エフィルと、ローズティー ー ④

 エフィルさんは、赤い花の妖精エリスとお話をしている。

 話をしている時は、エフィルさんはにこやかな顔をして笑っていた。

 エフィルさんの笑うところを初めて見た。


「そっちにいるのは、誰じゃ」

「こちらは、新しくお屋敷に住まわれる方です」


「そやつ、なんだか人間臭いぞ。ここは精霊界じゃ。なんでそんな奴がいるじゃ」

「こちらは、旦那様を助けださった命の恩人ということです」


 そう言うと、赤い花の妖精が私の方へと飛んできた。

 品定めをするように、ふわふわと私の周りを飛び始めた。


「半分は人間、半分はエルフか……」


 赤い花の妖精の言葉に、エフィルさんが反応した。


「ハーフ……でしたのですね」


 なんだか私を見る顔が優しくなったように見える。

 エフィルさんが妖精に向けて話してくれた。


「エリス様、こちらの方に葉や花を分けて下さいませんか?」


 エリス様は、ムッとした。


「なぜ私が、よくわからない者へ渡さねばならないのじゃ」


 もらう側の立場として、何かしないといけないと、私からも提案してみた。


「そのために、何か私にきることがあれば」

「ふん。わしは忙しい。虫どもから葉を守らねばならないのじゃ」


「虫さんですか。私が住んでいた森で見たことあるような虫さんですね」


 私は虫へと話しかける。

「虫様。こんにちは」


 私の行動に、エリス様は終始ムッとした表情を向けていた。

「虫なんぞに話しかけるな。問答無用で追っ払え!」

「いえいえ、エリス様、こちらの方も生きているのです。感情だってございます。話せば分かり合えます」


 私とエリス様が言い合いをしていると、虫が話始めた。


「私、お母さんにここで待ってろって言われているの」


 ……子供を置いていなくなってしまう。世の中にはそういうこともある。

 私もそうだった。

 私は、虫に情がわいてきた。


 真剣な顔をエリス様へ向けて、お願いをする。


「……エリス様。私には無くても良いので、どうかこの子に葉っぱを恵んでは頂けないでしょうか?」

「だから、何で虫なんぞに」



「エリス様、子供に罪は無いです。必死に生きようとしているんです。誰かが助けてあげなきゃ」

「そんなに甘い世界じゃない」


 エフィルさんも口を開いた。

「エリス様、失礼ながらわたくしからも。助け合いというものも、必要かと思います」


 エフィルさんは持ってきた食事をエリス様へと差し出した。


「奥様の優しさがあってこそ、貴方様も豊かに繁栄できていると思います」

「むー。それとこれとは話が別じゃ」


 エリス様は、一向に納得しなかった。

 エフィルさんが、どこからかハサミを取り出した。


「私がたまに剪定させて頂いている時に出る部分を頂いても良いでしょうか?」


 二人から攻められる形になったエリス様は、怒り気味に答えた。


「なんじゃなんじゃ。わしがケチみたいな言い方して。好きなだけ持ってけ持ってけ!」



「そんなつもりじゃなかったのですが。エリス様申し訳ございません。代わりと言っては何ですが、お礼にこれをどうぞ」


 光り輝く粉を振りかけた。


「うむ? これはなんだ? なんだか力が溢れてくるようじゃ」

「私が森で採取した際には、その分元気になって頂けるように我が家に伝わる肥料をあげているのです。少量ですがありましたので、お渡しいたします」


 エリス様の機嫌が治ったのか、優しい言葉遣いになった。


「おぬし、ミリエルと言ったか、これをくれるなら、また何度でも来ると良いぞ」

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