プレバト俳句(2023年10月5日放送、金秋戦2023の予選)より
今回は、金秋戦2023の予選でした。
参加者8名のうち、上位4名が決勝進出。
果たして、誰が決勝進出するのか、下克上は起きるのか、
白熱の俳句バトルが繰り広げられました。
さて、その金秋戦の予選のお題は「母の背中」。
この凡庸極まるお題に参加者全員が悪戦苦闘されているようでした。
その中で、私が気になった俳句は3句です。
下位から上位へ順に見ていきたいと思います。
まず、屈辱の最下位8位に選ばれた、
名人7段の立川志らくさんの俳句を見てみましょう。
門付けの母に背負われ蚯蚓鳴く
「門付け」は、「かどづけ」と読み、簡単に言うと、
家々を回って門付け歌を歌って、お金をもらう人のことです。
「蚯蚓(みみず)鳴く」が、秋の季語です。
個人的には、好きな俳句でしたが、
夏井先生は、「背負われ」が納得いかないようで、
次のように添削されていました。
門付けの母よ真昼を鳴く蚯蚓
これはこれでいいのでしょうが、気になるのは、
「門付け」「蚯蚓鳴く」の聴覚が被っていることと、語順です。
ここは思い切って、
「蚯蚓鳴く」という詩のように美しい季語を断捨離して、
私なりに、さらに添削を加えてみました。
A 門付けの母よ真昼の鶏頭よ
B 白昼の鶏頭と門付けの母
こうすると、視覚と聴覚のバランスが取れているかと思います。
次に、決勝進出の4位に選ばれた(おめでとうございます!)、
特待生3級の森迫永依さんの俳句を見てみましょう。
薄月夜母の電卓スタッカート
「薄月(うすづき)」が、秋の季語です。
母が電卓を打つ様子を、
スタッカートという比喩で表現しているところに、
明るく若々しい感性を感じます。
しかしながら、夏井先生も指摘されていましたが、
この「薄月夜」という薄暗い季語では、
スタッカートという比喩が活かされていません。
まず、夏井先生の添削例を見てみましょう。
星流る母の電卓スタッカート
「流星」が、秋の季語で、
その傍題に「流れ星、星流る、星飛ぶ」があります。
これは、見事な添削でしょう。
一気に俳句全体が輝かしくなりました。
ただ、私は語順を代えて、さらに添削を加えてみました。
スタッカートの母の電卓星流る
こうすると、「星流る」という季語が、
一段と活き活きとしてくると思います。
最後に、見事に決勝進出の1位に選ばれた
(おめでとうございます!スーパー下克上ですね)、
特待生4級の春風亭昇吉さんの俳句を見てみましょう。
乳房切除す母よ芒(すすき)の先に絮(わた)
言うまでもなく、「芒」が、秋の季語です。
夏井先生は、この俳句を絶賛されていましたが、
私は、少しちぐはぐで、
俳句全体のバランスが良くないような印象を受けました。
それと、「芒の先に絮」のことを、
一言で「花すすき」とか「穂すすき」と言うのではないでしょうか。
以上の点を踏まえながら、添削例を挙げてみます。
A 乳房切除の母の彼方に花すすき
B 乳房切除の母の彼方に芒ひかる
C 乳房切除の母よ母よ花すすき
D 乳房切除の母よ母よ芒ひかる
E 乳房切除の母よ彼方に花すすき
F 乳房切除の母よ彼方に芒ひかる
こんな感じではないでしょうか。
原作と比べてみても、AからFの添削例のほうが、
自然と心に染みてくるのではないでしょうか。
個人的には、Fの添削例がいちばん鮮やかかなと思います。
第2話は、以上です。
プレバト俳句 金秋戦2023の予選について 滝口アルファ @971475
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