飛んでゆく塔
「なぁ、なんだか俺、睨まれてないか?」
「きっと勝負をしたいんだろう? これが終わったら相手をしてやると良いんじゃないか?」
「……あいつって帝国最強と言われるやつじゃないのか? 俺が勝てるはずないだろ!?」
「案外良い勝負するんじゃないか? お前もドラゴンスレイヤーだろう?」
「ほう、お前もドラゴンを倒したのか。ならば俺と同格だろうな」
ファーストは嬉しそうに微笑んでいる。
「とにかく今はこの塔の内装が完成したら吹き飛ばしてくれ。ここではそれだけしてくれたら良いからな」
「よし、それなら早く飛ばしてくれ。それで決闘だ」
ファーストがフリッツを急かしてくる。
「そこまでいうならお前がやってくれよ」
フリッツはハンマーをファーストに渡そうとする。
「俺は剣しか使わんぞ」
「それなら俺だって」
「フリッツのメイン武器はスコップだったか?」
「俺は剣だよ!?」
「武器を選ばずに戦えるってことだよな」
「ほう、それは楽しみだ」
ファーストはさらにやる気を見せてくる。
「それに俺はこんなに巨大な物体、飛ばせないぞ? もっと細かくないと」
「それなら任せておけ。俺が切り刻んでやろう」
「細かくしたら塔に戻らないからな。そうだな、輪切りくらいでいいか?」
だるま落としならそのくらいする必要があるしな。
「そのくらい余裕だ」
そういうと作業中のメルティを無視して塔の近くに寄るファースト。
そして次の瞬間にファーストが動いた気がする。
「これでどうだ?」
「んっ? 何も変わっていないが?」
不思議そうにするフリッツ。
ただ、俺にはなんとなく今の状況がわかる。
「メルティ、大丈夫だったか?」
「何も問題ないわよ。今大事なところだから」
「それならいいけど……」
塔は無傷に見えてよくよく見ると線が入っている。
あの一瞬の間にすっぱりとキレイに塔を切っていたのだ。
しかも他の人たちに気づかれることなく。
「相変わらずとんでもない能力だな」
作中最強のまず勝てない相手であるファースト。
その力は仲間になったあとも健在のようだった。
仲間になったら弱くなるとか定番であるためにそこは安心出来る点でもある。
「これでいいかな? 一応魔道具も完成したよ。ちゃんと損傷を直す力を持たせた。うん、それなのに揺れるんですけどね」
メルティは遠い目を見せてくる。
確かになぜか上手く魔道具が機能しないのだけど、壊れないのだから不思議だった。
でも、今回国王が望んでいるのはそれのためにそのまま作る必要があった。
「さて、それじゃあフリッツ、頼んでも良いか?」
「本当に良いんだな? どうなっても知らないからな」
フリッツは念押しで確認してくる。
でも、答えが変わらないとわかるとため息交じりにフリッツはハンマーを振りかぶる。
そして、塔を思いっきり叩くとファーストが切れ込みを入れた塔は気持ちいいくらいに遠くに飛んでいったのだった。
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【コミカライズ情報】
本日より『水曜日のシリウス』でスタートしてます。
ニコニコ漫画、コミックDAYSにてコミカライズが掲載されております。
とんでもなく綺麗な作画。
細かいところまで深掘りしてくださった構成。
原作の私が一番楽しみにしてるまであります。
ぜひ見に行って楽しんでもらえると幸いです
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