最速の塔建設

 とりあえずまずは普通に塔を作っていく。

 土魔法を使い、地中より石材とあとは少量の魔鉱石を取りだし、それで塔を形作っていく。



「こ、こんな一瞬でできるのか?」



 ファーストは驚いた様子を見せる。

 ただ、これだとあくまでも塔の形になっている人形のようなものである。


 一応中は空洞ではあるものの部屋らしいものは一切ない。



「メルティ、内装は任せても良いか?」

「そうね、好きに作ってもいいのかしら?」

「もちろんだ。それがご所望だからな」



 あの塔が欲しいと言うことなのだからメルティが中を作った方が良さそうだ。

 俺が作ってしまうとシンプルに使いやすいものとなってしまう。

 それだと面白おかしく狂っているあの塔は作れないだろう。



「ふふふっ、最上階には絶対にたどり着かせないように罠を張りまくろうかしら。迷路もより難しくして、塔が壊れないように中心の柱は柔軟性を持たせて……」



 メルティが楽しそうに内装を作っている。

 その間に俺はフリッツに塔を建設する予定地を説明していた。



「ここまでこの塔を飛ばしてくれるだけでいいぞ」

「……はぁ!?」



 フリッツが驚きのあまり聞き返してくる。



「わかりにくかったか? 軽くこの場所まで塔を飛ばしてくれたらいいからな」

「……あのな、一つ言ってもいいか?」

「もちろん構わないぞ?」

「どうみてもここってここからだと届く距離じゃないよな?」

「そうか? フリッツなら届くと思うが?」

「いやいや、いったい俺のことをなんだと思ってるんだ!?」

「ドラゴンスレイヤだろ!?」

「いやいや、俺はただの傭兵だ!」

「そんなことないぞ。ここが一国として独立することになったかお前は兵をまとめる将軍職に就いてもらうからな」

「……待て。そんなこと初耳だぞ?」

「今初めて言ったからな」

「あのな、そういう重要なことはしっかりとした場でな……」

「もちろんそういった場は用意するつもりだ。でも前もって心づもりが必要だろう?」

「それはそうだけど……」

「だから気持ちよく吹きとばしれくれ」

「いやいや、役職が上がっただけで吹き飛ばせるようになるわけじゃないからな!?」

「大丈夫だ。俺はお前のことを信じてるからな」

「失敗しても知らないからな」



 フリッツはあきれ顔になりながらハンマーで素振りをし始めていた。



「待て。本当にこの塔を飛ばすつもりなのか!?」

「もちろんそうだぞ?」

「そんなことができるのか?」

「出来るわけないだろ?」

「フリッツなら余裕だな」



 否定するフリッツだが、ファーストは俺の言葉を信じていた。



「なるほど。それほどの力がある者が配下にいるわけか。ふふふっ、これは楽しそうだな」



 ファーストはフリッツのことを目に付けていた。



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【書籍化情報】

本日はサーシャ、フリッツ、エマ、エルゥのキャラデザを近況ノートにて公開させていただきます。


【コミカライズ情報】

レーベル:講談社、水曜日のシリウス

開始時期:1月1日

漫画家:赤村晃人先生

構成:笠間三四郎先生


原作を深く掘り起こしてくれている笠間先生ととてもキレイな絵で描いてくださる赤村先生。

すごい仕上がりになっていると思いますので是非見てください。


掲載時期は明日のお正月から開始となります。

場所はニコニコ漫画とコミックDaysです。

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