エフィルと、ローズティー ー ⑤

 エリス様から葉と花を分けてもらうと屋敷へと帰ってきた。


「エフィルさんが、一緒に説得頂いてありがとうございました」


 エフィルさんは、相変わらず無表情であった。

「私は特に何もしていない」


 冷たい態度に見えるけど、少し歩み寄れている気がした。

 この態度も、どちらかというと照れ隠しなのかもしれない。

 せっかくなので、エフィルさんもお茶作りに誘ってみようかな。


「エフィルさんも一緒に、お茶を作ってみませんか?」

「……勝手にやられるよりかは、私がしっかり見ていよう」


 ふふ。怖いかと思っていたけれど、エフィルさんはこういう性格なのね。

 カレナに教えた時のように、エフィルさんにもティーの入れ方を教えていく。


「ミリエル様、私はティーというものを作ったことが無い。これはどうすれば良いのだ」

「これはですね、まずは葉を洗いまして」


「こうか?」


 今日はカレナがアルミナス様を呼びに行っていたので、キッチンには私とエフィルさん二人。

 一緒になってティーを作る。


「……そういえば、ハーフだったのだな」

「はい。お母様がエルフです。それで、先ほどの虫さんと同じで。私が小さい頃に母は私に森で待ってるように言ったっきり戻ってこなくて」


「……大変だったのだな」


 エフィルさんは、初めてのはずなのに、手際は良かった

「そうしたら、ミリエル様は、私と似たようなものだな。私が小さい頃に、ここの奥様が私を拾って下さったのだ」


 エフィルさんは特段悲しそうでもなく、淡々と語ってくれた。


「ティータイム、カレナが楽しんでいるのは知っている。……今日は私も混ぜてくれないか?」

「是非お願いします」


 エフィルさんは冷たいわけじゃなくて、こういう人っていうことなんだね。

 私も嫌われてるわけじゃなかったみたい。


 カレナがお菓子を持ちながらキッチンへと入ってきた。


「お姉ちゃん! これとこれ、どっちがいいと思う?」


 カレナはキッチンに入ってくるなり、エフィルさんと目が合っていた。


「あ、エフィル様。失礼しました」

「いつも、そうやってミリエル様に接しているのもわかっているから、いつも通りに接したら良い」


 エフィルさんの和やかな表情が見えた。


「今日のティータイムは、私も一緒お願いする」

「エフィル様も!? わかりました……」


 なんだか、カレナがかしこまっているのが分かった。

 エフィル様は、なんだか少し年上のお姉様みたい。

 私が真ん中で、カレナが末っ子。



「ティータイムは、みんなで楽しみましょう。カレナちゃんもいつも通りで大丈夫ですよ。お姉ちゃんが2人と思えば平気です」

「……はい」



 食卓へと向かい、赤い色がついたティーをそれぞれ配った。


 私の右隣には、カレナちゃん。

 私の左隣には、エフィルさん。

 前にはアルミナス様。


 アルミナス様は、一口飲むと驚いた顔をした。


「これは、美味しい。爽やかな口当たり。スーッと鼻に抜ける甘い花の匂い。なんだか花が咲いたみたいだ」


 エフィルさんも一口飲む。

「美味しいです」


 カレナちゃんもごくごくと飲んでいく。

「お姉ちゃん美味しい!」


 食卓は、笑顔であふれていた。


 森の中には及ばないかも知れないけれど、身近に人がいて。

 そんなティータイムが、とても幸せに感じられた。

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ファミリー・ティー 米太郎 @tahoshi

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