エフィルと、ローズティー ー ③

 午後もテーブルマナーを見るという事で、カレナが引き続き私の隣で食べていた。

 一緒に食べれて美味しいのですけれども、午前中にサラダを食べ過ぎてしまったからか、昼ご飯は全然食べられなかった。

 エフィルさんには、冷たい目で見られていた気がする。


 こっそりと、カレナに譲る形で食べてもらった。

 カレナは大好物だったのか、とっても喜んでいた。



 部屋に帰ってきたけど、まだお腹いっぱいだよ……。

 午後のティータイムには、体調を整えておきたいな……。

 少し休んでいると、ノックをする音が聞こえた。


 ――コンコンコン。


 あれ? まだティータイムには早いけれど……。


「お姉ちゃん、お花摘みに行こう!」


 カレナだ。お姉ちゃんって。

 二人だけの時は良いか。


「そうね、一緒に行こうか」


 そう言って部屋の外に出てみると、エフィルさんが待っていた。


「案内すると言っていたので、行きましょう」


 カレナもいるから、大丈夫かな……。

 そんな私の気持ちに気づいてか、カレナは声をかけてくれた。


「大丈夫、エフィルは怒らなければ、そんなに怖くないよ」


 エフィルさんが先頭を切って歩いていく。


 いつも葉っぱを集めているお庭を歩いて、奥へと向かう。

 エフィルさんの歩く姿勢はまっすぐ綺麗で。

 きっちり同じペースで歩いてく。


 カレナに小声で、少し聞いてみる。


「エフィルさんって、どんな人なの?」

「ちょっと厳しいけど優しい人だよ」


 うーん……。

 ちゃんと人のことを考えてくれている気はするけれども。

 私は嫌われている気がする……。


「あなたたち、お喋りが好きなのですね。あまり騒がしいのは苦手なので黙っていて下さるかしら?」


 やっぱりエフィルさんは、私に対して冷たい目な気がします。


「はい……。わかりました」



 さっきよりも、さらに小さい声でカレナに話しかける。


「やっぱり厳しいよ……」

「そんなこと無いと思うんですよ……」


 誰にも聞こえないくらいの小声で話していたはずなのに、エフィルさんが指摘してきた。


「ミリエル様、私の話を聞いておりましたか?」

「エフィルさんは、お耳がよろしいのですね……」


 そこから先は、黙ってついていった。




 いつもの庭で葉を頂いているところから、さらに奥へと歩いていくと進んでいく。

 そうすると、花のアーチがあった。


「こちらです。ここが旦那様がおっしゃっていた花畑です」


 少し広いスペースがあり、噴水があるのが見えた。

 その広場の周りにたくさんの花が咲いている。

 色とりどりな花。


「素敵です。とても手入れが行き届いているのがわかります。お花がとても生き生きされているのが分かります」


 エフィルさんの表情が少し緩んだ気がした。


「奥様がいない間は、私がこちらの管理を行っております」


 そう言うと、エフィルさんは後ろを向いてしまって、表情は見えなくなってしまった。


「エフィルさんは、少し恥ずかしがり屋なの」


 カレナがそう教えてくれた。

 エフィルさんは、カレナの言葉が聞こえていると思うが、すたすたと歩いてさらに奥へと向かった。


 広場の少し奥へ行くと、一際綺麗に咲く赤い花があった。


「お待たせしました、エリス様。お食事をお持ち致しました」


 そういうと、赤い花からふわふわと光が出てきた。

 光はしばらく宙を漂うと、ぱっと形を変えて妖精の姿へと変化した。


「今日は少し遅いのだな」

「申し訳ございません」

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