飛翔物

 突然インラーク王国に謎の飛翔物体が飛んで行った。

 そのことは王国中の話題になり、当然ながらこの国の宰相たるバランの耳にも入ることとなった。



「何が起こった? 他国が襲ってきたのか?」



 自室にいたバランは手に持っていたワインをテーブルに置くと窓から外を見る。

 すでに飛翔物は飛んで行った後なのだが、なぜか再び飛翔物が見える。


 それも一度や二度ではなく複数飛んでいくものだから他国の攻撃を想像してしまったのだ。



「くっ、超遠距離からの攻撃か。そんなことができるのは帝国の一桁ナンバースくらいか?」



 一応国内だけではなく他国にも間者は放っている。

 それからは他国が戦争準備をしているという話はなかった。



「私に隠れて? いや、そんなことができるはずがない。しかし、攻撃を受けていることも事実。一体どこから……。いや、まずは情報を得るところからだな」



 被害のことを一切考えずにむしろ敵のことしか考えていなかった。



「ノットはいるか!!」



 バランが声を上げるとノットがすぐに部屋に入ってくる。



「お呼びですか、父上」

「先ほどの飛翔物を調べてこい」

「わかりました。すぐに行って参ります」



 ノットはヘラヘラとした表情を見せながらもバランの言うことは素直にうなづいていた。



「マルコも連れていくといい。一体何がどこから飛んできたのか、調べ上げろ」

「俺一人で十分なんですけどね。わかりました。すぐに行って参ります」



 ノットが出て行った後、すぐにバランは誰もいないところに話しかける。



「お前たちもわかったな。すぐに調べてまいれ」

「よろしいのですか?」

「あいつらがやった可能性もある。もちろんお前たちもな」

「相変わらず疑い深いですね」

「それよりも早く調べてまいれ」

「すでに調べております。王都から少し離れたところに謎の塔が出現しました」



 影の話していることが意味不明すぎてバランは思わず聞き返す。



「どう言うことだ? もっと詳細に教えろ」

「それが詳細はわからないですが、謎の儀式をしていたのか、変わった造形の塔でございます」

「変わった造形?」

「はっ。バラバラに飛ばしたからか、塔は斜めに傾いており、簡単に壊れそうなほど揺れているのです」

「なるほど。つまり見せかけだけのものか。それならば塔は気にしなくても良い。それよりもなぜそこに塔を作ったのか、そのことを調べてまいれ」

「わかりました。すぐに調べて参ります」



 影の気配が消えるとバランは再び窓から外を見ていた。



「塔を使う儀式……か。色々とあったはず。……少し調べてみるか」




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黒幕一家に転生したけど原作無視して独立する 空野進 @ikadamo

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