洗器でスイッチぽーんで終わりよ。で、火を使うのもってんで、デザート作りを手伝ってた。パフェの作り方とか覚えたぜ!」
「パフェ! すごい!」
「材料さえあれば作れるぞ。今度作ろうか?」
「わ、楽しみ!」
電車を降り、学校へと向かう道すがら、和気藹々とそんな会話を咲かす晃成と莉子。
その様子を少し離れた祐真と涼香は、まるで狐につままれたような顔をしていた。
昨日、あんなことがあったというのに、完全にいつもの日常といった様子。
「何、アレ……あたしの悩んでた時間を返して……」
「……まったくだ」
そういえば莉子も晃成がフラれた時、切り替えが随分早かったことを思い返す。
もしかしたら知らなかっただけで、今までも似たようなことを繰り返してきているのかもしれない。
祐真と涼香は顔を見合わせ、なんとも複雑な表情で嘆息する。
そして祐真はしみじみと、心からの言葉を呟いた。
「ったく、お似合いだよあの2人」
「うん、ホントそう。お兄ちゃんも観念して付き合っちゃえばいいのに。りっちゃん、ぶっちゃけお兄ちゃんに勿体ないくらいスペック高いよ?」
「成績、かなりトップの方なんだって?」
「うん、この学校に絶対入るんだーって猛勉強して、それで」
「まったく、愛の為せる業だな」
「ほんとほんと、ご馳走様ーって感じ」
その時、少し遅れ気味だった祐真と涼香に気付いた晃成と莉子から、「「おーい!」」と手を上げながら声を掛けられた。息ぴったりな2人を見て、苦笑を零す祐真と涼香。
「行こ、ゆーくん」
「あぁ」
そう言って祐真と涼香は、2人に見つからないようこっそり手を繋ぎながら、親友の元へと駆けていくのだった。
※※※※※※※※
なんと問題ありまくりかもとびくびくしていた今作、書籍化決定です。
運営から逃げ切ったぜ……ッ!
コンプラ的にラブホテルとかアウトだったりするので、書籍化に際して関係はそのままに、内容は大幅改稿の予定。レーベル、イラストレーター等はまだ言えませんが、結構先になるかと思います。WEBから大きく話が乖離する可能性があるので、とりあえずこれにて一旦完結とさせていただきます。
楽しみにしててね!
愛とか恋とか、くだらない。 雲雀湯@てんびんアニメ化企画進行中 @hibariyu
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